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23 真実の箱
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「……さっむ!」
三十分後。校門の前に突っ立たまま、背中を丸めた俺は耳を真っ赤にし、声しか知らない誰かを待ち続けていた。
何が早くしろだ。言った本人が来てないじゃないか!
かじかんだ指先に吐息をかける。寒さが消えるのは一瞬だけで、すぐさま冷気が指の間をすり抜ける。本当に、このままでは凍死する。……いや、マジで。冗談抜きで。
「あ、いたいた。ケロ」
「早かったぴょんねぇ。久我時雨」
視界の情報が脳にいきわたった瞬間、寒さが一瞬にして吹き飛んだ。
人間、本当に驚いた時は声も出ないらしい。開いた口の塞がらない俺は彼女の全身を見て驚愕した。
俺の待ち人らしい人は、舞台上で演目台をめくる人が着る黒子姿で現れた。ぴょんやケロを発している時点で確定だ。認めよう。信じたくはないが、目の前の黒子が俺の待ち人だ。
再び全身を舐めまわす。身長は新宮より少し高いくらいで、声色から判断するに女性だろう。
「……………」
百歩譲って、黒子はいい。しかしもっと気になる点がある。
右手にはウサギのぬいぐるみ、左手にはカエルのぬいぐるみが嵌められている。
……芸人かよ。だとすれば右手は牛であってほしかった。
「ありゃりゃ? 間違ったケロ?」
「な訳ないぴょん。彼が久我時雨、違いないぴょん」
パペット達は人間(恐らく三笠木七葉)を挟み、向かい合いながら話している。
んだよこれ……妖術師って変態の集まりなのか……?
国の機密機関に対する不信が増した。それが顔に出てたのか、パペット達はこちらを振り向く。正直、怖くはないが、恐怖はあった。
「私はぴょん吉、よろしくぴょん」
「僕はケロリン、よろしくケロッ」
「は、はぁ……」
慣れた様子で一礼をするパペット。何となく俺も頭を下げる。ちょっぴり、屈辱は感じるが。
「さてと、では侵入するケロ」
「は、はぁ? し、侵入……?」
一人は二体を連れて、飄々と歩き出す。今更だが、寒くはないのだろうか。
「そうケロ、侵入ケロ。三笠木七葉はこの学校の屋上に用があるケロ」
「お、屋上……? 何で……?」
「ああ、そうかぴょん。君、去年の今頃何があったか覚えているぴょん?」
「去年の今頃……?」
急にそんなことを言われても困る。しかし、つぶらな四つ目が俺を逃がすまいと見上げる。新宮に見られた時とはまた別の恐怖が心音を
駆り立てる。
「えっと……いつも通り学校行って、帰っての、繰り返しだと思います、けど……」
記憶の引き出しをひっくり返しても、聞かれて答えるようなことは特にない。
逆に何故そんなことを聞いたのかを聞きたい。新宮が来るまで、この村は万引き一つとして起こっていない平和な村だったのだから。
「ああ、そうかケロ……やっぱりか、ケロ……」
カエルの頭は落ちていく。気付いたウサギはカエルの頭を優しく撫でる。俺は今、何を見せられているのだろう。
「あのさ、何でそんなこと聞くの?」
「……君はムスキチを、どう見ているぴょん?」
ムスキチ、というのは恐らく新宮結のことだろう。
パペットなので、表情は変わらない。そのはずなのに、俺を見つめるウサギの目は、カエルに向ける目より冷たく、厳しい気がした。カ
エルはまだ、落ち込んでいる。
「どうって……初めは尊敬できて、太陽みたいに眩しくて、世界を照らす、決して届かない……正義の味方だった。でも、今は違う……アイツは、簡単に人を殺せる……腐った人間だった……」
言葉は重い。今まで思っていたことを形にしただけなのに、感情が堰き止められず、気づいていないものにまで、触れてしまう。
「俺……新宮のこと、本当に、凄いなって、思ってた……だから、ショックだった……俺の中で作り上げていた新宮が消えちゃって……今
まで感じていた空白が大きくなって、それで……」
「言い訳は止めろ、一般人」
ぴたりと、感情に終止符が打たれる。
黒子でよく見えないが、三笠木七葉は間違いなく、俺を睨んでいる。
「結は、そんな子じゃない……ぴょん。あの子は、誰かのために生きてるんじゃない……結だって、幸せになるために生まれてきたんだぴょん」
「待つケロ。結だけじゃないケロ。ミコイもそうだ。誰かのために生きるって何? 妖術師は戦う為のロボットでも、自己犠牲溢れる善人でもないケロ。たまたま力をもって生まれてしまった『普通』の人間だ。他人のために頑張るのが当たり前だと思うな、ケロ」
パペットに乗せられた声は今までと同じようで、違った。
今までは本当にパペットがしゃべっている、三笠木七葉の心情が一切読み取れない声だった。
