適正異世界

sazakiri

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第70話

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「あ…あがりました」
そう言ってアリスがシャワールームから出てくる。
「服は着替えないのか?」
アリスは同じ服を来ていた。
「これしか持ってない…」
「そうなのか…」
まぁ死人だからな…
服のなんて変えてる暇なんてないんだろう
まず服を気にするっていう概念がないのかもしれん
休日の俺の生活みたいなもんだ
着替えるのがめんどくさいんだよなぁ…

「ところで…アリス?」
「なんです…?」
「なんでお前は死人なのに話せるの?」
まぁこれが一番重要だろう…
普通の死人ならこんなに知能があるはずがない…
てか「普通の死人」ってパワーワードすぎるだろ

「え…分からないです」
聞いた直後にアリスが言葉を返してくる。
「気がついてたら?みたいな感じか?」
これはまさかの回答だった。
まぁ俺が本の読みすぎってのはあるかもだけど…
無意識でそんなことある?

「はい…死んだ後に…目が覚めたら」
「死んだはずなのに話せると?」
「そうです…」
「まじか」
本人の自覚がないからなぁ…
これ以上聞いたところでなにもない気が

「興味本位だが、いいか?」
「どうぞ…」
「なんでお前は死んだんだ?」
アリスの見た目はまだ少女みたいな感じだ
死人はその時の見た目を引き継ぐとすると…
俺の予想では、若いときに死んでいる
なにかあったとしか考えられないが…

「私はですね…」
アリスが話し始める。
「昔は冒険者だったんです…」
「冒険者?」
「はい…今では旅人って言うんでしたっけ…?」
「あぁ」
なるほど。
言葉は違うが意味は似ているな
旅人って言ってもこの世界じゃ格が違うし
冒険者って名乗ってもなにもおかしいことはない

「それで…ある日にダンジョンに行ったんですけど…」
「おう」
「まぁ単刀直入に話しますと…」
「仲間に見捨てられた…?みたいな感じです」
「え?」
「まぁ驚きますよね…」
「あぁ」
「私は結構足引っ張ることも多くて…」
「そうなのか…」
「はい…」
「すまん…悪いこと聞いたな」
「いえッ…大丈夫です…」
まとめるとこんな感じだ。

アリスは冒険者だった。
しかし…足を引っ張っていた為に見捨てられたと

酷いやつはどの世界にもいるもんだな…
まぁ死人になった経緯も聞けたし…
こいつが怪しいやつじゃないことは分かった
まず死人はそもそも怪しいけどな…

「あの…」
「なんだ?」
「あなたの名前って…」
「俺か?」
「はい…」
「トウマだ」
「トウマさんですね…よろしくお願いします」
「おう」
そう言えば名乗ってなかったな…

「トウマさんは…シャワー浴びないんですか…?」
「そうだったな…入ってくるわ」
「はいッ…」

そう言って俺はシャワールームに向かう。
てかアリスは良いやつなのかもな
俺だったら絶対復讐しに行くわ

まぁとりあいず詳しいことは後で聞こう
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