28 / 41
26 新宮結の独白(3)
しおりを挟む
『今日は転校初日! 友達沢山出来たよ!』
夕刻。パトロール終わりに鳴ったスマホは姉からのメッセージ。添えられた写真はとても沢山、とは言えないが何人かのクラスメイトに囲まれ、お見上げにと購入した東京土産が映り込む写真。皆笑顔が眩しい。
私のことを忘れずに連絡してくれることを嬉しく思う。知らない制服を着たお姉ちゃんを見て寂しく思う。友達が出来たことに安心する。
『よかったね』『任務、頑張って』
渦巻く感情を隠すように、平然を装った言葉を選ぶ。この写真は保存しよう。誰に見せる訳でもないし、自分で何度でも見るためではない。ただ、私のスマホにデータとして残しておきたかった。
「へー未来は今日から長期任務、だったケロ?」
「うわっ! びっくりした……」
肩に重みが加わり、耳がくすぐったくなる。驚きから体は跳ね、足が引けた。振り返ると私の唯一の友達が立っていた。
「やぁぴょん。暇だから遊びに来てやったぴょん」
「七葉って妖術師の癖に暇そうだよね」
「失礼なケロ。三笠木七葉は友達に会う為にさっさと任務を片して時間を作ってるんだケロ」
相変わらずの黒子スタイルはいつ見ても違和感しかない。彼女なりの事情があるので、あまりどうこうは言えないが、黒子に両手にパペットを手けて歩くなんて……不審者と間違えられて通報されないか心配になる。
「ムスキチはパトロール中ケロ?」
「もう終わった」
「じゃあこれから暇ってことぴょん?」
「まぁそうなる」
「じゃあムスキチの家に行くケロ」
「えっ……私の家……?」
正直言ってありがたいがやめて欲しい。姉がいない以上、私はあの家で使用人……いやそれ以下として扱われている。七葉がいれば父は態度を変えるかもしれないが、それはそれで七葉に迷惑をかける。友達を家族問題に巻き込ませる訳にはいかない。
「嫌だよ。お家に帰りなさい」
「……それは三笠木七葉の家が福岡にあると知った上での発言ぴょん?」
「うん」
「即答は酷いケロ。それに帰る訳にはいかないんだケロ。三笠木七葉はちょこっと調べ物があるからどのみち今日は帰れないぴょん」
「じゃあホテル探してあげるわよ」
すかさずお姉ちゃんとのトークアプリを落とし、インターネットを起動させる。
えーっと、現在地から一番近いホテル……素泊まりで値段は上限なしっと……
「酷いぴょん、酷いぴょん。ムスキチはそんなに三笠木七葉と一つ屋根の下で一晩共にしたくないぴょん?」
「今の言い回しでもっと嫌になった」
「布団の数が足りないなら、一緒の人んで寝てあげるケロ」
「生憎布団は有り余ってるのよ。アンタの分だけじゃなく、ぴょん吉、ケロリンの分も用意出来る程ね。ま、泊めないんだけど」
「ケチムスキチ」
「ケチで結構」
そうこうしている間にまたスマホが震える。また姉からだ。嬉しくてぴょんぴょんしたくなるが、そういうのは私のキャラじゃないので、平然と、業務連絡を受けたかのように開く。
『結はどう? お父さんに変なこと、させられてない?』
手が止まる。ぴょんぴょんどころの騒ぎではなくなった。
『別に心配するようなことはないから』
『お姉ちゃんは自分の任務に集中しなさい』
バレバレな嘘をつく。お姉ちゃんだって聞かなくても分かっているはず、私がどんな目に遭っているかくらい。彼女はどれほど私を心配
してるか手を取るようにわかる。
だから私は虚勢を張る。平気だと言い続ければ脳がマヒしてそのうち本当に平気だと思えるようになるから。
「嘘つきケロ。ムスキチ、お父さんに何かされてるケロ」
勝手に人のスマホを覗き込む悪趣味カエルにの頭を叩く。虚勢を張るのは、心配をかけたくないのは、友人だって同じ。
「何もにって言ってるでしょ? ほらホテル探してあげるから……」
「実は未来に言われてきたんだぴょん。任務があるのは本当ケロが、ムスキチが心配だからって……」
「七葉。私は平気だから。私、プライドだけはいっちょ前なの。半端者の私がいることで貴方たちの貴重な時間を奪うのなら……死んだ方がマシね」
「結……」
「あ、ホテルのリンク送っとくから。請求は勿論三笠木家に行きますので」
「……抜かりないヤツめ、ぴょん」
「じゃあまた」
また、虚勢を張る。でも今度の嘘は全部が嘘じゃない。貴方達の時間を奪いたくない、紛れもなく本音だ。同い年の七葉は私の倍以上働いている。必死に隠したようだが、目にははっきりとクマが描かれていた。
お姉ちゃんだってそうだ。人口こそ少ないが、海葦村は面積が広い。たった一人の妖術師がカバーのは不可能に近い。
だから、私のことなんか、気にかけないで欲しい。他人の為に頑張りすぎる二人はもっと、自分のことを大切にして欲しい。
「……三笠木七葉は結に笑って欲しいだけなのに」
だから。その言葉は聞こえなかったふりをして、走り出す。私の家とは到底言えない、新宮家へと帰る。
夕刻。パトロール終わりに鳴ったスマホは姉からのメッセージ。添えられた写真はとても沢山、とは言えないが何人かのクラスメイトに囲まれ、お見上げにと購入した東京土産が映り込む写真。皆笑顔が眩しい。
私のことを忘れずに連絡してくれることを嬉しく思う。知らない制服を着たお姉ちゃんを見て寂しく思う。友達が出来たことに安心する。
『よかったね』『任務、頑張って』
