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第三章
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雲の隙間を縫うようにして光が降り注ぐ青い空を飛ぶ。張り詰めるような厳しい寒さもようやく和らぎ、春の暖かい風が少しずつ吹いている。
僕の背中にしがみついている悠は、さっきからずっと広がっている景色に夢中になっている様子。
「悠、どこら辺に向かえばいいの?」
「えっと、そのまま真っ直ぐ向かってくれ。そうしたら大樹が見えるから」
僕は頷く。大きな木かぁ。そういえば、と僕が獣人のおじいさんのところで買った、花が咲いたらいいことが起こるという植物のことを思い出す。
僕が眠っている間に、暖が丁寧にお世話をしてくれていたらしい。そのあと僕がお世話をしていると、今朝蕾をつけていることに気づいた。もう少しで咲きそうな蕾を悠に興奮しながら見せたところ、
「何色の花なんだろうな?その花が咲いたら見せたいものがある」
と気になることを言われた。何? と聞いても教えてくれなかった。だから僕は、二つの意味で楽しみにしている。
「あっ!あれのこと?」
ふと顔をあげると、樹齢何年なんだろう? と思うほど大きな木が見つかり、悠に声をかける。
「そうだ。根本のところに降りてくれないか?」
「わかった」
悠を落としてしまわないよう、慎重に速度を落とす。柔らかそうな草が生えている場所にふわりと降り立つ。
「ありがとう」
丁寧にお礼を言ってくれる悠に頷いて、僕は獣化を解く。
「大きな木だね……」
まだ春が少し訪れているだけだからか、緑色の葉は少ない。だけど、風に揺られてこぼれ落ちてくる光の眩しさに春を感じて、心がわくわくする。
「ずいぶん昔からあるようだからな」
「そうなんだね」
尊敬の意も込めて、木を見上げた。
僕の背中にしがみついている悠は、さっきからずっと広がっている景色に夢中になっている様子。
「悠、どこら辺に向かえばいいの?」
「えっと、そのまま真っ直ぐ向かってくれ。そうしたら大樹が見えるから」
僕は頷く。大きな木かぁ。そういえば、と僕が獣人のおじいさんのところで買った、花が咲いたらいいことが起こるという植物のことを思い出す。
僕が眠っている間に、暖が丁寧にお世話をしてくれていたらしい。そのあと僕がお世話をしていると、今朝蕾をつけていることに気づいた。もう少しで咲きそうな蕾を悠に興奮しながら見せたところ、
「何色の花なんだろうな?その花が咲いたら見せたいものがある」
と気になることを言われた。何? と聞いても教えてくれなかった。だから僕は、二つの意味で楽しみにしている。
「あっ!あれのこと?」
ふと顔をあげると、樹齢何年なんだろう? と思うほど大きな木が見つかり、悠に声をかける。
「そうだ。根本のところに降りてくれないか?」
「わかった」
悠を落としてしまわないよう、慎重に速度を落とす。柔らかそうな草が生えている場所にふわりと降り立つ。
「ありがとう」
丁寧にお礼を言ってくれる悠に頷いて、僕は獣化を解く。
「大きな木だね……」
まだ春が少し訪れているだけだからか、緑色の葉は少ない。だけど、風に揺られてこぼれ落ちてくる光の眩しさに春を感じて、心がわくわくする。
「ずいぶん昔からあるようだからな」
「そうなんだね」
尊敬の意も込めて、木を見上げた。
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