適正異世界

sazakiri

文字の大きさ
上 下
39 / 129

第32話

しおりを挟む
こんな世界にも知ってるやつがちょうどいた。
これは運がいいな。

「おーい!」
まずは呼んでみよう。
少し声は抑えてな。
仮にもここはホテル内、他の客もいるのだ。

あれ?反応ないな…
声を抑えすぎたか?

「桜川~!」
ならもう一回呼ぶのが筋ってもんだ。

ん?これ本当に聞こえてない?
結構聴こえるように言ったはずなんたが…

「あいつ難聴なのか……?」
「難聴じゃねぇよ」
「おぉ!」

桜川がついに振り向いてくれた。
この機会を逃すわけにはいかない。
「桜川…」
「……なに?」
「お願いがあるんだが」
「ふーん」
「なんだよその反応」
「まずは私に言うことがあるんじゃないの?」
ん?これなに?言うこと?
俺には心当たりがないんだが…

「桜川?」
「なに?」
「言うことってなに?」
「はぁ…」と桜川はため息をする。
「俺なんかしたっけ?」
「現在進行形でしてるんだけど」
「え?」
「だーかーら!」
「なんだよぉ」
もうわけが分からん。
こいつは何を言ってるんだ?
だが、ここで逃げれば刑務所送りもあり得る。
我慢するしかない。

「こんな所でいきなり名前を呼ばないでよ!」
「えぇ…」
そんなことだったの?
そんなことで一分時間とられたの?
だが、今は我慢だ!

「すまない」
「まぁいいわ」
「それよりだな…」
「なに?」
「お願いがありまして…」
「言ってみて」
こいつも結構素直ところがあるんだな。
しかし今の俺にとっては好都合だ。

「ギル貸してくんない?」
「無理」
「え?」
んんんん?即答だと?!
そんなバカな。
これでも俺たちは現世から来た仲間みたいなもんだぞ?
それを平気で裏切るとは…
こいつ許さねぇ

「まぁ話だけでも聞いてくれ」

「って居ねぇんだけど」
もう桜川の姿はない。
どこだ?どこだ?

「あ!いた」
あいつ呑気に受付にいるじゃねぇか

取引が終わったようだ。
こちらに桜川が近付いてくる。

「ねぇ」
「なんだよ?」
もう若干キレかけている。
「ギルを貸してあげてもいいよ」
「え?」
「だーかーら!貸してあげるって」
「まじ?」
「うん」
「お前良いやつだな!」
やっぱ良いやつなんだな。
ほらあれ!ツンデレってやつか?

「ただし条件があります!」
「は?」
え?条件?
死ねって言われる?もしかして

「条件ってなんだよ」
桜川に聞いてみる。

「まぁ、ここはあれだし私の部屋に行きましょう」
「あぁ」

まじで条件が問題になってきた。
とんでもないこと言われたらどうするんだ?

刑務所orリスクの怠慢が始まる。
しおりを挟む

処理中です...