宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

黒鯛の刺身♪

文字の大きさ
122 / 148
【第三章】燃え盛るカリバーン帝国

第百二十二話……戦場の魔神ヴェロヴェマ

しおりを挟む
――俺の名はトロスト。

 階級は中将。

 カリバーン帝国宇宙軍第六艦隊の司令官だ。



 俺はこのゲームをかなりやり込んでいる。



 名のあるプログラムにチートプログラムも組んでもらって、RMTにも何百万円もつぎ込んだ。

 俺のことを師匠と慕う奴もいた。神と言って慕ってくれたやつもいた。

 やはり世の中、金だよな。

 貧乏庶民よ、くたばれてんだ。



 地球でのいざこざで、ユーザーがめっきり減ったが、俺は課金力で成り上がってやった。

 なんなら運営だって買収したっていい。



 なんたって俺の親父は、大手自動車メーカーの創業家で常務執行役だぞ。

 ちなみに次期社長なんだ。



 俺に手に入らないものは何もない。

 友達も地位も、優しくて美しい女も例外ではない……。



 しかし、ゲームの中で出てきやがったヴェロヴェマ。

 こいつが許せねぇ……。



 チートと金で稼ぎまくった俺でさえ、中将になれるのが精いっぱいなのに、こいつは大将にまでなってやがる。RMT仲間のシェリオもこいつのせいで、グングニル共和国の監獄行きだ。

 許せねぇ。絶対に!!



 このヴェロヴェマってやつは本当に腐ってやがる。

 今すぐ地獄に送ってやるぜ。

 なんといっても俺は神で、皆の師匠だもんな!



 今から、最高のクランマスターの戦略ってやつを見せてやるぜ。







「航空機全機発艦! 繰り返す、航空機全機発艦!」

「了解!」



「宇宙空母8隻より、装備A型の284機発艦致しました!」



「うむ」





「……で、敵の迎撃機は!?」

「はっ! 制空戦闘機56機及び、重雷撃機一機です!」



「うははは! 奴等は戦闘機が足らず、艦船攻撃用の雷撃機までだしてきたか!」





 ……しかし、俺は油断しない。

 これこそ俺が、みんなに師匠と言われている所以である。





「全砲門開け! 長距離射撃開始!」



 戦艦と重巡の大口径レーザーが敵巨艦を襲う。



 味方の艦載機が、多少巻き込まれるが仕方あるまい……。

 ……大事の前の小事だ。





「ち、長距離砲撃、効果がありません!」

「て、敵、電磁障壁が異常です!」



「なんだと!? では艦載機は!?」



「ぜ、全機撃墜されました!」



「……な、馬鹿な! 奴は魔神か悪魔か!?」



 しかし、未来の大戦略家である俺は慌てない。

 いつの世にも不確実なことはあるのだ……。





「仕方ない、惑星破壊砲を前に出せ! 鬱陶しいハンニバルを全力で消すぞ!」



「それはリーゼンフェルト閣下から 艦隊戦では使うと言われているはずではありませんか? 希少な兵器の喪失リスクは避けるべきです!」



「うるさい! 父ちゃんに言いつけるぞ!」

「すぐさまエネルギー充電しろ!」



「了解!」



 ……俺は勝利を確信していた。







☆★☆★☆



「ふぅ~」



 私は艦橋で煙草を吸っていた。

 サボっていたわけではない。

 落ち着くために、何でもしておきたかったのだ。





「提督! 敵は惑星破壊砲を前面に出してきましたわ!」



「よし、これさえ叩けば、我々の安全がある程度確保されるぞ!」



 ……しかし、惑星破壊砲って大きいなぁ。

 全長8kmはありそうな機動要塞型の巨砲だった。





「主砲斉射!」

「了解ポコ!」



 ハンニバルの主砲から、大口径レーザーの光条が放たれる。

 ……しかし、敵のシールドを貫いても、本体の装甲モジュールが厚く、ダメージがあまり通ってそうになかった。



「砲撃中止!」



「マイクロ・クエーサー砲、発射用意!」

「了解!」



 戦慄が走る。

 この巨砲を撃つ場合にはハンニバルのシールド力が著しく下がる。

 一刻も早く、かつ正確に撃たねばならなかったのだ。





「エネルギー急速チャージ! なりふり構うな!」

「はっ!」



「……」

「エネルギー充填50%」

「……エネルギー充填78.6%」





【魔眼判定】……現状の充填で、敵破壊率99.8%です。



 ……!?



「充分だ! かまわん撃て!」

「了解ポコ!」



 ハンニバルのマイクロ・クエーサー砲から膨大なガンマ線が放たれる。



――ズシィィィィン





 その高出力エネルギーの束は、敵旗艦と惑星破壊砲を粉々に吹き飛ばした。





「命中! やったポコ!」

「やりましたわ!」



「あなたは雑魚だ! 掃討せよ!」



「「「了解!」」」





 正直、残った無傷の敵艦船は、未だ98隻を数えた。

 雑魚というにはあまりにも多い数だった。



 しかし勢いに任せ、ハンニバルとその艦載機群は次々に敵を打ち破った 。

 主砲塔の大口径レーザー砲が咆え、大型ミサイルが次々に敵を撃破した。

 艦載機群も宙を舞い、指揮官を失った敵艦を次々に葬った。



 旗艦と頼みの惑星破壊砲を一瞬で破壊され、敵艦隊は混乱の極みだった。

 逃げまどう艦と、戦おうとする艦艇が交錯し、激突したり同士討ちをも起こす。

 敵からすれば、阿鼻叫喚の世界だった。





「私も出るぞ!」



 私も愛機に跳び乗り、管制に告げる。





「ケルベロス発進!」



「了解!」



 電磁カタパルトの強烈な加速Gが、この日だけは心地よかった。







☆★☆★☆



(……数時間後)



「敵艦隊、敗走していきます!」





「追撃せよ! 一隻も逃がすな!!」



「了解!」







 ……この日ハンニバルは、敵艦56隻を撃沈。83隻を中大破。残りの多くを敗走に追いやった。

 たった一隻で一個艦隊を敗走せしめる前人未到の大戦果と、前代未聞の大勝利を挙げた。



 ヴェロヴェマ提督という名とともに……。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

処理中です...