でも、今のは分かる。パペットの裏に隠された三笠木七葉は沢山の涙を、怒りを持っている。
「三笠木家に伝わる秘伝妖具・パペット視局を使い、君と結の間に起こったことは大体知っているケロ。ケロリン達がここに来た理由、それは……」
ごくりと唾を飲む。パペットから聞こえる声は夕刻に流れる子供番組のキャラクターに戻っていた。
「それは?」
「それは、三笠木七葉にも分からないケロ」
ズコーー……思わず、大げさにずっこけたくなる。
コイツが妖術師ではなく、芸人であるという仮説の信憑性が急に上がった。
懐疑の目を向けるが、パペットの表情は変わらないし、三笠木七葉本体の表情も見えない。
「あのさ、本当に君……何がしたいの……?」
「それは分からない。ここに来ることを決めたのは……君が、ムスキチの為に頑張れる人間か試すため」
「……俺を、試す?」
「……そうぴょん」
そういった後彼女は屈み、ウサギのパペットにズボンの裾を噛ませ、まくり上げる。
「っ……!」
「あやかしを祓う方法は主に二つケロ。一つは新宮結のようにあやかしが乗っ取った人間ごと祓う。もう一つは妖力を持つ人間の体の一部にあやかしを移し、あやかしを祓う……ケロ」
息を飲む。心音が忍ぶ。
虐待なんて生ぬるい。暴力など別次元。彼女の足にはこれでもかと傷や内出血が広がっていた。
「切断、殴る、切り刻む……そこに妖力がこもっていれば方法は問わないケロ。ただし、痛みは尋常じゃない……鼻からスイカを出すと例えられる出産に勝る激痛だケロ。妖力を持つ人間は一般人と比べ、回復力が桁違いだケロ。例え切断したとしても、また生えてくる。まぁ、傷跡は消えないがケロ。それに繰り返すたびに痛みは増える……君はあの子にそれを押し付けることが出来る?」
「そ、れは……」
人を殺してはいけません。それは誰もが知っている世界の常識。どんな聖人でも殺人は肯定できない。
でも、俺は揺れている。
「……一つだけ言っとくぴょん」
三笠木七葉は立ち上がり、俯く俺の視界には口をパクパク動かすウサギが入る。俺を責めるように、ウサギは口を止めてはくれない。
「ムスキチは訳アリ妖術師……まぁ、探録隊内で訳ナイ妖術師なんて殆どいないぴょんが、ムスキチは別格ぴょん。あの子は……一五歳では背負いきれない荷物を、一滴も落とさずに、たった一人で背負って生きてきたんだぴょん」
「新宮が……?」
「……三笠木七葉はこの村が嫌いだ。一人の妖術師が犠牲になった最悪の村だからだケロ」
妖術師が、犠牲に……?
「待ってよ……今の言い方だと、新宮の前に妖術師が来てたってこと……?」
「そうケロ。一年前の春、一人の妖術師が任務の為この村に来たんだケロ。彼女の名は新宮未来(みこい)。新宮結の実の姉……マインドコンダクタ―新宮未来、ケロ」
「まいんど、こんだくたー……?」
それにカエルは確かに一年前と口をパクパクさせた。
生憎だが、この村に誰かが越してきたなんてことは起こっていない。三笠木七葉は何か勘違いをしているのだろう。
「そうぴょん。マインドコンダクタ―は新宮家に伝わる特殊術式心操術式の使用者のことぴょん。この術式は数年前まで最強の術式と言われていたぴょん。それ故に使用も難しい。新宮家の妖術師でもロクに使えこなせない奴なんてざらぴょん」
「でも未来は違ったケロ。心操術式を三日で最高レベルまでマスターし、数百年に一度の天才術師と呼ばれていたケロ。でも、彼女は死んだ。それは……」
「こんなところで何してんのよ、七葉」
話に聞き入り、前のめりになった肩がびくりと飛び上がる。本当に、神出鬼没にも程がある。
登校中では聞いたことのない息切れを連れた新宮が、俺の肩に手を置いていた。
「何って……三笠木七葉は未来を弔いに来ただけぴょん」
「だったら東京にある墓、もしくは新宮家の仏壇に手を合わせなさいよ。何でわざわざここにくんの?」
新宮の話し方は高圧的とも感じるが、違和感がなかった。
何故だろう。笑顔を絶やさない唾だらけの飴玉のような声が定着していたのに、眉を吊り上げ、口をへの字に。声変わり前の少年のような低い声が妙にあっていると感じる。
それはきっと、こっちが本当の新宮結だからだろう。
「別にいいじゃんぴょん。よくニュースで見るぴょん。交通事故現場に花を添える、それと同じぴょん」
「お姉ちゃんは交通事故で死んでない」
「細かいことは気にするなケロ」
「細かくな……」
「ムスキチ、特殊術式は使えるようになったケロ?」
「そ、れは……まだ、ですけど……」
スイッチでも押されたかのように、新宮の眉は一瞬で下がり、声は弱くなる。
開いた口が塞がらない。新宮が押されている光景は、初めて、見た……
それに引っかかる言葉があった。新宮が、特殊術式を使えない……?
