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【第三章】燃え盛るカリバーン帝国
第百二十二話……戦場の魔神ヴェロヴェマ
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――俺の名はトロスト。
階級は中将。
カリバーン帝国宇宙軍第六艦隊の司令官だ。
俺はこのゲームをかなりやり込んでいる。
名のあるプログラムにチートプログラムも組んでもらって、RMTにも何百万円もつぎ込んだ。
俺のことを師匠と慕う奴もいた。神と言って慕ってくれたやつもいた。
やはり世の中、金だよな。
貧乏庶民よ、くたばれてんだ。
地球でのいざこざで、ユーザーがめっきり減ったが、俺は課金力で成り上がってやった。
なんなら運営だって買収したっていい。
なんたって俺の親父は、大手自動車メーカーの創業家で常務執行役だぞ。
ちなみに次期社長なんだ。
俺に手に入らないものは何もない。
友達も地位も、優しくて美しい女も例外ではない……。
しかし、ゲームの中で出てきやがったヴェロヴェマ。
こいつが許せねぇ……。
チートと金で稼ぎまくった俺でさえ、中将になれるのが精いっぱいなのに、こいつは大将にまでなってやがる。RMT仲間のシェリオもこいつのせいで、グングニル共和国の監獄行きだ。
許せねぇ。絶対に!!
このヴェロヴェマってやつは本当に腐ってやがる。
今すぐ地獄に送ってやるぜ。
なんといっても俺は神で、皆の師匠だもんな!
今から、最高のクランマスターの戦略ってやつを見せてやるぜ。
「航空機全機発艦! 繰り返す、航空機全機発艦!」
「了解!」
「宇宙空母8隻より、装備A型の284機発艦致しました!」
「うむ」
「……で、敵の迎撃機は!?」
「はっ! 制空戦闘機56機及び、重雷撃機一機です!」
「うははは! 奴等は戦闘機が足らず、艦船攻撃用の雷撃機までだしてきたか!」
……しかし、俺は油断しない。
これこそ俺が、みんなに師匠と言われている所以である。
「全砲門開け! 長距離射撃開始!」
戦艦と重巡の大口径レーザーが敵巨艦を襲う。
味方の艦載機が、多少巻き込まれるが仕方あるまい……。
……大事の前の小事だ。
「ち、長距離砲撃、効果がありません!」
「て、敵、電磁障壁が異常です!」
「なんだと!? では艦載機は!?」
「ぜ、全機撃墜されました!」
「……な、馬鹿な! 奴は魔神か悪魔か!?」
しかし、未来の大戦略家である俺は慌てない。
いつの世にも不確実なことはあるのだ……。
「仕方ない、惑星破壊砲を前に出せ! 鬱陶しいハンニバルを全力で消すぞ!」
「それはリーゼンフェルト閣下から 艦隊戦では使うと言われているはずではありませんか? 希少な兵器の喪失リスクは避けるべきです!」
「うるさい! 父ちゃんに言いつけるぞ!」
「すぐさまエネルギー充電しろ!」
「了解!」
……俺は勝利を確信していた。
☆★☆★☆
「ふぅ~」
私は艦橋で煙草を吸っていた。
サボっていたわけではない。
落ち着くために、何でもしておきたかったのだ。
「提督! 敵は惑星破壊砲を前面に出してきましたわ!」
「よし、これさえ叩けば、我々の安全がある程度確保されるぞ!」
……しかし、惑星破壊砲って大きいなぁ。
全長8kmはありそうな機動要塞型の巨砲だった。
「主砲斉射!」
「了解ポコ!」
ハンニバルの主砲から、大口径レーザーの光条が放たれる。
……しかし、敵のシールドを貫いても、本体の装甲モジュールが厚く、ダメージがあまり通ってそうになかった。
「砲撃中止!」
「マイクロ・クエーサー砲、発射用意!」
「了解!」
戦慄が走る。
この巨砲を撃つ場合にはハンニバルのシールド力が著しく下がる。
一刻も早く、かつ正確に撃たねばならなかったのだ。
「エネルギー急速チャージ! なりふり構うな!」
「はっ!」
「……」
「エネルギー充填50%」
「……エネルギー充填78.6%」
【魔眼判定】……現状の充填で、敵破壊率99.8%です。
……!?
