異世界傭兵物語~物理と魔法を極めた最強の魔族になりました。仲間と楽しく冒険したり、領地経営もしちゃいます!~

黒鯛の刺身♪

文字の大きさ
67 / 73

第六十七話……氷雪の巫女

しおりを挟む
「いつまでも寒いポコね」



「……だなぁ」



 例年のこの季節なら、汗ばむ陽気となる日も出るくらいの暦なのだが、一向に雪は解けなかった。

 汗ばむどころか、未だに寒いのである。



 雪が溶けなければ耕作が出来ず、それどころか野山に新芽さえも出ない。

 池の氷はまだ張っており、動物のみならず、低位の魔物たちも食べ物に困る始末であった。



 狼や熊が里に降り、魔物たちも食べ物を求めて村々を襲った。

 そもそも人間たちも食べ物に困っており、住民たちの不満は支配層であるパウルス王家に向かった。







☆★☆★☆



 ベルンシュタイン城の謁見の間にて、パウルス王の代理としてザームエル男爵が口を開く。





「陛下からのご下命である。至急、この寒さの元凶を解決せよ、との仰せだ!」



「はい。謹んでお受けいたします」



 王命を受けるは、準男爵のマリー。

 パウルス王国から見たベルンシュタイン領は、マリー準男爵自治領という名称である。





 ご下命が終わった後、執務室で皆と対策を練る。

 ザームエル男爵も一人の知己として会議に加わってもらっていた。





「そもそも王様は、なぜこのような命令を?」



 私はザームエル男爵に率直に聞いてみる。





「いやいや、王も宰相もお困りで、王国の全ての貴族にこのようなご下命を出しております」



「なるほど」



 ……つまるところ誰でもよく、なりふり構わず解決したいんだな。





「しかしガウ殿、この難題を解決せしものには莫大な恩賞を約束されていますぞ」



「は、はぁ……」



 確かに莫大な恩賞は欲しい。

 ……が、天候を変えることなど、普通はできようはずがない。





「あ、あの……よろしいですか?」



「ええ、どうぞ」



 発言の許可を求めてきたのは、岩石王の奥さんだった。





「私の里にある伝説なのですが、はるか東の山脈の向こうに、氷雪の巫女がいるという逸話があります……」



「ほぉ」



 私は興味深く思ったのだが、





「まぁ、ただの伝説でしょうな?」



 と、ザームエルさんはつれない。





「その巫女はどのあたりに棲んでいるのですか?」



 私は手元にある地図を差し出す。





「多分、このあたりです!」



 ……ぇ!?

 私はびっくりしてしまう。

 彼女は東の果ての方に、ぐりっと大きく丸を描いたのだ。





「……わはは!」



 岩石王が笑う。

 『わはは』じゃないよ、広域地図にこんなに大きな丸を描かれんじゃ、どこだか分からない。



 が、マリーをその地図を手に取って、





「ガウ、その氷雪の巫女を探しに行くわよ!」



「え? だってそんなに広範囲だったら、どこかわかんないじゃない?」



 私がそう言うと、マリーは真面目な顔になり、





「皆が困っているのだから、少しの手がかりでも頑張って探すべきよ!」



 と言ってくる。





「ああ、うん、じゃあそこに行こうか……」



 マリーの提言に、仕方なく折れることにする。

 まぁ、領地経営の方は、イオさんとバルガスに任せておけば、少しの間は大丈夫だろうしね……。





――グルルルル。



 私はドラゴに幌付きの荷車を牽かせ、荷車に荷物を積み込む。

 かなり大雑把な目的地を目指して、雪の中へと出かけるのだった。







☆★☆★☆



 今回の旅のメンバーは、私とマリーとポココとスコットさんの4名。

 多分大きな戦闘はないと踏んでいたのだ。





「すいません」

「ごめんくださいポコ」



 東部の山脈の麓で、村々を訪ね、聞き込みをして回った。

 なにしろ、この地図だけだと、目的地がどこだかまるで分からなかったのだ。





「有難うございます!」



 村々で長老格から話を聞くと、意外と早く巫女の居場所らしきところが分かったのだ。



 ……が、





「この上ポコ?」



「き、きついわね……」



 マリーとポココが怯むのも無理はない。



 話に聞いた場所は、そそり立つ絶壁の上だった。

 まるで道らしき道がないのだ。





「ここから先は、私とスコットさんと行ってくるよ!」



「ガウ、お願いね!」

「お願いポコ!」



 荷車でマリーとポココにお留守番を頼み、スコットさんを鞄に詰め込み、絶壁をよじ登ることにする。



 氷壁に剣を突き立て、少しずつ岩山を登る。

 冷たい吹雪が視界を遮り、一寸先は真っ白だった。





「岩肌よ! 我に道を指し示せ! ロック・リサーチ!」



 岩石王に先日教わった魔法で、崩れにくい岩肌を選択。

 一昼夜かけて岩肌を登り切ったのだった。





「……げ」



「敵ですな……」



 登り切った先では、氷属性の魔物が多数襲い掛かってきた。

 スコットさんと協力して、次々と倒していき、さらに頂上を目指した。





「旦那様、あそこに建物がありますぞ!」



 数度の戦闘をこなし、登り切った先には、小さな祠のようなものがあった。





「こんにちは」



 祠の木戸を叩く。

 ……すると、





「どうぞ、お入りになって」



 と、女性の小さな声がした。







☆★☆★☆



 招かれて中に入ると、妖精族らしき小さな女性がいた。

 身長は30cmくらいだろうか。





「こんなところまで、ご用はなんですか?」



 彼女は飲み物を出してくれる。

 凄く冷えた氷水であったが……。





「貴方が氷雪の巫女様ですか?」



 私は率直に聞いてみた。





「そうですわ、私が世界の氷雪を自在に操る巫女です」



 ……こんな小さな妖精が、世界の氷雪を自在に操るって?

 確かに聞いたのは私自身だが、なんだか騙されている気にもなる。





「実は、……、……」



 私は要件を丁寧に話した。



 ……この山脈の下の世界の人々が、寒くてとても困っている。

 出来うるなら解決して欲しいと……。





「ぜーったいに、嫌ですわ!」



 ……ぇ!?

 私は彼女の返答に絶句してしまった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

処理中です...