宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

黒鯛の刺身♪

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【第二章】赤い地球

第九十五話……掘削開始!? 資源天体の発見!

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――戦術短距離跳躍。



 俗にジャンプと言われる短距離型のワープ航法である。

 一回のジャンプで約50万キロ以上を踏破する。



 そもそもワープとは空間を折り畳み、距離自体の方を短縮してしまう亜空間利用の航法である。

 しかし、移動地点へと向かう亜空間航路の演算は時間とエネルギーが大量にかかる。



 長距離跳躍は現在の多くの型式の船が可能とするが、一回跳躍を行うとエネルギーの都合上、8~24時間は次の跳躍が出来ない。

 短距離跳躍はそれほどはエネルギーを必要としないが、それであっても戦闘中に使用するにはエルゴ機関を搭載していないと難しい。

 さらにはエネルギーや航法演算の都合上、宇宙図が存在しないような空間では多用はできなかった。





「短距離跳躍で逃げますか?」



 副官殿が問う。

 確かに巨大な細胞のような生命体に飲み込まれたようだが、いまのところあまり危険は感じない。

 この生命体は巨大な代わりに、可視光線が透けるほど密度が薄かったのだ。





「このまま進もう!」

「了解ですわ!」



 短距離跳躍を行う判断は見送った。



 副官殿が注意して三次元式の操舵を握る。

 ハンニバルの操舵は、現実世界で言うならばフライ・バイ・ライトである。





 その後も、半透明の未知の巨大生命体の中を航行するハンニバル。





「とても奇麗ですわね」

「奇麗なクラゲの中みたいだクマ♪」



 巨大な半透明の鞭毛や核が、窓の外一面にカラフルに散らばる景色。

 よく生命を大宇宙というが、その言葉がまさにそのものの景色だった。





 しかし、生き物であるならば、異物であるハンニバルを攻撃しないのだろうか?



 ……疑問に思いながら航行していたが、いつの間にか巨大な生命体の内部からは脱出していた。

 はるか後ろに巨大生命体が見える。





「バイバイぽこ!」



 生命体に手を振るタヌキ砲術長。

 ……あれは、きっとおとなしい巨大生物だったのだろうと後で思った。







――それから8時間後。



「探査機に反応!」

「希少資源の可能性があります!」



 左前方の空間にある巨大小惑星に資源調査センサーが反応した。





「逆噴射! 相対速度を調節しろ!」

「了解!」



 ハンニバルは減速し、目標の巨大小惑星に接舷する。



 ……やっと、目標物かもしれない。

 気が付けば惑星ベルから2週間の距離まで航行していたのだった。







☆★☆★☆



 ハンニバルは巨大な小惑星に着陸していた。

 大気は無いので空は暗く、星の海が煌めく。



 私達は装甲服をきて巨大小惑星に降り立った。





「試掘をしてみるクマ♪」

「お願いします!」



 クマ整備長がドリル付きの探査機器を巨大小惑星に打ち込む。

 探査機は回転しながら、岩盤に潜っていった。





 ……暫しののち。

 探査機が反応。

 青と緑のランプが灯る。





「濃いミスリル鉱石の成分を検出したクマ♪」

「おお?」



「やったポコ!」



 この小惑星は地球の月の1/4ほどの直径がある。

 資源天体としては十分な大きさだった。





「急いで試掘を続けよう!」

「了解ですわ!」



 タヌキ砲術長殿や副官殿にも頼み、ハンニバルから採掘用のプラントのパーツを運び出す。

 その後、ドラグニル陸戦隊に組み立てて貰い、採掘プラントを大々的に展開した。





「アニキ! 掘削を開始するぞ!」

「お願いします!」



 皆でバリバリと土木工事。

 ハンニバルの乗員もフル稼働した。



 掘削マシンやらダンプカーがハンニバルより運び出され、次々に稼働していった。



 掘削された鉱石がベルトコンベアで大量に運び出される。





「良質な鉱石クマ♪」

「凄いですわね♪」



 ミスリルや鉄以外にも、銅やチタンやプラチナ、マグネシウムなど有益な鉱石が多数産出していった。





「惑星ベルに連絡して、大型の輸送船に来てもらおう!」

「お宝の山ですわね♪」



「大金持ちポコ♪」



 急いで惑星ベルに探査報告の連絡をとり、資源輸送用の大型コンテナ輸送船をチャーターした。



 ……未開地域の楽しい発掘調査。

 長い距離を探査してきた甲斐があったというものだった。







「あれはなんだポコ?」

「!?」



 タヌキ砲術長が指さす遥か向こうに、大型の人工的な飛来物が見える。

 ……しかし、生命反応らしきものがない。





「自立型AI型ドローンですかね?」

「……星間条約に違反クマ?」



 ……この世界は機械生命体の反乱を恐れるため、自立型AIの使用は厳しく規制されていたのだった。





 そもそもが、ここは未開の地であったために、人の気配がしない。

 人がいないところに、機械だけが棲んでいるというのは、星間条約に違反していた。





「攻撃はしてきませんわね」

「どうするポコ?」



「……うーん」



 ……私達には、有益な資源以外にも調査する対象があるようだった。







☆★☆★☆



――翌日。



「ドラグニル陸戦隊、整列!」

「番号! 1・2・3……」



 アルベルト王子とバフォメットさんにも頼んで、昨日のドローンの件を調査する部隊を編成することにした。



 アルベルト王子が率いるドラグニル陸戦隊は、ファンタジー世界に出てくるような二足歩行の小型龍族であるリザードマンで構成されている。

 彼らはカリバーン帝国有数の戦闘種族だ。

 さらに、装甲車4台と戦車2台も動員する。



 クマ整備長とハンニバルの普通の乗組員に見送られ、私は調査隊として編成されたドラグニル陸戦隊300名を率いて、昨日見かけたドローンの方角へと歩を進めた。
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