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第六十三話……ちょっと変わった収穫祭。
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「旦那様、敵は一時撤退致したようですぞ!」
古城に帰り、伝令の報告を受ける。
パウルス王国の中でも、荒れ地や森林地が多いベルンシュタイン領の寒波は、その他の地域を凌駕した。
よって、我が方へのズン王国軍の侵攻は一休みとなったようだった。
例年より早い寒波に感謝せねばならないだろう。
「しかし、二か月も早く雪が降るのは妙ですな」
スコットさんは首をかしげる。
「寒いのは嫌ですわ」
「嫌ぽこ~」
女性陣は早い冬の到来に不満げだ。
実りある秋が早く終わったのだ。
同じ意見の領民も多いに違いない。
「しかし、収穫祭はいかがいたしますか?」
「……あ」
秘書のイオに言われて気づく。
この時期は例年で言えば収穫祭の時期だったのだ。
領民たちが楽しみにしているお祭りである。
しかし、祭り会場予定地である古城前広場は、既に厚い雪で覆われていたのだ。
「……よし、雪かきをしよう!」
「ガウ、雪かきってなに?」
「美味しいものぽこ?」
この世界には、どうやら雪かきの風習は無いようだ。
ありのままの自然を受け入れるという感じなのだろう。
それはそれで、とても風流で結構なことなのだが……。
☆★☆★☆
「迸れ、獄炎! ファイアストーム!」
「大地を焼き尽くせ、火竜息! ファイアブラスト!」
皆で協力して、火炎系の魔法を連呼。
古城前の雪を次々に解かす。
「次はスクロールを仕掛けるぽこ!」
電熱線の代わりに、火炎魔法を仕込んだ羊皮紙の巻物を周囲に設置する。
「御館様、ゴブリン工兵参りました!」
「ご苦労様、では計画通りに頼みます!」
ルカニに率いられたゴブリンの精鋭工兵隊が、私の作った計画書に基づき、雪かまくらや雪像を次々に製作。
いつもの収穫祭とは違った、でも、趣のある収穫祭の準備を進めたのだ。
☆★☆★☆
――三日後。
城下町にまで、融雪及び除雪を完了し、祭りの為の飾りつけを行った。
――ドドーン
パウルス王都から仕入れていた花火を打ち上げる。
収穫祭の開始だった。
「お店が沢山ぽこ~」
「一風変わった収穫祭ですな」
「雪もこうしてみると奇麗ね」
ポココやスコットさん、マリーも上機嫌である。
前世の雪まつりにも似た、ちょっと変わった収穫祭となったのだ。
「安いよ、安いよ!」
「はい、お待ち!」
冬の為の食料取引市に混じり、子供も喜びそうな出店もあるていど出た。
出店の品は、焼きトウモロコシや菓子パン、ちょっとした肉料理もある。
さらに今回、私が企画した仮設料理店を出店。
そのメニューの一つはコロッケであった。
「これは旨いな!」
怪我がまだ治らない岩石王だが、人生はじめてのコロッケの美味しさに驚いているようだ。
コロッケはこの収穫祭の為に下準備した秘密兵器だった。
卵やパン粉など、この世界では貴重な素材をふんだんに使った逸品料理である。
「この茶色いのは何ですかな?」
「辛い汁ぽこね」
「それはカレーって言うんだよ」
「へぇ、ガウって、物知りなのね」
マリーたちに尊敬のまなざしを向けられるが、私の案に従って作ってくれたのは、秘書のバンパイアであるイオだ。
在地の様々な香辛料を混ぜて多数試作、とりあえず甘口のカレーの製作にこぎつけていた。
「この汁をご飯にかけるんですな?」
「パンにつけても美味しいよ!」
「飲んだら辛かったぽこ」
辛いと言いながら、ポココがぺろぺろとカレーを舐める。
スコットさんは、コロッケにカレーをかけて食べていた。
まぁ、この食べ方が正解というモノは無いだろう。
「これは何ぽこ?」
「エビフライだよ!」
「へぇ、これも油の鍋で煮るのですな?」
ポココとスコットさんが不思議に見つめる中、ルカニが温めた油鍋に、衣のついた大きめの川エビをいれていく。
――ジュゥゥ
きつね色にあがったエビフライは、コロッケと並び、この後に領民から絶大な支持を得ることとなる。
「このオニオンを刻んだマヨネーズというソースにつけて食べるのだな?」
「はい、そうです!」
大きめのエビだが、岩石王の巨体からすると、とても小さく見える。
「……う、うまい!」
「あ、貴方、私にもくださいな!」
岩石王夫婦にもエビフライは好評だった。
「お替わりぽこ~」
その後、油鍋に好物のカエルを入れようとするポココを全力で阻止。
こちらで用意した出店も、概ねが完売御礼となったようだった。
☆★☆★☆
「楽しかったわね」
「楽しかったポコ」
「風流なものですな」
皆で古城から上がる夜の花火を見る。
お腹もいっぱいで、幸せなひと時だった。
「がはは! 早く来る冬も悪いものでもないな!」
快活に笑う岩石王。
確かに早い冬の到来で、ズン王国軍は一時撤退してくれたため、収穫祭を無事執り行うことが出来た。
流石に戦時中に収穫祭をするのは無理だろう。
そう考えると、この寒波もまんざら悪いものでは無かったのだ。
――が、しかし、寒ければ良いというモノでは無かった。