「充分だ! かまわん撃て!」
「了解ポコ!」
ハンニバルのマイクロ・クエーサー砲から膨大なガンマ線が放たれる。
――ズシィィィィン
その高出力エネルギーの束は、敵旗艦と惑星破壊砲を粉々に吹き飛ばした。
「命中! やったポコ!」
「やりましたわ!」
「あなたは雑魚だ! 掃討せよ!」
「「「了解!」」」
正直、残った無傷の敵艦船は、未だ98隻を数えた。
雑魚というにはあまりにも多い数だった。
しかし勢いに任せ、ハンニバルとその艦載機群は次々に敵を打ち破った 。
主砲塔の大口径レーザー砲が咆え、大型ミサイルが次々に敵を撃破した。
艦載機群も宙を舞い、指揮官を失った敵艦を次々に葬った。
旗艦と頼みの惑星破壊砲を一瞬で破壊され、敵艦隊は混乱の極みだった。
逃げまどう艦と、戦おうとする艦艇が交錯し、激突したり同士討ちをも起こす。
敵からすれば、阿鼻叫喚の世界だった。
「私も出るぞ!」
私も愛機に跳び乗り、管制に告げる。
「ケルベロス発進!」
「了解!」
電磁カタパルトの強烈な加速Gが、この日だけは心地よかった。
☆★☆★☆
(……数時間後)
「敵艦隊、敗走していきます!」
「追撃せよ! 一隻も逃がすな!!」
「了解!」
……この日ハンニバルは、敵艦56隻を撃沈。83隻を中大破。残りの多くを敗走に追いやった。
たった一隻で一個艦隊を敗走せしめる前人未到の大戦果と、前代未聞の大勝利を挙げた。
ヴェロヴェマ提督という名とともに……。
階級は中将。
カリバーン帝国宇宙軍第六艦隊の司令官だ。
俺はこのゲームをかなりやり込んでいる。
名のあるプログラムにチートプログラムも組んでもらって、RMTにも何百万円もつぎ込んだ。
俺のことを師匠と慕う奴もいた。神と言って慕ってくれたやつもいた。
やはり世の中、金だよな。
貧乏庶民よ、くたばれてんだ。
地球でのいざこざで、ユーザーがめっきり減ったが、俺は課金力で成り上がってやった。
なんなら運営だって買収したっていい。
なんたって俺の親父は、大手自動車メーカーの創業家で常務執行役だぞ。
ちなみに次期社長なんだ。
俺に手に入らないものは何もない。
友達も地位も、優しくて美しい女も例外ではない……。
しかし、ゲームの中で出てきやがったヴェロヴェマ。
こいつが許せねぇ……。
チートと金で稼ぎまくった俺でさえ、中将になれるのが精いっぱいなのに、こいつは大将にまでなってやがる。RMT仲間のシェリオもこいつのせいで、グングニル共和国の監獄行きだ。
許せねぇ。絶対に!!
このヴェロヴェマってやつは本当に腐ってやがる。
今すぐ地獄に送ってやるぜ。
なんといっても俺は神で、皆の師匠だもんな!