妖力についてはまだにわか程度の知識しかないが、新宮の言い分では特殊術式は一人一つ使える術式。それをあの新宮が使えない……?
もしかすると彼女はまだ俺に嘘をついているのか?
「安心しろぴょん。コイツに全てを話したら三笠木七葉は帰るぴょん」
「何でそんな奴に話すの? 話したことで思い出しやしない、償おうとしない、しらばくっれるだけ。七葉……貴方本当に何しに来た
の……?」
「それは三笠木七葉自身にも分からないケロ。三笠木七葉は頑張る人の味方。だから未来のために頑張り続ける結が報われる世界を望んだ。でも……思うんだ。今の結を未来が見たらどう思うかって」
「そんな知らないわよっ!」
地面が揺れる。心臓が揺れる。心が、揺れる。
自分に向けた言葉ではないのに、どうして心が揺さぶれるのだろう。それはきっと新宮の横顔のせい。
怒ったような、悲しんだような。顔が赤いような、目が赤いような。どっちつかずの彼女の横顔のせい。
「私だって……お姉ちゃんに聞きたい! でも死人とは話せないの! 会えないのっ!」
「にいみ……」
状況を何も理解していない俺なのに、不意に口と手が動いた。手を伸ばさずには、いられなかった。
しかしその手は、すぐに叩かれ、乾いた音が耳に入る。
「誰も……誰もお姉ちゃんを守ってくれなかった! お姉ちゃんはあんたたちの為に戦ったのに! あんたたちの為に命かけたの! あんたたちの為に痛い思いを沢山したの! なのに、恩を仇で返すようなことしやがって……お前らは全員、責任もって私が地獄に突き落とすっ! それが悪と言われてもいい……私は、お姉ちゃんの正義の味方でいられるなら、それだけでいい」
俺の頭は真っ白だった。理由は二つ。ここまで感情的な新宮結は初めてで吃驚したから。もう一つは、彼女の話を半分も理解できなかったから。
もう声は出ない。手も足も動かない。
大粒の水滴を顔中にまき散らす新宮が目の前にいるのに、何もできない。
鏡が欲しい。俺は今、どんな顔で新宮を見ているのだろう。
「ムスキチ……」
「取り乱してすみません。任務に戻ります」
何もできずに、新宮は消えた。
また、何も言わずに行ってしまった。どうして俺は彼女を捕まえられないのだろう。俺がヘタレだから? 凡人だから? それとも……
「三笠木七葉がここに来た理由……まだ分からないケロ」
「そうぴょんね……でも三笠木七葉はムスキチにあんな顔させたくて来たんじゃないぴょん」
「そうケロ。三笠木七葉はムスキチに幸せになって欲しいだけ……それが叶うなら藁にだってすがるケロ」
呆然と、もう消えてしまった新宮の背中を追う視界は突然緑とピンクで埋まる。
「うわっ……なんだよ!」
「君がぼっーとしてるのが悪いケロ」
緑とピンクは引いていく。数歩先には新宮より背の低い、パペットマスターが真っすぐ立っていた。実際は数十センチも差がある俺たち
の身長、きっと今は縮んでいるだろう。
「三笠木七葉と新宮結は大事な友達。だから三笠木七葉は藁にも縋る。大事な友達を守るため。……例えその藁が友達を傷つけた殺人犯の一部だとしても」
どちらのパペットも口を閉じたまま。なのに聞こえる強い声。これは、三笠木七葉の言葉だ。
彼女は背中についたウエストポーチをお腹に回した。
気付かなかった。そんなもの持っていたのか……黒子の黒と被っているせいで気付かなかった。
「はい」
「こ、れは……?」
パペットをつけたまま器用にファスナーを開け、カエルの口とウサギの口を鞄に突っ込む。こんな時くらい外せばいいのに。
二匹が俺に差し出したのは歴史の教科書に載っていそうな、古臭い正方形の木箱だった。
「新宮家に伝わる秘伝妖具・記憶媒体ケロ。ムスキチはこれを使って上層部や三笠木七葉たち妖術師を納得させ、今回の任務に就いたケロ」
