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【第一章】青い地球
第四十五話……作戦会議『ツェルベルク首都星系』
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ツェルベルス星系新帝都バルバロッサ総司令部大会議室。
私はこの厳かな会議に参加していた。
高級なソファーに紅茶とお菓子付きである。
なんだか偉い人になった気分だ。
「はじめてもらおう」
この会議の議長であるクレーメンス公爵元帥が声を発する。
カリバーン帝国の皇帝たる女帝パウリーネは僅か8歳。
彼女の後ろ立てこそクレーメンス公爵元帥であり、帝国の軍事部門のTOPである帝国統合防衛会議議長だった。
……そう、この度は侵攻作戦なのだが、人類は有史以来、自分たちの軍こそは防衛の為であると名目を付けるのが大好きなのだ。
「あまり大規模な作戦はこまるぞよ……予算がの……」
首席アドバイザーとして出席しているのは、帝国の国庫を預かる財務大臣アーベライン伯爵だ。
彼は日頃から常に経済政策に身を投じる白髪の老人だった。
「……ちっ、老いぼれが……」
クレーメンス公爵とアーベライン伯爵は犬猿の仲だった。
二人とも帝室や経済界と血縁関係にある重鎮だった。
まあ、軍事のTOPと財政のTOPが険悪というのは、有史以来よく見られることである。
その方が国として、健全かもしれない。
「えー今回の作戦につきまして、ご説明を申し上げます……」
統合軍司令長官パウルス上級大将が今回の作戦の概要を述べる。
彼は帝国の惑星地上軍と宇宙艦隊という二つの軍をまとめる要職だった。
彼の下座に、惑星地上軍のTOPであるバールケ大将と、宇宙艦隊TOPのヘルツォーゲン大将が並ぶ。
ちなみに人数的に、惑星地上軍の方が人員の面で多いために、宇宙艦隊より惑星地上軍の方が優位な立場にある。
「わはは……、艦隊戦で勝ってくれるなら全ての星を制圧してやるぞ! 勝てるならな!」
ビア樽のような巨躯のひげ面であるバールケ惑星地上軍大将が豪快に笑う。
「……」
細身の老提督であるヘルツォーゲン宇宙軍大将は挑発に乗らない。
目を静かにつむったままだ。
ヘルツォーゲン宇宙軍大将の下には、実際に星系連合艦隊を率いる中将クラスがおり、その下に星系艦隊を統括する少将や准将クラスが配されている。
私は本来エールパ星系を統括する准将クラスの代理という訳だ。
エールパ星系の惑星地上軍の代表は、惑星リーリヤのヘッツアー軍務卿だった。
「……いつも貴様らが艦隊戦に負けるからだろうが! この宇宙のクズが!」
「……先日の輸送船団の功績を忘れたのか!? この地上のゴミが!」
惑星地上軍の参謀と、宇宙艦隊の参謀がなじり合う。
激しいヤジの応酬と、怒号が響いた。
……会議は基本的に、今回の作戦での帝国の惑星地上軍と宇宙艦隊の主導権争いだった。
ハッキリ言えば、とても眠たい内容だった……。
昼休みで会議は一時中断。
「新任のヴェロヴェマと申します!」
「あ、私も新任なんですよ。よろしくお願いします!」
昼休みの議場で名刺交換。他星系の星系艦隊司令にあいさつに出向く。
意外なことに、私と同じように大佐で代理という方が4名もいた。
現在、帝国には艦隊を持つ星系は24個ある。
よって5つの星系が、私のように代理提督だった。
「貴様は何期だ?」
「……えと?」
「軍の参謀大学校だよ!」
「……あ、出ておりません……」
頭をかく私。
「なんだ……ノンキャリか? クズめ……」
彼は帝国の新帝都バルバロッサが存在する首都星系ツェルベルス星系の星系艦隊司令官トロスト中将だ。
首都星系だけに、星系艦隊司令官はここだけ中将が配されている。