今から、最高のクランマスターの戦略ってやつを見せてやるぜ。
「航空機全機発艦! 繰り返す、航空機全機発艦!」
「了解!」
「宇宙空母8隻より、装備A型の284機発艦致しました!」
「うむ」
「……で、敵の迎撃機は!?」
「はっ! 制空戦闘機56機及び、重雷撃機一機です!」
「うははは! 奴等は戦闘機が足らず、艦船攻撃用の雷撃機までだしてきたか!」
……しかし、俺は油断しない。
これこそ俺が、みんなに師匠と言われている所以である。
「全砲門開け! 長距離射撃開始!」
戦艦と重巡の大口径レーザーが敵巨艦を襲う。
味方の艦載機が、多少巻き込まれるが仕方あるまい……。
……大事の前の小事だ。
「ち、長距離砲撃、効果がありません!」
「て、敵、電磁障壁が異常です!」
「なんだと!? では艦載機は!?」
「ぜ、全機撃墜されました!」
「……な、馬鹿な! 奴は魔神か悪魔か!?」
しかし、未来の大戦略家である俺は慌てない。
いつの世にも不確実なことはあるのだ……。
「仕方ない、惑星破壊砲を前に出せ! 鬱陶しいハンニバルを全力で消すぞ!」
「それはリーゼンフェルト閣下から 艦隊戦では使うと言われているはずではありませんか? 希少な兵器の喪失リスクは避けるべきです!」
「うるさい! 父ちゃんに言いつけるぞ!」
「すぐさまエネルギー充電しろ!」
「了解!」
……俺は勝利を確信していた。
☆★☆★☆
「ふぅ~」
私は艦橋で煙草を吸っていた。
サボっていたわけではない。
落ち着くために、何でもしておきたかったのだ。
「提督! 敵は惑星破壊砲を前面に出してきましたわ!」
「よし、これさえ叩けば、我々の安全がある程度確保されるぞ!」
……しかし、惑星破壊砲って大きいなぁ。
全長8kmはありそうな機動要塞型の巨砲だった。
「主砲斉射!」
「了解ポコ!」
ハンニバルの主砲から、大口径レーザーの光条が放たれる。
……しかし、敵のシールドを貫いても、本体の装甲モジュールが厚く、ダメージがあまり通ってそうになかった。
「砲撃中止!」
「マイクロ・クエーサー砲、発射用意!」
「了解!」
戦慄が走る。
この巨砲を撃つ場合にはハンニバルのシールド力が著しく下がる。
一刻も早く、かつ正確に撃たねばならなかったのだ。
「エネルギー急速チャージ! なりふり構うな!」
「はっ!」
「……」
「エネルギー充填50%」
「……エネルギー充填78.6%」
【魔眼判定】……現状の充填で、敵破壊率99.8%です。
……!?
「充分だ! かまわん撃て!」
「了解ポコ!」
ハンニバルのマイクロ・クエーサー砲から膨大なガンマ線が放たれる。
――ズシィィィィン
その高出力エネルギーの束は、敵旗艦と惑星破壊砲を粉々に吹き飛ばした。
「命中! やったポコ!」
「やりましたわ!」
「あなたは雑魚だ! 掃討せよ!」
「「「了解!」」」
正直、残った無傷の敵艦船は、未だ98隻を数えた。
雑魚というにはあまりにも多い数だった。
しかし勢いに任せ、ハンニバルとその艦載機群は次々に敵を打ち破った 。
主砲塔の大口径レーザー砲が咆え、大型ミサイルが次々に敵を撃破した。
艦載機群も宙を舞い、指揮官を失った敵艦を次々に葬った。
旗艦と頼みの惑星破壊砲を一瞬で破壊され、敵艦隊は混乱の極みだった。
逃げまどう艦と、戦おうとする艦艇が交錯し、激突したり同士討ちをも起こす。
敵からすれば、阿鼻叫喚の世界だった。
「私も出るぞ!」
私も愛機に跳び乗り、管制に告げる。
「ケルベロス発進!」
「了解!」
電磁カタパルトの強烈な加速Gが、この日だけは心地よかった。
☆★☆★☆
(……数時間後)
「敵艦隊、敗走していきます!」
「追撃せよ! 一隻も逃がすな!!」
「了解!」
……この日ハンニバルは、敵艦56隻を撃沈。83隻を中大破。残りの多くを敗走に追いやった。
たった一隻で一個艦隊を敗走せしめる前人未到の大戦果と、前代未聞の大勝利を挙げた。
ヴェロヴェマ提督という名とともに……。
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