「記憶、媒体……」
唾を鳴らし、恐る恐る二匹の口からそれを抜き取る。小さなこの箱に、一体どんな力があるのだろう。
掌に乗せられたそれは黒い金属で縁どられており、一か所だけ摘まめる部分があった。恐らくここから、開けるのだろう。
「記憶媒体は自身の思考、記憶を詰め、他者に見せることのできる妖具ぴょん。ただし、嘘は入らない。ここに入るのは事実だけ。必ず、その人が見て、感じた事実しか見ることが出来ないんだぴょん」
ウサギの顔と木箱を交互に見る。つまりこの箱は自分の心を見せるための、他人の心を見るための道具……なんておとぎ話的で、恐ろしいものなんだろう。俺は自分の心なんて、他人に見せたくない。
「ここに込められているのは二年前からこの村に来るまで新宮結の記憶ケロ」
「これを、見ればいいんだな?」
そうすれば、新宮があんなことをする理由がわかるんだ。小さな摘みを右手の親指と人差し指でつまんだ瞬間、
「待つケロ」
渡してきた張本人のカエルが制した。日の角度のせいで黒子越しに透ける彼女の目は、怖いくらいに俺を真っすぐ捉えていた。
「な、何……? これを俺に見せるために渡したんじゃないの?」
「そうケロ。三笠木七葉は君がこれを見ることを望んでいる。だけど決めるのは三笠木七葉ではない、君ケロ」
「俺が、決める……」
それはこの世で一番嫌いな言葉だった。
「人の心を覗くのは、死より怖い。これはとある友人の言葉ケロ。中立的な立場で言わせてもらうと、君はこれを見るべきじゃないケロ。
ここには、君が目を背けたくなることが多すぎる」
「……例えば?」
「存在しない記憶を見ることになる」
「存在しない……?」
ウサギの言っていることはよく分からなかった。この箱には嘘をつけない、つまり存在しない記憶というのは矛盾が生じる。
「とにかく覚悟が必要ケロ。決めるのは三笠木七葉でもムスキチでもない。君ケロ。君は、どうしたいケロ?」
「どう、したいって……」
そんなこと聞かれても、困る。
俺は今まで辛いことや選ぶことから逃げ続けた。今だってこのまま家に帰りたいと思っている。
でも、何故足は動かないのだろう。何故、これを返そうとしないのだろう。
彼女と同じように、理由が分からない。ただ、一つだけ分かることは。
「俺は……新宮の本当が知りたい」
辛いとか苦しむとかじゃなくて、俺はただそれを望むだけ。新宮の隠し事を全部知りたいだけ。
それが好奇心なのか、心配からか、救済からなのかは分からない。でも俺はこれを開ける選択をしたい。ただ、それだけ。
「なら開くケロ。そこにはムスキチの本音しかない。君が、知りたくないようなことも含めて」
「……分かった」
冷気が頬を擽る。悴む手は迷いなく箱のつまみに触れる。それは氷より冷たく、開けるなと言っているようだった。
何かを選ぶということは、何かを捨てるということ。だから俺は何も得ず何も失わない道を選び続けた。
「……開けます」
新宮を知る。それを選んでしまった俺は、一体何を失うのだろう。
「うん。それがいい、ぴょん」
三笠木七葉の表情は最後まではっきりと見えなかった。でも、なんとなくは分かる。
彼女は俺に協力的なようで、そうでない。時折透ける目は俺を責めるような色彩だった。
ゆっくりと箱を開く。覗き込むが中身はない。てっきり煙が飛び出るとか、映像が、流れ、る、と、思って、いた、の、に……
自分が自分でなくなるような、幽体離脱をしているような感覚が全身を揺らす。俺の意識はここで途切れた。
三十分後。校門の前に突っ立たまま、背中を丸めた俺は耳を真っ赤にし、声しか知らない誰かを待ち続けていた。
何が早くしろだ。言った本人が来てないじゃないか!