我々ノンキャリア組が星系艦隊司令官になることが、参謀大学校出のエリート様には気に食わないらしい。
……こういうのはどこの世界にもあるよね ( ˘ω˘)
☆★☆★☆
午後の会議でも、私は発言の機会を与えられなかった。
現実の世界でも、会議にでても発言権はお偉いさんにしかないことはままある。
おとなしく話を聞いていただけだった。
しかし、出てきた紅茶はちゃんとお替りしたし、お菓子もちゃんと食べた。
……凄く小市民的な自分に照れる。
間違いなく自分は貴種ではない。
作戦名は『聖騎士の行軍』と銘打たれた。
我々が正義であるといった意味合いだった……。
共和国への攻撃は決定事項として扱われ、作戦の細部については、作戦参謀たちが煮詰めることになった。
私はルドミラ教国への備えとしてアルデンヌ星系の防衛の任を受けた。
ちなみに星系艦隊代理の大佐クラスの4名は全員、私と同じく今回は防衛任務だ。
攻撃任務に付けるのは、参謀大学校出身のエリートだけの布陣である。
ノンキャリアの我々が功績をあげて出世するのはきっと困るのだろう……。
私は帰りに、新帝都バルバロッサの有名ケーキ屋さんに寄って、宇宙港に停泊するハンニバルで待つ皆へのお土産にケーキを買った。
赤いイチゴののったショートケーキを選んでおいた。
……きっとクリームヒルトさんや、タヌキ軍曹たちが喜んでくれるに違いないと思った。
☆★☆★☆
「違うポコ!」
「だめクマね!」
「閣下、あの有名ケーキ屋さんはモンブランが美味しいのですわ……楽しみにしていましたのに……」
「駄目閣下にゃ! 使えないニャ!」
「使えないメェ~」
……めっちゃ責められた。
何このお土産の選択をミスった私への仕打ちは……。
世の中にはどうも間違えてはいけない選択の時があるらしい……(´・ω・`)
その後、ハンニバルはエールパ星系目指して発進した。
作戦開始は2か月後。
それまでに準備をして、主力部隊が遠征中の間、帝国の人民と領土を護るのだ。
……私は少ししょっぱい気持ちになりながら、新帝都バルバロッサのあるツェルベルス星系をあとにしたのだった。
私はこの厳かな会議に参加していた。
高級なソファーに紅茶とお菓子付きである。
なんだか偉い人になった気分だ。
「はじめてもらおう」
この会議の議長であるクレーメンス公爵元帥が声を発する。
カリバーン帝国の皇帝たる女帝パウリーネは僅か8歳。
彼女の後ろ立てこそクレーメンス公爵元帥であり、帝国の軍事部門のTOPである帝国統合防衛会議議長だった。
……そう、この度は侵攻作戦なのだが、人類は有史以来、自分たちの軍こそは防衛の為であると名目を付けるのが大好きなのだ。
「あまり大規模な作戦はこまるぞよ……予算がの……」
首席アドバイザーとして出席しているのは、帝国の国庫を預かる財務大臣アーベライン伯爵だ。
彼は日頃から常に経済政策に身を投じる白髪の老人だった。
「……ちっ、老いぼれが……」
クレーメンス公爵とアーベライン伯爵は犬猿の仲だった。
二人とも帝室や経済界と血縁関係にある重鎮だった。
まあ、軍事のTOPと財政のTOPが険悪というのは、有史以来よく見られることである。
その方が国として、健全かもしれない。
「えー今回の作戦につきまして、ご説明を申し上げます……」
統合軍司令長官パウルス上級大将が今回の作戦の概要を述べる。
彼は帝国の惑星地上軍と宇宙艦隊という二つの軍をまとめる要職だった。
彼の下座に、惑星地上軍のTOPであるバールケ大将と、宇宙艦隊TOPのヘルツォーゲン大将が並ぶ。
ちなみに人数的に、惑星地上軍の方が人員の面で多いために、宇宙艦隊より惑星地上軍の方が優位な立場にある。
「わはは……、艦隊戦で勝ってくれるなら全ての星を制圧してやるぞ! 勝てるならな!」
ビア樽のような巨躯のひげ面であるバールケ惑星地上軍大将が豪快に笑う。
