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仙女と迷子の冒険者
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とある霊峰と呼ばれる山の奥、一人の仙女が一匹の霊獣と暮らしていた。ある夜、力なく扉を叩く音がした。最初は風か何かかと思ったのだが、窓の外を見ると木々が揺れている様子はなかった。
「こんな時間に…もう百年以上、里に降りてないから知り合いなんて居ない筈だけど?」
そう思いながら警戒しつつ扉を開けた。すると扉の前には一人の傷だらけの少年が倒れていた。
「おいゲンティアナ、助けるのか?」
霊獣がそう仙女に話しかけた。
「だってカエルム、このまま放っておく訳にもいかないだろ?」
ゲンティアナは少年を家の中に運び込むとソファに寝かせて治癒術をかけた。そして少年の首から下がっていたIDタグを起こさないように外して手にとった。
「…セイル・スパンカー、冒険者、Fランク…スパンカー?どっかで聞いたような姓だね…」
ゲンティアナが首を傾げるとカエルムが呆れたように口を開いた。
「ほら、300年ぐらい前、一緒に旅した勇者が居たろ。」
それを聞いてゲンティアナはポンと手を叩いた。
「いたいた!珍しい苗字だって言ってたから末裔かもしれないね。カエルム、物置きで埃被ってる剣があったろ?磨いといて!」
「まだ末裔って決まった訳じゃ…はぁ…了解~」
言うだけ無駄だと思ったのだろう。カエルムは気だるそうに物置へと向かった。
「うぅん……ここはどこ?」
ようやく目を覚ましたセイルは見慣れない部屋の中をキョロキョロと見回した。
「セイルさん、お目覚めですか?」
「うわっ!」
不意に声を掛けられてセイルはソファから転げ落ちた。
「大丈夫ですか?」
心配そうにセイルに手を差し伸べたゲンティアナだったが内心、笑いを堪えていた。
(血は争えないって言うけど、300年前の勇者と、まるっきり同じ反応じゃないか。こりゃ間違いなく彼奴の末裔だね)
「ありがとう。ここは君の家?って言うか、どうして僕の名前を?」
「セイルさんが倒れていた場所に、こちらが落ちていましたから」
そう言って自分が外したIDタグをしれっと返した。
「ありがとう。君の名前は?御両親は?ここは何処?」
矢継ぎ早に質問をしてくる辺りも300年前の勇者によく似ていた。
「私の名前はゲンティアナ。ティアナと呼んでください。両親はいません。ここは霊峰の中腹よりもやや高い場所にあります。あまり人が上がってくるような場所でもないのにセイルさんは何故、こんな所に?」
それを聞いてセイルは少しすまなさそうな顔をした。
「御両親が…ゴメン、悪い事を聞いたね。まだ若いのにこんな場所で一人暮らしは大変だろうに。僕は御先祖様の剣を探しに来たんだ。信じてもらえないと思うけど、僕の御先祖様は勇者だったんだって。それで僕が冒険者になるって言ったら両親が、この山の何処かにある御先祖様の剣を見つけられたら冒険者になる事を許してくれるって。見つからなかったら冒険者の夢も諦めるって約束してね。本当は父さんも文献で見ただけで実在するかも分からないのに。」
まだ若いのにと言われてゲンティアナも反応に戸惑ったが、どうやらセイルが昔、ゲンティアナが一緒に冒険した勇者の末裔で間違いなさそうだ。
「カエルム、あれ持ってきて!」
「あ、他に誰か居…え?ええっ!ドラゴン!?」
ゲンティアナの声に応えるようにカエルムが小さい体で磨き終えた剣を運んできた。
「ほら、手前ぇの探し物はコイツだろ?」
「魔物が喋った!?」
セイルにとっては驚く事ばかりだった。Fランクの冒険者の仕事は殆どが収集作業で希少種であるドラゴンに会った事はない。しかも人間の言葉を話す魔物など見たこともない。だがカエルムにはセイルの反応が不満だった。
「誰が魔物だっ! 俺様は聖獣だ。そんじょそこらのドラゴンと一緒にしないでもらえるか?」
「すいませんカエルさん…」
「誰がカエルだ!カエルムな、カ・エ・ル・ム!」
そう言うとカエルムは腹立たしそうに剣を雑にセイルに向かって放り投げた。それをセイルが受け止めた瞬間、何かが響き合って唸るような音がした。
「うわっ!うわっ!うわっ!」
セイルは慌てて叫んでいるが剣が手から離れないようだった。やがて音が収まるとセイルは疲労困憊していた。
「あぁ~どうやら本当にお前、ドラコ・スパンカーの末裔なんだな。人間と違って剣は嘘つかないからな。」
カエルムの言葉にセイルはキョトンとしていた。
「なんだよ、文献とやらに書いてなかったのか?そいつは特別な剣で魂が共鳴した相手にしか握らせてくれねぇ。さっきの音はその魂の共鳴音ってやつだ。」
二人の会話を聞いていたゲンティアナがポンポンと手を叩いた。
「はいはい、カエルムも話はそこまでにしてあげて。セイルさん、今日は遅いので食事を済ませてお休みください。それに目的の剣も手に入ったのですから明日は早めに下山する事をお勧めします。」