渦巻く感情を隠すように、平然を装った言葉を選ぶ。この写真は保存しよう。誰に見せる訳でもないし、自分で何度でも見るためではない。ただ、私のスマホにデータとして残しておきたかった。
「へー未来は今日から長期任務、だったケロ?」
「うわっ! びっくりした……」
肩に重みが加わり、耳がくすぐったくなる。驚きから体は跳ね、足が引けた。振り返ると私の唯一の友達が立っていた。
「やぁぴょん。暇だから遊びに来てやったぴょん」
「七葉って妖術師の癖に暇そうだよね」
「失礼なケロ。三笠木七葉は友達に会う為にさっさと任務を片して時間を作ってるんだケロ」
相変わらずの黒子スタイルはいつ見ても違和感しかない。彼女なりの事情があるので、あまりどうこうは言えないが、黒子に両手にパペットを手けて歩くなんて……不審者と間違えられて通報されないか心配になる。
「ムスキチはパトロール中ケロ?」
「もう終わった」
「じゃあこれから暇ってことぴょん?」
「まぁそうなる」
「じゃあムスキチの家に行くケロ」
「えっ……私の家……?」
正直言ってありがたいがやめて欲しい。姉がいない以上、私はあの家で使用人……いやそれ以下として扱われている。七葉がいれば父は態度を変えるかもしれないが、それはそれで七葉に迷惑をかける。友達を家族問題に巻き込ませる訳にはいかない。
「嫌だよ。お家に帰りなさい」
「……それは三笠木七葉の家が福岡にあると知った上での発言ぴょん?」
「うん」
「即答は酷いケロ。それに帰る訳にはいかないんだケロ。三笠木七葉はちょこっと調べ物があるからどのみち今日は帰れないぴょん」
「じゃあホテル探してあげるわよ」
すかさずお姉ちゃんとのトークアプリを落とし、インターネットを起動させる。
えーっと、現在地から一番近いホテル……素泊まりで値段は上限なしっと……
「酷いぴょん、酷いぴょん。ムスキチはそんなに三笠木七葉と一つ屋根の下で一晩共にしたくないぴょん?」
「今の言い回しでもっと嫌になった」
「布団の数が足りないなら、一緒の人んで寝てあげるケロ」
「生憎布団は有り余ってるのよ。アンタの分だけじゃなく、ぴょん吉、ケロリンの分も用意出来る程ね。ま、泊めないんだけど」
「ケチムスキチ」
「ケチで結構」
そうこうしている間にまたスマホが震える。また姉からだ。嬉しくてぴょんぴょんしたくなるが、そういうのは私のキャラじゃないので、平然と、業務連絡を受けたかのように開く。
『結はどう? お父さんに変なこと、させられてない?』
手が止まる。ぴょんぴょんどころの騒ぎではなくなった。
『別に心配するようなことはないから』
『お姉ちゃんは自分の任務に集中しなさい』
バレバレな嘘をつく。お姉ちゃんだって聞かなくても分かっているはず、私がどんな目に遭っているかくらい。彼女はどれほど私を心配
してるか手を取るようにわかる。
だから私は虚勢を張る。平気だと言い続ければ脳がマヒしてそのうち本当に平気だと思えるようになるから。
「嘘つきケロ。ムスキチ、お父さんに何かされてるケロ」
勝手に人のスマホを覗き込む悪趣味カエルにの頭を叩く。虚勢を張るのは、心配をかけたくないのは、友人だって同じ。
「何もにって言ってるでしょ? ほらホテル探してあげるから……」
「実は未来に言われてきたんだぴょん。任務があるのは本当ケロが、ムスキチが心配だからって……」
「七葉。私は平気だから。私、プライドだけはいっちょ前なの。半端者の私がいることで貴方たちの貴重な時間を奪うのなら……死んだ方がマシね」
「結……」
「あ、ホテルのリンク送っとくから。請求は勿論三笠木家に行きますので」
「……抜かりないヤツめ、ぴょん」
「じゃあまた」
また、虚勢を張る。でも今度の嘘は全部が嘘じゃない。貴方達の時間を奪いたくない、紛れもなく本音だ。同い年の七葉は私の倍以上働いている。必死に隠したようだが、目にははっきりとクマが描かれていた。
お姉ちゃんだってそうだ。人口こそ少ないが、海葦村は面積が広い。たった一人の妖術師がカバーのは不可能に近い。
だから、私のことなんか、気にかけないで欲しい。他人の為に頑張りすぎる二人はもっと、自分のことを大切にして欲しい。
「……三笠木七葉は結に笑って欲しいだけなのに」
だから。その言葉は聞こえなかったふりをして、走り出す。私の家とは到底言えない、新宮家へと帰る。
0
あなたにおすすめの小説
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜
水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。
魔王乱立の時代。
王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。
だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。
にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。
抗議はしない。
訂正もしない。
ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。
――それが、誰にとっての不合格なのか。
まだ、誰も気づいていない。
欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる