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第六十五話……ズン王国、南方の町
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「変化せよ、幻惑せよ! ロケーション・イリュージョン!」
ズン王国の関所があるたびに、マリーが得意の変化の幻惑魔法を使う。
これにより、一般的な見慣れた馬車に見えるようになる。
まさか小型のドラゴンが曳く荷車を、普通に通してくれるはずはなかったからだ。
「よし! 通行証を見せろ!」
スコットさんが作った魔法のスクロールを、関所の衛兵に見せる。
衛兵には見慣れた通行証に見えているはずだった。
「行って良し!」
この手口で、ズン王国領の各地の町にも入ることが出来た。
――1か月後。
とある南方の町で、宿屋で厩を借り、町への散策に乗りだしたのだった。
☆★☆★☆
「ここまでくると、だいぶ温かいですな!」
「温かいポコ!」
スコットさんとポココが、温かい陽気にご満悦。
ちなみに、スコットさんも古代竜の再生の光を浴びたため、昼間でもフードを深く被れば戦闘以外のことは出来るようになっていた。
ズン王国ということで、人間以外の沢山の種族も雑踏としている街並みだった。
町に売られている品物も、地域性の違いから、パウルス王国では見慣れないものも多かった。
「おお! トウモロコシだ!」
「コーンだね、これがどうかしたの?」
「これって確か、荒れ地でも作れるよね?」
「ええと、そうですな!」
スコットさんが古城から持ってきた図鑑をめくりながら調べてくれる。
「これはジャガイモだよね? ジャガイモも貧しい土地で植えられるよね?」
「そうですな、ポテトも代替作物候補ですな!」
持ってきた金貨でトウモロコシと、ジャガイモを大量に買い付ける。
ジャガイモは種芋用。
トウモロコシは主に代替食糧用途だ。
買ったものを入れる袋は、魔法の袋で体積を無視できるが、質量は保存される。
……よって、メチャクチャに重い。
その重さにより、荷物持ちは私の仕事だ。
「ガウ、お野菜の種も買おうよ!」
「うん、どんどん買って!」
ここはズン王国でも南部に位置しており、未だ寒波の影響を受けていなかった。
しかし、いずれ値上がりの波が押し寄せてくるだろう。
我々は、寒さに強い野菜の種などを優先的に購入。
私達にしては珍しく、金に糸目は付けなかった。
「小麦も安く売ってるポコ!」
「……え!?」
少し驚いたが、ここはドラゴの足で1か月も離れた遠い地。
小麦も比較的に安く売っていたのだ。
「でも、もう運べないよ!」
「残念ぽこ~」
流石にドラゴの曳く荷車でも、重さに限界はある。
そんなことを言っていると、
「お金を頂けるなら、保管しておきますよ!」
食料を扱う商人がニコニコ顔で話しかけてきた。
……そうだ。
今は運べないが、とりあえずはある程度買ってしまおう。
後で方法を考えて、取りにくればいいのだ。
「じゃあ、この金貨で買える分ほどお願いします!」
「毎度あり!」
此方の事情を知らない商人は、大量の金貨を見てニコニコ顔だ。
保管料を差し引いた小麦の量を書いた権利書を受け取る。
「信用なるのですかな?」
「一応とりあえずは信用しとこうよ!」
スコットさんは心配そうだが、商人の最大の武器は信用である。
多分……、そうであるはずだった。
「ガウ、このお花、奇麗だよ!」
「奇麗ポコ!」
南方の見たことのないお花だ。
マリーが気に入ったものを少し買ってみる。
「これも見たことのない果実ですね!」
「美味しそうポコ!」
次は南方特有の果実店だ。
アイリーンとポココが指さす物を購入。
その場で皆で食べてみた。
「美味しいね!」
「甘いですな!」
これにはスコットさんもご満悦。
日が昇り、少し汗ばむ陽気にもなっていたのもあって、果物も美味しかった。
「お魚も売っているポコね!」
「流石にお魚は持って帰れないから、買えないよ!」
残念そうなポココ。
でも、沢山見たことのない魚が売っていた。
スコットさんと、図鑑をめくりながら調べたのも楽しかった。
☆★☆★☆
――その晩。
大きめの宿屋で出てきたのは、珍しい南国料理。
「ガウ、おいしいね!」
「美味しいぽこ」
マリーとポココは美味しいと言っていたが、正直に言うと私の口には合わなかった。
スコットさんやアイリーンも、微妙な顔をしていた。
……まぁ、好みの問題である。
「星が奇麗だね!」
「奇麗ポコ!」
食後のお風呂はなんと露天風呂。
珍しくお湯につかるタイプと、蒸気サウナ風呂の併設だった。
どうりで宿賃が高かった訳だ。
「うはうは……うへぇ……」
変な声を出しているのはスコットさん。
彼は幽体なので、お湯には浸からない。
その分、危険なほどにサウナ風呂が大好きなのだ。
発言がおかしくなるほど、温まったあと、冷水に浸かる。
……体に悪くないんだろうか?