かじかんだ指先に吐息をかける。寒さが消えるのは一瞬だけで、すぐさま冷気が指の間をすり抜ける。本当に、このままでは凍死する。……いや、マジで。冗談抜きで。
「あ、いたいた。ケロ」
「早かったぴょんねぇ。久我時雨」
視界の情報が脳にいきわたった瞬間、寒さが一瞬にして吹き飛んだ。
人間、本当に驚いた時は声も出ないらしい。開いた口の塞がらない俺は彼女の全身を見て驚愕した。
俺の待ち人らしい人は、舞台上で演目台をめくる人が着る黒子姿で現れた。ぴょんやケロを発している時点で確定だ。認めよう。信じたくはないが、目の前の黒子が俺の待ち人だ。
再び全身を舐めまわす。身長は新宮より少し高いくらいで、声色から判断するに女性だろう。
「……………」
百歩譲って、黒子はいい。しかしもっと気になる点がある。
右手にはウサギのぬいぐるみ、左手にはカエルのぬいぐるみが嵌められている。
……芸人かよ。だとすれば右手は牛であってほしかった。
「ありゃりゃ? 間違ったケロ?」
「な訳ないぴょん。彼が久我時雨、違いないぴょん」
パペット達は人間(恐らく三笠木七葉)を挟み、向かい合いながら話している。
んだよこれ……妖術師って変態の集まりなのか……?
国の機密機関に対する不信が増した。それが顔に出てたのか、パペット達はこちらを振り向く。正直、怖くはないが、恐怖はあった。
「私はぴょん吉、よろしくぴょん」
「僕はケロリン、よろしくケロッ」
「は、はぁ……」
慣れた様子で一礼をするパペット。何となく俺も頭を下げる。ちょっぴり、屈辱は感じるが。
「さてと、では侵入するケロ」
「は、はぁ? し、侵入……?」
一人は二体を連れて、飄々と歩き出す。今更だが、寒くはないのだろうか。
「そうケロ、侵入ケロ。三笠木七葉はこの学校の屋上に用があるケロ」
「お、屋上……? 何で……?」
「ああ、そうかぴょん。君、去年の今頃何があったか覚えているぴょん?」
「去年の今頃……?」
急にそんなことを言われても困る。しかし、つぶらな四つ目が俺を逃がすまいと見上げる。新宮に見られた時とはまた別の恐怖が心音を
駆り立てる。
「えっと……いつも通り学校行って、帰っての、繰り返しだと思います、けど……」
記憶の引き出しをひっくり返しても、聞かれて答えるようなことは特にない。
逆に何故そんなことを聞いたのかを聞きたい。新宮が来るまで、この村は万引き一つとして起こっていない平和な村だったのだから。
「ああ、そうかケロ……やっぱりか、ケロ……」
カエルの頭は落ちていく。気付いたウサギはカエルの頭を優しく撫でる。俺は今、何を見せられているのだろう。
「あのさ、何でそんなこと聞くの?」
「……君はムスキチを、どう見ているぴょん?」
ムスキチ、というのは恐らく新宮結のことだろう。
パペットなので、表情は変わらない。そのはずなのに、俺を見つめるウサギの目は、カエルに向ける目より冷たく、厳しい気がした。カ
エルはまだ、落ち込んでいる。
「どうって……初めは尊敬できて、太陽みたいに眩しくて、世界を照らす、決して届かない……正義の味方だった。でも、今は違う……アイツは、簡単に人を殺せる……腐った人間だった……」
言葉は重い。今まで思っていたことを形にしただけなのに、感情が堰き止められず、気づいていないものにまで、触れてしまう。
「俺……新宮のこと、本当に、凄いなって、思ってた……だから、ショックだった……俺の中で作り上げていた新宮が消えちゃって……今