「……」
細身の老提督であるヘルツォーゲン宇宙軍大将は挑発に乗らない。
目を静かにつむったままだ。
ヘルツォーゲン宇宙軍大将の下には、実際に星系連合艦隊を率いる中将クラスがおり、その下に星系艦隊を統括する少将や准将クラスが配されている。
私は本来エールパ星系を統括する准将クラスの代理という訳だ。
エールパ星系の惑星地上軍の代表は、惑星リーリヤのヘッツアー軍務卿だった。
「……いつも貴様らが艦隊戦に負けるからだろうが! この宇宙のクズが!」
「……先日の輸送船団の功績を忘れたのか!? この地上のゴミが!」
惑星地上軍の参謀と、宇宙艦隊の参謀がなじり合う。
激しいヤジの応酬と、怒号が響いた。
……会議は基本的に、今回の作戦での帝国の惑星地上軍と宇宙艦隊の主導権争いだった。
ハッキリ言えば、とても眠たい内容だった……。
昼休みで会議は一時中断。
「新任のヴェロヴェマと申します!」
「あ、私も新任なんですよ。よろしくお願いします!」
昼休みの議場で名刺交換。他星系の星系艦隊司令にあいさつに出向く。
意外なことに、私と同じように大佐で代理という方が4名もいた。
現在、帝国には艦隊を持つ星系は24個ある。
よって5つの星系が、私のように代理提督だった。
「貴様は何期だ?」
「……えと?」
「軍の参謀大学校だよ!」
「……あ、出ておりません……」
頭をかく私。
「なんだ……ノンキャリか? クズめ……」
彼は帝国の新帝都バルバロッサが存在する首都星系ツェルベルス星系の星系艦隊司令官トロスト中将だ。
首都星系だけに、星系艦隊司令官はここだけ中将が配されている。
我々ノンキャリア組が星系艦隊司令官になることが、参謀大学校出のエリート様には気に食わないらしい。
……こういうのはどこの世界にもあるよね ( ˘ω˘)
☆★☆★☆
午後の会議でも、私は発言の機会を与えられなかった。
現実の世界でも、会議にでても発言権はお偉いさんにしかないことはままある。
おとなしく話を聞いていただけだった。
しかし、出てきた紅茶はちゃんとお替りしたし、お菓子もちゃんと食べた。
……凄く小市民的な自分に照れる。
間違いなく自分は貴種ではない。
作戦名は『聖騎士の行軍』と銘打たれた。
我々が正義であるといった意味合いだった……。
共和国への攻撃は決定事項として扱われ、作戦の細部については、作戦参謀たちが煮詰めることになった。
私はルドミラ教国への備えとしてアルデンヌ星系の防衛の任を受けた。
ちなみに星系艦隊代理の大佐クラスの4名は全員、私と同じく今回は防衛任務だ。
攻撃任務に付けるのは、参謀大学校出身のエリートだけの布陣である。
ノンキャリアの我々が功績をあげて出世するのはきっと困るのだろう……。
私は帰りに、新帝都バルバロッサの有名ケーキ屋さんに寄って、宇宙港に停泊するハンニバルで待つ皆へのお土産にケーキを買った。
赤いイチゴののったショートケーキを選んでおいた。
……きっとクリームヒルトさんや、タヌキ軍曹たちが喜んでくれるに違いないと思った。
☆★☆★☆
「違うポコ!」
「だめクマね!」
「閣下、あの有名ケーキ屋さんはモンブランが美味しいのですわ……楽しみにしていましたのに……」
「駄目閣下にゃ! 使えないニャ!」
「使えないメェ~」
……めっちゃ責められた。
何このお土産の選択をミスった私への仕打ちは……。
世の中にはどうも間違えてはいけない選択の時があるらしい……(´・ω・`)
その後、ハンニバルはエールパ星系目指して発進した。
作戦開始は2か月後。
それまでに準備をして、主力部隊が遠征中の間、帝国の人民と領土を護るのだ。
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