宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

黒鯛の刺身♪

文字の大きさ
32 / 148
【第一章】青い地球

第三十二話……兵站と整備能力

しおりを挟む
 装甲戦艦ハンニバル。

 この艦はその巨体をいかし、特殊な設備を備えていた。



 それは、僚艦であるオムライスやジンギスカンの修理やメンテナンスを行う目的の施設だ。



 左舷に全長400mまでの艦を半格納できるドックを持つ。

 いわば、動く入渠施設だった。





「良い装備だな」



 ハンニバルの設備を見学に来たシャルンホルストさんに褒められた。





「無駄な施設だと笑われると思いましたが……」



「確かに、使い方によっては無駄かもしれんがな」



 シャルンホルストさんが言うには、戦争において『素人は戦略を語り、軍人は兵站を語る』ものらしい。



 歴史上、兵站システムの8割以上は物資の輸送が占めていた。

 中世までなら、兵站とは主に食料と馬の飼葉の輸送といった具合だ。



 しかし、現在は大きくテクノロジーが進化した。

 兵站の質の変化が生じたのである。



 例えば、いくら輸送能力や一般人員があっても最新戦闘機の整備はできないだろう。



 最新鋭の戦闘機は今までの戦闘機より遥かに整備コストがかかる。

 つまり、兵器の技術が上がれば整備はいらないということにはならなかった。



 現在の最新F-1マシンが、日々多くの専門的な整備を必要とするように、この世界の宇宙船も大きな整備コストが必要だったのだ。



 よって、戦闘にテクノロジーの要素が多くなればなるほど、兵站において専門的な整備メンテナンスの割合が二次曲線的に増加していったのだった。





 そして、その重要なハンニバルの整備責任者は、



「お酒が足らないクマー!」





 お酒大好きなクマ殿だった。







☆★☆★☆



 ツェルベルス星系より無事にエールパ星系に戻ったハンニバルは、衛星アトラスの宇宙港に入港した。





「整備は頼んだよ」

「まかせろクマ♪」



 整備班長のクマに声をかけた後。

 私は空が青くない世界から、美しい四季がある世界にログアウトした。





 VR接続機器であるカプセルから這い出て、いそいそとコンビニに向かう。

 2月とはいえ、昼間は太陽がまぶしい。

 ATMでお金を払い出し、お弁当とお茶、おやつと缶コーヒーを買った。





 風呂に入ったあと、一人で昼食を摂る。

 そして、食後にチョコレートを食べた。



 PCで調べてみると、チョコレートの原材料を生産するカカオ農家の日当は100円位だそうだ。

 しかもカカオ農家の子供の30%は、学校に一度も行ったことがないらしい。





 ……ゲームの中の世界もそうだった。



 リアルの世界より技術が進んではいるが、主に食料を生産する辺境星域の多くの人々は機械化の恩恵を受けてはいない。



 食料を多く消費する首都星系などへの輸送手段は、大企業が独占的に持っていたために、生産地ではとても安く買いたたかれる。



 そのために、食料生産者の多くは日々の生活がやっとで、次の収穫を多くするための設備投資余力がないのだ。



 よって、何時まで経っても、この食料事情は解決しない。



 ……このゲームはとても現実的に造られたゲーム世界だなと思った。



 私は缶コーヒーを啜り終わった後、ゲームに戻った。







☆★☆★☆



「貯蔵タンクがいっぱいになりましたわ」

「沢山あるから売るポコ?」



 宇宙海賊の隠しアダマンタイト鉱区からの宇宙油井は好調。

 エネルギー備蓄は計画を上回っていた。





「輸送コストがなぁ……」



 私がケチ臭いことを言うと、





「蛮王様に買って貰っては?」

「買ってくれるはずポコ」



 副官殿の意見に従い、アダマンタイトは隣の惑星の蛮王様に売ることにした。

 ……かなり値切られたが。





 このころになると、惑星リーリヤの宇宙港はかなり整備されていた。

 ちなみに他の星系だと、宇宙船の整備もろくにできないところもある。





 惑星リーリヤの造船所で建造された宇宙船は全て、核融合炉方式である。



 この方式は古代超文明アヴァロンの遺産は必要ないのだが、一度長距離跳躍をするとしばらく動けなくなる欠点がある。

 軍用で言えば、エルゴエンジンに比べシールドの出力もかなり低い。



 逆に言えば、ミサイルなどの実弾兵器に限れば核融合炉艦はそこそこ戦力になる。

 超距離跳躍の件も、星系内防衛戦に限ればそこまで不利にはならないはずだった。





 蛮王様は自国防衛の為に、惑星リーリヤ独自の艦隊を新設しようとしていた。

 もはや、カリバーン帝国軍はあまりあてにならなかったのである。







☆★☆★☆



【ハンニバル開発公社事業内訳】



・住宅地開発部門……若干の赤字

・工業地開発部門……黒字転換

・商業地開発部門……若干の赤字



・宇宙港運営部門……黒字

・ミスリル鉱山及び精製施設……好調



・水供給部門……採算好転見込み無し。

・新規鉱山開発……黒字



・アダマンタイト生産部門……絶好調♪

・惑星リーリヤ造船部門……好調



・子会社経営……絶賛赤字中



……ハンニバルの大型化の改装代が大きく、未だに負債多し。









(´・ω・`) 経営好転中♪

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...