まで感じていた空白が大きくなって、それで……」
「言い訳は止めろ、一般人」
ぴたりと、感情に終止符が打たれる。
黒子でよく見えないが、三笠木七葉は間違いなく、俺を睨んでいる。
「結は、そんな子じゃない……ぴょん。あの子は、誰かのために生きてるんじゃない……結だって、幸せになるために生まれてきたんだぴょん」
「待つケロ。結だけじゃないケロ。ミコイもそうだ。誰かのために生きるって何? 妖術師は戦う為のロボットでも、自己犠牲溢れる善人でもないケロ。たまたま力をもって生まれてしまった『普通』の人間だ。他人のために頑張るのが当たり前だと思うな、ケロ」
パペットに乗せられた声は今までと同じようで、違った。
今までは本当にパペットがしゃべっている、三笠木七葉の心情が一切読み取れない声だった。
でも、今のは分かる。パペットの裏に隠された三笠木七葉は沢山の涙を、怒りを持っている。
「三笠木家に伝わる秘伝妖具・パペット視局を使い、君と結の間に起こったことは大体知っているケロ。ケロリン達がここに来た理由、それは……」
ごくりと唾を飲む。パペットから聞こえる声は夕刻に流れる子供番組のキャラクターに戻っていた。
「それは?」
「それは、三笠木七葉にも分からないケロ」
ズコーー……思わず、大げさにずっこけたくなる。
コイツが妖術師ではなく、芸人であるという仮説の信憑性が急に上がった。
懐疑の目を向けるが、パペットの表情は変わらないし、三笠木七葉本体の表情も見えない。
「あのさ、本当に君……何がしたいの……?」
「それは分からない。ここに来ることを決めたのは……君が、ムスキチの為に頑張れる人間か試すため」
「……俺を、試す?」
「……そうぴょん」
そういった後彼女は屈み、ウサギのパペットにズボンの裾を噛ませ、まくり上げる。
「っ……!」
「あやかしを祓う方法は主に二つケロ。一つは新宮結のようにあやかしが乗っ取った人間ごと祓う。もう一つは妖力を持つ人間の体の一部にあやかしを移し、あやかしを祓う……ケロ」
息を飲む。心音が忍ぶ。
虐待なんて生ぬるい。暴力など別次元。彼女の足にはこれでもかと傷や内出血が広がっていた。
「切断、殴る、切り刻む……そこに妖力がこもっていれば方法は問わないケロ。ただし、痛みは尋常じゃない……鼻からスイカを出すと例えられる出産に勝る激痛だケロ。妖力を持つ人間は一般人と比べ、回復力が桁違いだケロ。例え切断したとしても、また生えてくる。まぁ、傷跡は消えないがケロ。それに繰り返すたびに痛みは増える……君はあの子にそれを押し付けることが出来る?」
「そ、れは……」
人を殺してはいけません。それは誰もが知っている世界の常識。どんな聖人でも殺人は肯定できない。
でも、俺は揺れている。
「……一つだけ言っとくぴょん」
三笠木七葉は立ち上がり、俯く俺の視界には口をパクパク動かすウサギが入る。俺を責めるように、ウサギは口を止めてはくれない。
「ムスキチは訳アリ妖術師……まぁ、探録隊内で訳ナイ妖術師なんて殆どいないぴょんが、ムスキチは別格ぴょん。あの子は……一五歳では背負いきれない荷物を、一滴も落とさずに、たった一人で背負って生きてきたんだぴょん」
「新宮が……?」
「……三笠木七葉はこの村が嫌いだ。一人の妖術師が犠牲になった最悪の村だからだケロ」
妖術師が、犠牲に……?
