適正異世界

sazakiri

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第13話

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セツナが本を取り出してからしばらく時間がたった。
「おい」
「んー?なんですか?」
「いつになったらこの壁を壊せるんだ?」
「まってくださいよ」とページをめくるセツナ。

「あった!!」と明るい声で言った。
「あったか」
「ありましたよトーマさん」
「じゃあ早く試してみてくれ」
「分かりました!やってみます」と本を構える
さて、魔術を見るのは初めてだな。どんなものか楽しみだ。
しかし、初魔術が洞窟とはな。さすが異世界!

ん?洞窟?
洞窟って崩れ落ちたりしないの??
ヤバイ予感がする。

「セツナッ」
「なんですか?」
「魔術は一回やめだ。」
「え?」
「説明するから」
「分かりましたよぉ」と残念そうな顔をする。

「いいか?」
「はい」
「ここは洞窟なんだ」
「はい」
「ここで壁を壊したらどうなる?」
「……?」
「崩れるだろ」
「あ…」
「他の方法を探すぞ」
「はい……」
なんか立場が逆になって分かりにくくなっているが
俺が異世界に送られた方である。

「もぉー無理ですよぉ」セツナがギブアップ。
「そんなこと言ったって宝ほしくねぇの?」
「欲しいです」
「じゃあ探せ」
しばらく考えたが、なにも浮かばない。

「とりあいず今回はゴールドチェリンだけにしたらどうだ?」とセツナに提案。
「えぇ?ダメですよ!」
「でも無理ゲーじゃん」

と嘆いていた時。

「まぁ一旦洞窟の最初から捜索しませんか?」
「確かにそうだな」
ここは情報を洗い直した方が良さそうだ。
「さぁ行きまッッうわあああ」
セツナが盛大に足を踏み外す。
「おい!大丈夫ですか?」
「大丈夫です…」
「はぁ…しっかりしてくれ」
「以後気をつけ」
「つけ?」
「トーマさん!」
「どうした?」
急にセツナの声が明るくなる
「スイッチみたいなもの見つけましたよ!」
「まじか!」
なるほど、足元をわざと危険にして隠しスイッチまで配慮できないようにさせる思惑か。
確かに友好的な手段だ。
しかし、これで分かったことがある。
この洞窟は自然のものではなく、人為的に作られたものということだ。

「じゃあスイッチ押しますね!」
「あぁ」

スイッチを押すと…
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」
と音をあげ扉が開いた。

「やったー!開きましたよトーマさん!」
「そうだな」
やったぞ、これで宝まで一歩近付いた。
しかし疑問に思った人もいるであろう。
なぜ急に俺が宝を気にし始めたのか。
だが今は説明しなくていいだろう。
今は目の前の試練を待ち構えなければいけない。
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