雪を溶かすように

春野ひつじ

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第一章

23 side悠

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薫は、相槌を打ちながら聞いている。

「周りの人からはその時泊まっていた宿でおとなしくしているよう言われていたが、九歳だった俺が我慢できるはずもなく、一週間ほどたった時に周りの目を盗んで外に逃げ出したんだ。最初は開放感に浸っていたが、次第に心細くなってきた。帰ろうかな、と思った時にはもう道がわからなくなっていた。そして、俺は気づいたんだ。誰かが、いや、誰か達が俺の後ろを尾けていることに。初めは俺の従者が心配して尾けているのかと思った。だけど、だんだん人気のない森の中に迷い込んでいっている俺に一向に姿を見せないからこれはまずい、と思った。日が暮れ始め、元いた場所へ戻ろうとする俺に、突然そいつらが襲いかかってきたんだ。」

薫が驚き、息を呑む。

「たぶん相手は王族に不満を抱えている者だったんだろう、いきなり剣で切りかかってきて、俺は肩から胸にかけて大きな傷を負った。自分でももうここで死ぬんだな、と思った。それは相手も同じだったみたいで、俺を置いてすぐにどこかへ逃げて行った。傷はかなり深かったようで、焼けるように熱かった。そのまま倒れていることしかできない俺はガサガサという足音に気づいた。抵抗はできないが、森に住んでいる熊にやられて死ぬのは嫌だなぁ、とぼんやりと考えていると、小さな大体五、六歳の子供がやってくるのが見えた。」
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