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第一章 貴族としての矜持
安息日1
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手桶を持った数人の女性が門を開け入ってきて、それでようやく今日が安息日だと理解する。
兵力を重んじる国の関係から女性への地位は限りなく低く、本来なら神に祈りを捧げる安息日にも兵士になれない女性だけは働かなくてはならない。
ただ、女の働き口が少ない国なので、安息日の労働は貴重な収入源になっているとも聞く。
「——ディート様とお呼びするように伺ってます。貴方さまの安息日のお世話係、リネットです」
薄茶色の長い髪をした小柄な少女がディートの前で立ち止まり、手桶を置いて顔を拭いていく。
リネットの首には金属で出来た大きな首輪が取り付けられており、その後ろには鎖か何かで繋がれるための環がぶら下がっていた。
非合法な奴隷か、他の何かキツい仕事を強いられているらしい。
「……安息日では、花びと様は天蓋に顎を乗せたまま頭をお休み頂けます。私たちはその話し相手として、気持ちを休める為に何でも命じられるままに従う者です」
顎の枕が置かれたままで手入れをされていくので、確かに顔は休まる。いつもより丁寧に水や食事の粥が運ばれていき、洗い桶を反対にしてイスの代わりにリネットが座り。これで夜まで過ごすのが、安息日らしい。
「リネット。君は、ここで普段どんな役割をしているんだい?」
「私たちは、兵士さまの功をお慰めするための者です。元は敗戦国の娘でしたが、王族以外の貴族はお情けで生かされて、王宮や駐屯地で働いています……。交代で休みも取っているので、そこまで大変な仕事では有りませんし、子供を産んで育てる事も許されております。
中には兵士と恋仲になって平民として暮らしている者や、功績によって解放される者も居るそうですわ……」
慰み者という言葉からして、ここで咥内を弄んだ後の性の発散に使われているのだろう。男子を重んじる風習から、同性に走る者も多い為、そんな男たちの吐け口に花びとを使い、最後の性処理をするのがリネットのようだった。
「ディート様は、騎士団に居られたと聞いております。兵の中には女性に興味を示さない者の方が多いので、私たちの仕事はそこまで大変なものでも有りませんわ……。むしろ、花びとの皆さまに助けて頂いております」
背中には鞭傷のようなものが見えたが、リネットの身体は滑らかで食事もしっかりと取っているようだ。女性を痛ぶるような場所ではないようで、ディートは少しだけ安心した。
「お茶のご用意をしております。心を静かに保つよう、香草を入れたハーブティーに砂糖菓子、カカオやナッツまで、甘味は色々有ります…」
別の少女がトレイを運んできた、リネットはポットから熱い香草茶を注いで少し冷まし、顎を支えながらゆっくりとディードの口に運んでいく。
久しぶりの苦味と、合間に入れられる砂糖菓子の甘さに気持ちがとろけていく。安息日とはいえ、随分と豪華な待遇に自然と身体も落ち着いてきた。
髪を梳かれて顔を拭かれ、首から上しか出ていない顔が身体の全体で有るかのように感じられる。
土の中で動かせないままの身体は、温度や虫か何かが通り過ぎる感覚はあるが、既に自分の物でさえ無いような気分になっていた。
「………っ、何だか、身体に………」
リネットと城下の話を続けていると、反応が無かったはずの背中に寒気のようなものが走った。それは肩から腰回りへ、臀部から足へと広がっていき、局部へと何やら柔らかなものが触れる。
「──ディード様。どうかなさいまして?」
「土の中で、自分では動かせないはずなのに、なんというか………、感触のようなものが、戻って……きたんだ」
「それは、今日が安息日だからですわ…。土の中のお体を動かさないと、根腐れが起こってしまいますもの。安息日には土台も休みを取ります。ディード様の首から下は、土台が自由に扱って良い日なのです」
「……土台……?」
視線を土に向けてみても、誰かが覗いている気配はない。ただ、土の中で何かが蠢いていて、それはが生きている動物か何かの生き物で有ることは、身動きが取れない身体に触れられるという感覚から読み取れた。
「ディート様。土台は、高貴なる花びとを育成する特別な人です。普段は土の中で暮らし、花びとの排せつ物をエサに土をキレイに整えるのです」
「この土の中に、人間が……?」
リネットは微笑みながら紅茶を口にし、吐き出した言葉に嘘はない事を告げた。
薬のせいで土に埋められる所を見ることは出来なかったが、人が埋まる程の深さの穴の更に下に、人間が住んでいるとも思えない。
「特別な土台とは別に、その土台の面倒を見る『土かけら』というヒトのような物質も住んでおります。私も見たことはございませんが、その更に下にも別の役割の泥奴が居ると聞いてます。土台とは違い、土かけらや泥奴は生きる価値が無いものと捨て置かれた存在です」
