雪を溶かすように

春野ひつじ

文字の大きさ
3 / 183
第一章

3

 半年前、僕が人間国にやってきた時、明らかに人間たちは僕を歓迎していなかった。国王に挨拶をする場所には王族や貴族などたくさんの人がいたが僕と関わりたくないという思いが伝わってきた。国王も例に漏れず、あからさまに迷惑そうな顔をした。そして、

「王子たちの中で、この者の世話をする役割を買って出る者はおらぬか?」

と尋ねた。みんなの視線を痛いくらいに感じながら、僕はそんな面倒事を引き受ける人なんていないはずだ、と考えていた。当然、王子たちは自分にその役目が回ってこないよう、無関係を装っていた。しかし、突然静かだが、よく響く声が聞こえた。

「父上、私がその役目を引き受けてもよろしいでしょうか?」

僕は驚きながら、声のする方向を見やった。国王は嬉しそうに、

「そうか、ではふゆ頼んだぞ。」

と言った。そして、そそくさと部屋を出て行った。ふゆ、と呼ばれた銀色の髪と瞳を持った彼は、物静かな雰囲気を纏っていた。彼は僕に、

「はじめまして。」

と短く言った。
 
 僕は彼に連れられて僕がこれから過ごすことになる部屋へ行った。彼と僕の周りには数人の従者がいた。正直にいうと、僕の心の中は期待でいっぱいだった。僕の世話を見てくれるという人がいるなんて、人間の中にもみんなが思っているほど悪いやつじゃない人もいるんだ…と。しかし、その期待は、部屋についたことですぐに裏切られた。部屋は狭くて、窓がひとつしかなく、必要最小限のものしか置いていなかった。そして極め付けには、部屋の外には頑丈な鍵がついていて、窓にも鉄格子がはまっていた。

「本当にここが僕の部屋ですか?」

彼がタチの悪い冗談を言っていることを願いながら僕は恐る恐る聞いた。彼は微笑みを絶やすことなく言った。

「はい、そうです。早く入ってください。」

僕は逃げなきゃ、と思って人間たちの間を縫って助けを呼ぼうとした。今思えば、誰も助けてくれる人もいなかったのに。その時の僕は無我夢中でその場から逃れることだけを考えていたから、正常な判断ができていなかった。僕は、半獣化した。見た人に空を連想させるような青色で、先にいくにしたがって、次第に色が薄くなっている、大きいが同時に儚さを感じさせる翼が背中から出た。那とその従者たちは驚いた顔で僕を見ていたが、ハッとして僕を捕まえようとした。たぶん、僕が獣人国に戻り、父上に報告したならば、今度こそ人間は滅ぼされてしまうと考えたのだろう。僕は誰もいない廊下を全力で逃げたけど、王宮の構造を知っている人間たちの方が有利だった。ぼくが飛んでいると、天井から大きな壁が降りてきて廊下を塞いでしまった。慌てて後ろに逃げようとしたら、また、大きな壁が降りてきて、どちらへも進めなくなってしまった。どうしようもなくなってに廊下降りたら、どこから持ってきたのか、大きな網を従者たちが投げて僕は捕まった。
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー

エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。 生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。 それでも唯々諾々と家のために従った。 そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。 父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。 ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。 僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。 不定期更新です。 以前少し投稿したものを設定変更しました。 ジャンルを恋愛からBLに変更しました。 また後で変更とかあるかも。 完結しました。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

a life of mine ~この道を歩む~

野々乃ぞみ
BL
 ≪腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者≫  第二王子:ブライトル・モルダー・ヴァルマ  主人公の転生者:エドマンド・フィッツパトリック 【第一部】この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~  エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。  転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。  エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。  死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 【第二部】この道を歩む~異文化と感情と、逃げられない運命のようなものと~  必死に手繰り寄せた運命の糸によって、愛や友愛を知り、友人たちなどとの共闘により、見事死亡フラグを折ったエドマンドは、原作とは違いブライトルの母国であるトーカシア国へ行く。  異文化に触れ、余り歓迎されない中、ブライトルの婚約者として過ごす毎日。そして、また新たな敵の陰が現れる。  二部は戦争描写なし。戦闘描写少な目(当社比)です。 全体的にかなりシリアスです。二部以降は、死亡表現やキャラの退場が予想されます。グロではないですが、お気を付け下さい。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったりします。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 閑話休題以外は主人公視点です。 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

俺以外を見るのは許さないから

朝飛
BL
赤池凌平は、成瀬真介と出会い、緩やかに親交を深めてやがて恋人同士になるのだったが、時折違和感を抱いていた。  その違和感の正体が明らかになる時には、もう何もかも手遅れになってしまい……。 (女性と付き合うシーンもあります。) ※ネオページ、エブリスタにも同時掲載中。マイペースに更新します。

契約書はよく読めとあれほど!

RNR
BL
異世界で目が覚めた、就職浪人中の美容系男子、優馬。 最初に出会った美しい貴族青年は、言葉が通じないが親切に手を差し伸べてくれた。 彼の屋敷に招かれた際、文字は読めないもののなにかの書類にサインをすると、その彼と結婚したことになっていて……。 この世界で何をする? また無職生活? 本当にそれでいい? 葛藤する日々と、それを惜しみない愛情で支える夫。 理想の自分と、理想の幸せを探す物語。 23話+続編2話+番外編2話

【完結】獣王の番

なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。 虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。 しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。 やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」 拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。 冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…