例年より早い寒波により、パウルス王国では食料品が不足。
各地の町や村では、食品価格が急騰。
飢えた市民が、支配層である貴族の館を襲うという事件まで発生していた。
古城に帰り、伝令の報告を受ける。
パウルス王国の中でも、荒れ地や森林地が多いベルンシュタイン領の寒波は、その他の地域を凌駕した。
よって、我が方へのズン王国軍の侵攻は一休みとなったようだった。
例年より早い寒波に感謝せねばならないだろう。
「しかし、二か月も早く雪が降るのは妙ですな」
スコットさんは首をかしげる。
「寒いのは嫌ですわ」
「嫌ぽこ~」
女性陣は早い冬の到来に不満げだ。
実りある秋が早く終わったのだ。
同じ意見の領民も多いに違いない。
「しかし、収穫祭はいかがいたしますか?」
「……あ」
秘書のイオに言われて気づく。
この時期は例年で言えば収穫祭の時期だったのだ。
領民たちが楽しみにしているお祭りである。
しかし、祭り会場予定地である古城前広場は、既に厚い雪で覆われていたのだ。
「……よし、雪かきをしよう!」
「ガウ、雪かきってなに?」
「美味しいものぽこ?」
この世界には、どうやら雪かきの風習は無いようだ。
ありのままの自然を受け入れるという感じなのだろう。
それはそれで、とても風流で結構なことなのだが……。
☆★☆★☆
「迸れ、獄炎! ファイアストーム!」
「大地を焼き尽くせ、火竜息! ファイアブラスト!」
皆で協力して、火炎系の魔法を連呼。
古城前の雪を次々に解かす。
「次はスクロールを仕掛けるぽこ!」
電熱線の代わりに、火炎魔法を仕込んだ羊皮紙の巻物を周囲に設置する。
「御館様、ゴブリン工兵参りました!」
「ご苦労様、では計画通りに頼みます!」
ルカニに率いられたゴブリンの精鋭工兵隊が、私の作った計画書に基づき、雪かまくらや雪像を次々に製作。
いつもの収穫祭とは違った、でも、趣のある収穫祭の準備を進めたのだ。
☆★☆★☆
――三日後。
城下町にまで、融雪及び除雪を完了し、祭りの為の飾りつけを行った。
――ドドーン
パウルス王都から仕入れていた花火を打ち上げる。
収穫祭の開始だった。
「お店が沢山ぽこ~」
「一風変わった収穫祭ですな」
「雪もこうしてみると奇麗ね」
ポココやスコットさん、マリーも上機嫌である。
前世の雪まつりにも似た、ちょっと変わった収穫祭となったのだ。
「安いよ、安いよ!」
「はい、お待ち!」
冬の為の食料取引市に混じり、子供も喜びそうな出店もあるていど出た。
出店の品は、焼きトウモロコシや菓子パン、ちょっとした肉料理もある。
さらに今回、私が企画した仮設料理店を出店。
そのメニューの一つはコロッケであった。
「これは旨いな!」
怪我がまだ治らない岩石王だが、人生はじめてのコロッケの美味しさに驚いているようだ。
コロッケはこの収穫祭の為に下準備した秘密兵器だった。
卵やパン粉など、この世界では貴重な素材をふんだんに使った逸品料理である。
「この茶色いのは何ですかな?」
「辛い汁ぽこね」
「それはカレーって言うんだよ」
「へぇ、ガウって、物知りなのね」
マリーたちに尊敬のまなざしを向けられるが、私の案に従って作ってくれたのは、秘書のバンパイアであるイオだ。
在地の様々な香辛料を混ぜて多数試作、とりあえず甘口のカレーの製作にこぎつけていた。
「この汁をご飯にかけるんですな?」
「パンにつけても美味しいよ!」
「飲んだら辛かったぽこ」
辛いと言いながら、ポココがぺろぺろとカレーを舐める。
スコットさんは、コロッケにカレーをかけて食べていた。
まぁ、この食べ方が正解というモノは無いだろう。
「これは何ぽこ?」
「エビフライだよ!」
「へぇ、これも油の鍋で煮るのですな?」
ポココとスコットさんが不思議に見つめる中、ルカニが温めた油鍋に、衣のついた大きめの川エビをいれていく。
――ジュゥゥ
きつね色にあがったエビフライは、コロッケと並び、この後に領民から絶大な支持を得ることとなる。
「このオニオンを刻んだマヨネーズというソースにつけて食べるのだな?」
「はい、そうです!」
大きめのエビだが、岩石王の巨体からすると、とても小さく見える。
「……う、うまい!」
「あ、貴方、私にもくださいな!」
岩石王夫婦にもエビフライは好評だった。
「お替わりぽこ~」
その後、油鍋に好物のカエルを入れようとするポココを全力で阻止。
こちらで用意した出店も、概ねが完売御礼となったようだった。
☆★☆★☆
「楽しかったわね」
「楽しかったポコ」
「風流なものですな」
皆で古城から上がる夜の花火を見る。
お腹もいっぱいで、幸せなひと時だった。
「がはは! 早く来る冬も悪いものでもないな!」
快活に笑う岩石王。
確かに早い冬の到来で、ズン王国軍は一時撤退してくれたため、収穫祭を無事執り行うことが出来た。
流石に戦時中に収穫祭をするのは無理だろう。
そう考えると、この寒波もまんざら悪いものでは無かったのだ。
――が、しかし、寒ければ良いというモノでは無かった。
例年より早い寒波により、パウルス王国では食料品が不足。
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