「そ、そうですね。そうさせてもらいます。」
セイルは食事を済ませると大切そうに剣を抱えてベッドに潜り込んだ。
「こんな時間に…もう百年以上、里に降りてないから知り合いなんて居ない筈だけど?」
そう思いながら警戒しつつ扉を開けた。すると扉の前には一人の傷だらけの少年が倒れていた。
「おいゲンティアナ、助けるのか?」
霊獣がそう仙女に話しかけた。
「だってカエルム、このまま放っておく訳にもいかないだろ?」
ゲンティアナは少年を家の中に運び込むとソファに寝かせて治癒術をかけた。そして少年の首から下がっていたIDタグを起こさないように外して手にとった。
「…セイル・スパンカー、冒険者、Fランク…スパンカー?どっかで聞いたような姓だね…」
ゲンティアナが首を傾げるとカエルムが呆れたように口を開いた。
「ほら、300年ぐらい前、一緒に旅した勇者が居たろ。」
それを聞いてゲンティアナはポンと手を叩いた。
「いたいた!珍しい苗字だって言ってたから末裔かもしれないね。カエルム、物置きで埃被ってる剣があったろ?磨いといて!」
「まだ末裔って決まった訳じゃ…はぁ…了解~」
言うだけ無駄だと思ったのだろう。カエルムは気だるそうに物置へと向かった。
「うぅん……ここはどこ?」
ようやく目を覚ましたセイルは見慣れない部屋の中をキョロキョロと見回した。
「セイルさん、お目覚めですか?」
「うわっ!」
不意に声を掛けられてセイルはソファから転げ落ちた。
「大丈夫ですか?」
心配そうにセイルに手を差し伸べたゲンティアナだったが内心、笑いを堪えていた。
(血は争えないって言うけど、300年前の勇者と、まるっきり同じ反応じゃないか。こりゃ間違いなく彼奴の末裔だね)
「ありがとう。ここは君の家?って言うか、どうして僕の名前を?」
「セイルさんが倒れていた場所に、こちらが落ちていましたから」
そう言って自分が外したIDタグをしれっと返した。
「ありがとう。君の名前は?御両親は?ここは何処?」
矢継ぎ早に質問をしてくる辺りも300年前の勇者によく似ていた。
「私の名前はゲンティアナ。ティアナと呼んでください。両親はいません。ここは霊峰の中腹よりもやや高い場所にあります。あまり人が上がってくるような場所でもないのにセイルさんは何故、こんな所に?」
それを聞いてセイルは少しすまなさそうな顔をした。
「御両親が…ゴメン、悪い事を聞いたね。まだ若いのにこんな場所で一人暮らしは大変だろうに。僕は御先祖様の剣を探しに来たんだ。信じてもらえないと思うけど、僕の御先祖様は勇者だったんだって。それで僕が冒険者になるって言ったら両親が、この山の何処かにある御先祖様の剣を見つけられたら冒険者になる事を許してくれるって。見つからなかったら冒険者の夢も諦めるって約束してね。本当は父さんも文献で見ただけで実在するかも分からないのに。」
まだ若いのにと言われてゲンティアナも反応に戸惑ったが、どうやらセイルが昔、ゲンティアナが一緒に冒険した勇者の末裔で間違いなさそうだ。
「カエルム、あれ持ってきて!」
「あ、他に誰か居…え?ええっ!ドラゴン!?」
ゲンティアナの声に応えるようにカエルムが小さい体で磨き終えた剣を運んできた。
「ほら、手前ぇの探し物はコイツだろ?」
「魔物が喋った!?」
セイルにとっては驚く事ばかりだった。Fランクの冒険者の仕事は殆どが収集作業で希少種であるドラゴンに会った事はない。しかも人間の言葉を話す魔物など見たこともない。だがカエルムにはセイルの反応が不満だった。
「誰が魔物だっ! 俺様は聖獣だ。そんじょそこらのドラゴンと一緒にしないでもらえるか?」
「すいませんカエルさん…」
「誰がカエルだ!カエルムな、カ・エ・ル・ム!」
そう言うとカエルムは腹立たしそうに剣を雑にセイルに向かって放り投げた。それをセイルが受け止めた瞬間、何かが響き合って唸るような音がした。
「うわっ!うわっ!うわっ!」
セイルは慌てて叫んでいるが剣が手から離れないようだった。やがて音が収まるとセイルは疲労困憊していた。
「あぁ~どうやら本当にお前、ドラコ・スパンカーの末裔なんだな。人間と違って剣は嘘つかないからな。」
カエルムの言葉にセイルはキョトンとしていた。
「なんだよ、文献とやらに書いてなかったのか?そいつは特別な剣で魂が共鳴した相手にしか握らせてくれねぇ。さっきの音はその魂の共鳴音ってやつだ。」
二人の会話を聞いていたゲンティアナがポンポンと手を叩いた。
「はいはい、カエルムも話はそこまでにしてあげて。セイルさん、今日は遅いので食事を済ませてお休みください。それに目的の剣も手に入ったのですから明日は早めに下山する事をお勧めします。」
「そ、そうですね。そうさせてもらいます。」
セイルは食事を済ませると大切そうに剣を抱えてベッドに潜り込んだ。
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