「待ってよ……今の言い方だと、新宮の前に妖術師が来てたってこと……?」
「そうケロ。一年前の春、一人の妖術師が任務の為この村に来たんだケロ。彼女の名は新宮未来(みこい)。新宮結の実の姉……マインドコンダクタ―新宮未来、ケロ」
「まいんど、こんだくたー……?」
それにカエルは確かに一年前と口をパクパクさせた。
生憎だが、この村に誰かが越してきたなんてことは起こっていない。三笠木七葉は何か勘違いをしているのだろう。
「そうぴょん。マインドコンダクタ―は新宮家に伝わる特殊術式心操術式の使用者のことぴょん。この術式は数年前まで最強の術式と言われていたぴょん。それ故に使用も難しい。新宮家の妖術師でもロクに使えこなせない奴なんてざらぴょん」
「でも未来は違ったケロ。心操術式を三日で最高レベルまでマスターし、数百年に一度の天才術師と呼ばれていたケロ。でも、彼女は死んだ。それは……」
「こんなところで何してんのよ、七葉」
話に聞き入り、前のめりになった肩がびくりと飛び上がる。本当に、神出鬼没にも程がある。
登校中では聞いたことのない息切れを連れた新宮が、俺の肩に手を置いていた。
「何って……三笠木七葉は未来を弔いに来ただけぴょん」
「だったら東京にある墓、もしくは新宮家の仏壇に手を合わせなさいよ。何でわざわざここにくんの?」
新宮の話し方は高圧的とも感じるが、違和感がなかった。
何故だろう。笑顔を絶やさない唾だらけの飴玉のような声が定着していたのに、眉を吊り上げ、口をへの字に。声変わり前の少年のような低い声が妙にあっていると感じる。
それはきっと、こっちが本当の新宮結だからだろう。
「別にいいじゃんぴょん。よくニュースで見るぴょん。交通事故現場に花を添える、それと同じぴょん」
「お姉ちゃんは交通事故で死んでない」
「細かいことは気にするなケロ」
「細かくな……」
「ムスキチ、特殊術式は使えるようになったケロ?」
「そ、れは……まだ、ですけど……」
スイッチでも押されたかのように、新宮の眉は一瞬で下がり、声は弱くなる。
開いた口が塞がらない。新宮が押されている光景は、初めて、見た……
それに引っかかる言葉があった。新宮が、特殊術式を使えない……?
妖力についてはまだにわか程度の知識しかないが、新宮の言い分では特殊術式は一人一つ使える術式。それをあの新宮が使えない……?
もしかすると彼女はまだ俺に嘘をついているのか?
「安心しろぴょん。コイツに全てを話したら三笠木七葉は帰るぴょん」
「何でそんな奴に話すの? 話したことで思い出しやしない、償おうとしない、しらばくっれるだけ。七葉……貴方本当に何しに来た
の……?」
「それは三笠木七葉自身にも分からないケロ。三笠木七葉は頑張る人の味方。だから未来のために頑張り続ける結が報われる世界を望んだ。でも……思うんだ。今の結を未来が見たらどう思うかって」
「そんな知らないわよっ!」
地面が揺れる。心臓が揺れる。心が、揺れる。
自分に向けた言葉ではないのに、どうして心が揺さぶれるのだろう。それはきっと新宮の横顔のせい。
怒ったような、悲しんだような。顔が赤いような、目が赤いような。どっちつかずの彼女の横顔のせい。
「私だって……お姉ちゃんに聞きたい! でも死人とは話せないの! 会えないのっ!」
「にいみ……」
状況を何も理解していない俺なのに、不意に口と手が動いた。手を伸ばさずには、いられなかった。
しかしその手は、すぐに叩かれ、乾いた音が耳に入る。
「誰も……誰もお姉ちゃんを守ってくれなかった! お姉ちゃんはあんたたちの為に戦ったのに! あんたたちの為に命かけたの! あんたたちの為に痛い思いを沢山したの! なのに、恩を仇で返すようなことしやがって……お前らは全員、責任もって私が地獄に突き落とすっ! それが悪と言われてもいい……私は、お姉ちゃんの正義の味方でいられるなら、それだけでいい」
俺の頭は真っ白だった。理由は二つ。ここまで感情的な新宮結は初めてで吃驚したから。もう一つは、彼女の話を半分も理解できなかったから。
もう声は出ない。手も足も動かない。
大粒の水滴を顔中にまき散らす新宮が目の前にいるのに、何もできない。
鏡が欲しい。俺は今、どんな顔で新宮を見ているのだろう。
「ムスキチ……」
「取り乱してすみません。任務に戻ります」
何もできずに、新宮は消えた。
また、何も言わずに行ってしまった。どうして俺は彼女を捕まえられないのだろう。俺がヘタレだから? 凡人だから? それとも……
「三笠木七葉がここに来た理由……まだ分からないケロ」
「そうぴょんね……でも三笠木七葉はムスキチにあんな顔させたくて来たんじゃないぴょん」
「そうケロ。三笠木七葉はムスキチに幸せになって欲しいだけ……それが叶うなら藁にだってすがるケロ」