「旦那様、御背中流しますね!」
「ありがとう!」
有難く、アイリーンに背中を洗ってもらう。
面倒くさいので、ズン王国に入ってからは、ずっと人間の姿だ。
最近思ったのだが、人間の方の姿も背が高くなって、肩がしっかりしてきていた。
前世でも、こんなしっかりした体だったらなぁ……。
なんだか自分の体が恨めしい。
気が付いたのだが、お湯に映る自分の顔も、まぁまぁのイケメンだ。
前世の自分とは大違いだ。
……なんだか嫉妬してしまう。
皆で楽しく温まり、そして皆で温かくして眠ったのだった。
ズン王国の関所があるたびに、マリーが得意の変化の幻惑魔法を使う。
これにより、一般的な見慣れた馬車に見えるようになる。
まさか小型のドラゴンが曳く荷車を、普通に通してくれるはずはなかったからだ。
「よし! 通行証を見せろ!」
スコットさんが作った魔法のスクロールを、関所の衛兵に見せる。
衛兵には見慣れた通行証に見えているはずだった。
「行って良し!」
この手口で、ズン王国領の各地の町にも入ることが出来た。
――1か月後。
とある南方の町で、宿屋で厩を借り、町への散策に乗りだしたのだった。
☆★☆★☆
「ここまでくると、だいぶ温かいですな!」
「温かいポコ!」
スコットさんとポココが、温かい陽気にご満悦。
ちなみに、スコットさんも古代竜の再生の光を浴びたため、昼間でもフードを深く被れば戦闘以外のことは出来るようになっていた。
ズン王国ということで、人間以外の沢山の種族も雑踏としている街並みだった。
町に売られている品物も、地域性の違いから、パウルス王国では見慣れないものも多かった。
「おお! トウモロコシだ!」
「コーンだね、これがどうかしたの?」
「これって確か、荒れ地でも作れるよね?」
「ええと、そうですな!」
スコットさんが古城から持ってきた図鑑をめくりながら調べてくれる。
「これはジャガイモだよね? ジャガイモも貧しい土地で植えられるよね?」
「そうですな、ポテトも代替作物候補ですな!」
持ってきた金貨でトウモロコシと、ジャガイモを大量に買い付ける。
ジャガイモは種芋用。
トウモロコシは主に代替食糧用途だ。
買ったものを入れる袋は、魔法の袋で体積を無視できるが、質量は保存される。
……よって、メチャクチャに重い。
その重さにより、荷物持ちは私の仕事だ。
「ガウ、お野菜の種も買おうよ!」
「うん、どんどん買って!」
ここはズン王国でも南部に位置しており、未だ寒波の影響を受けていなかった。
しかし、いずれ値上がりの波が押し寄せてくるだろう。
我々は、寒さに強い野菜の種などを優先的に購入。
私達にしては珍しく、金に糸目は付けなかった。
「小麦も安く売ってるポコ!」
「……え!?」
少し驚いたが、ここはドラゴの足で1か月も離れた遠い地。
小麦も比較的に安く売っていたのだ。
「でも、もう運べないよ!」
「残念ぽこ~」
流石にドラゴの曳く荷車でも、重さに限界はある。
そんなことを言っていると、
「お金を頂けるなら、保管しておきますよ!」
食料を扱う商人がニコニコ顔で話しかけてきた。
……そうだ。
今は運べないが、とりあえずはある程度買ってしまおう。
後で方法を考えて、取りにくればいいのだ。
「じゃあ、この金貨で買える分ほどお願いします!」
「毎度あり!」
此方の事情を知らない商人は、大量の金貨を見てニコニコ顔だ。
保管料を差し引いた小麦の量を書いた権利書を受け取る。
「信用なるのですかな?」
「一応とりあえずは信用しとこうよ!」
スコットさんは心配そうだが、商人の最大の武器は信用である。
多分……、そうであるはずだった。
「ガウ、このお花、奇麗だよ!」
「奇麗ポコ!」
南方の見たことのないお花だ。
マリーが気に入ったものを少し買ってみる。
「これも見たことのない果実ですね!」
「美味しそうポコ!」
次は南方特有の果実店だ。
アイリーンとポココが指さす物を購入。
その場で皆で食べてみた。
「美味しいね!」
「甘いですな!」
これにはスコットさんもご満悦。
日が昇り、少し汗ばむ陽気にもなっていたのもあって、果物も美味しかった。
「お魚も売っているポコね!」
「流石にお魚は持って帰れないから、買えないよ!」
残念そうなポココ。
でも、沢山見たことのない魚が売っていた。
スコットさんと、図鑑をめくりながら調べたのも楽しかった。
☆★☆★☆
――その晩。
大きめの宿屋で出てきたのは、珍しい南国料理。
「ガウ、おいしいね!」
「美味しいぽこ」
マリーとポココは美味しいと言っていたが、正直に言うと私の口には合わなかった。
スコットさんやアイリーンも、微妙な顔をしていた。
……まぁ、好みの問題である。
「星が奇麗だね!」
「奇麗ポコ!」
食後のお風呂はなんと露天風呂。
珍しくお湯につかるタイプと、蒸気サウナ風呂の併設だった。
どうりで宿賃が高かった訳だ。
「うはうは……うへぇ……」
変な声を出しているのはスコットさん。
彼は幽体なので、お湯には浸からない。
その分、危険なほどにサウナ風呂が大好きなのだ。
発言がおかしくなるほど、温まったあと、冷水に浸かる。
……体に悪くないんだろうか?
「旦那様、御背中流しますね!」
「ありがとう!」
有難く、アイリーンに背中を洗ってもらう。
面倒くさいので、ズン王国に入ってからは、ずっと人間の姿だ。
最近思ったのだが、人間の方の姿も背が高くなって、肩がしっかりしてきていた。
前世でも、こんなしっかりした体だったらなぁ……。
なんだか自分の体が恨めしい。
気が付いたのだが、お湯に映る自分の顔も、まぁまぁのイケメンだ。
前世の自分とは大違いだ。
……なんだか嫉妬してしまう。
皆で楽しく温まり、そして皆で温かくして眠ったのだった。
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詳細は近況ボードをご覧ください。
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