「そんな事が、許されるはず……」
兵力を重んじる国の関係から女性への地位は限りなく低く、本来なら神に祈りを捧げる安息日にも兵士になれない女性だけは働かなくてはならない。
ただ、女の働き口が少ない国なので、安息日の労働は貴重な収入源になっているとも聞く。
「——ディート様とお呼びするように伺ってます。貴方さまの安息日のお世話係、リネットです」
薄茶色の長い髪をした小柄な少女がディートの前で立ち止まり、手桶を置いて顔を拭いていく。
リネットの首には金属で出来た大きな首輪が取り付けられており、その後ろには鎖か何かで繋がれるための環がぶら下がっていた。
非合法な奴隷か、他の何かキツい仕事を強いられているらしい。
「……安息日では、花びと様は天蓋に顎を乗せたまま頭をお休み頂けます。私たちはその話し相手として、気持ちを休める為に何でも命じられるままに従う者です」
顎の枕が置かれたままで手入れをされていくので、確かに顔は休まる。いつもより丁寧に水や食事の粥が運ばれていき、洗い桶を反対にしてイスの代わりにリネットが座り。これで夜まで過ごすのが、安息日らしい。
「リネット。君は、ここで普段どんな役割をしているんだい?」
「私たちは、兵士さまの功をお慰めするための者です。元は敗戦国の娘でしたが、王族以外の貴族はお情けで生かされて、王宮や駐屯地で働いています……。交代で休みも取っているので、そこまで大変な仕事では有りませんし、子供を産んで育てる事も許されております。
中には兵士と恋仲になって平民として暮らしている者や、功績によって解放される者も居るそうですわ……」
慰み者という言葉からして、ここで咥内を弄んだ後の性の発散に使われているのだろう。男子を重んじる風習から、同性に走る者も多い為、そんな男たちの吐け口に花びとを使い、最後の性処理をするのがリネットのようだった。
「ディート様は、騎士団に居られたと聞いております。兵の中には女性に興味を示さない者の方が多いので、私たちの仕事はそこまで大変なものでも有りませんわ……。むしろ、花びとの皆さまに助けて頂いております」
背中には鞭傷のようなものが見えたが、リネットの身体は滑らかで食事もしっかりと取っているようだ。女性を痛ぶるような場所ではないようで、ディートは少しだけ安心した。
「お茶のご用意をしております。心を静かに保つよう、香草を入れたハーブティーに砂糖菓子、カカオやナッツまで、甘味は色々有ります…」
別の少女がトレイを運んできた、リネットはポットから熱い香草茶を注いで少し冷まし、顎を支えながらゆっくりとディードの口に運んでいく。
久しぶりの苦味と、合間に入れられる砂糖菓子の甘さに気持ちがとろけていく。安息日とはいえ、随分と豪華な待遇に自然と身体も落ち着いてきた。
髪を梳かれて顔を拭かれ、首から上しか出ていない顔が身体の全体で有るかのように感じられる。
土の中で動かせないままの身体は、温度や虫か何かが通り過ぎる感覚はあるが、既に自分の物でさえ無いような気分になっていた。
「………っ、何だか、身体に………」
リネットと城下の話を続けていると、反応が無かったはずの背中に寒気のようなものが走った。それは肩から腰回りへ、臀部から足へと広がっていき、局部へと何やら柔らかなものが触れる。
「──ディード様。どうかなさいまして?」
「土の中で、自分では動かせないはずなのに、なんというか………、感触のようなものが、戻って……きたんだ」
「それは、今日が安息日だからですわ…。土の中のお体を動かさないと、根腐れが起こってしまいますもの。安息日には土台も休みを取ります。ディード様の首から下は、土台が自由に扱って良い日なのです」
「……土台……?」
視線を土に向けてみても、誰かが覗いている気配はない。ただ、土の中で何かが蠢いていて、それはが生きている動物か何かの生き物で有ることは、身動きが取れない身体に触れられるという感覚から読み取れた。
「ディート様。土台は、高貴なる花びとを育成する特別な人です。普段は土の中で暮らし、花びとの排せつ物をエサに土をキレイに整えるのです」
「この土の中に、人間が……?」
リネットは微笑みながら紅茶を口にし、吐き出した言葉に嘘はない事を告げた。
薬のせいで土に埋められる所を見ることは出来なかったが、人が埋まる程の深さの穴の更に下に、人間が住んでいるとも思えない。
「特別な土台とは別に、その土台の面倒を見る『土かけら』というヒトのような物質も住んでおります。私も見たことはございませんが、その更に下にも別の役割の泥奴が居ると聞いてます。土台とは違い、土かけらや泥奴は生きる価値が無いものと捨て置かれた存在です」
「そんな事が、許されるはず……」
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