呆然と、もう消えてしまった新宮の背中を追う視界は突然緑とピンクで埋まる。
「うわっ……なんだよ!」
「君がぼっーとしてるのが悪いケロ」
緑とピンクは引いていく。数歩先には新宮より背の低い、パペットマスターが真っすぐ立っていた。実際は数十センチも差がある俺たち
の身長、きっと今は縮んでいるだろう。
「三笠木七葉と新宮結は大事な友達。だから三笠木七葉は藁にも縋る。大事な友達を守るため。……例えその藁が友達を傷つけた殺人犯の一部だとしても」
どちらのパペットも口を閉じたまま。なのに聞こえる強い声。これは、三笠木七葉の言葉だ。
彼女は背中についたウエストポーチをお腹に回した。
気付かなかった。そんなもの持っていたのか……黒子の黒と被っているせいで気付かなかった。
「はい」
「こ、れは……?」
パペットをつけたまま器用にファスナーを開け、カエルの口とウサギの口を鞄に突っ込む。こんな時くらい外せばいいのに。
二匹が俺に差し出したのは歴史の教科書に載っていそうな、古臭い正方形の木箱だった。
「新宮家に伝わる秘伝妖具・記憶媒体ケロ。ムスキチはこれを使って上層部や三笠木七葉たち妖術師を納得させ、今回の任務に就いたケロ」
「記憶、媒体……」
唾を鳴らし、恐る恐る二匹の口からそれを抜き取る。小さなこの箱に、一体どんな力があるのだろう。
掌に乗せられたそれは黒い金属で縁どられており、一か所だけ摘まめる部分があった。恐らくここから、開けるのだろう。
「記憶媒体は自身の思考、記憶を詰め、他者に見せることのできる妖具ぴょん。ただし、嘘は入らない。ここに入るのは事実だけ。必ず、その人が見て、感じた事実しか見ることが出来ないんだぴょん」
ウサギの顔と木箱を交互に見る。つまりこの箱は自分の心を見せるための、他人の心を見るための道具……なんておとぎ話的で、恐ろしいものなんだろう。俺は自分の心なんて、他人に見せたくない。
「ここに込められているのは二年前からこの村に来るまで新宮結の記憶ケロ」
「これを、見ればいいんだな?」
そうすれば、新宮があんなことをする理由がわかるんだ。小さな摘みを右手の親指と人差し指でつまんだ瞬間、
「待つケロ」
渡してきた張本人のカエルが制した。日の角度のせいで黒子越しに透ける彼女の目は、怖いくらいに俺を真っすぐ捉えていた。
「な、何……? これを俺に見せるために渡したんじゃないの?」
「そうケロ。三笠木七葉は君がこれを見ることを望んでいる。だけど決めるのは三笠木七葉ではない、君ケロ」
「俺が、決める……」
それはこの世で一番嫌いな言葉だった。
「人の心を覗くのは、死より怖い。これはとある友人の言葉ケロ。中立的な立場で言わせてもらうと、君はこれを見るべきじゃないケロ。
ここには、君が目を背けたくなることが多すぎる」
「……例えば?」
「存在しない記憶を見ることになる」
「存在しない……?」
ウサギの言っていることはよく分からなかった。この箱には嘘をつけない、つまり存在しない記憶というのは矛盾が生じる。
「とにかく覚悟が必要ケロ。決めるのは三笠木七葉でもムスキチでもない。君ケロ。君は、どうしたいケロ?」
「どう、したいって……」
そんなこと聞かれても、困る。
俺は今まで辛いことや選ぶことから逃げ続けた。今だってこのまま家に帰りたいと思っている。
でも、何故足は動かないのだろう。何故、これを返そうとしないのだろう。
彼女と同じように、理由が分からない。ただ、一つだけ分かることは。
「俺は……新宮の本当が知りたい」
辛いとか苦しむとかじゃなくて、俺はただそれを望むだけ。新宮の隠し事を全部知りたいだけ。
それが好奇心なのか、心配からか、救済からなのかは分からない。でも俺はこれを開ける選択をしたい。ただ、それだけ。
「なら開くケロ。そこにはムスキチの本音しかない。君が、知りたくないようなことも含めて」
「……分かった」
冷気が頬を擽る。悴む手は迷いなく箱のつまみに触れる。それは氷より冷たく、開けるなと言っているようだった。
何かを選ぶということは、何かを捨てるということ。だから俺は何も得ず何も失わない道を選び続けた。
「……開けます」
新宮を知る。それを選んでしまった俺は、一体何を失うのだろう。
「うん。それがいい、ぴょん」
三笠木七葉の表情は最後まではっきりと見えなかった。でも、なんとなくは分かる。
彼女は俺に協力的なようで、そうでない。時折透ける目は俺を責めるような色彩だった。
ゆっくりと箱を開く。覗き込むが中身はない。てっきり煙が飛び出るとか、映像が、流れ、る、と、思って、いた、の、に……
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