適正異世界

sazakiri

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第101話

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「なぁ…アリス?」
「なに?」
「いや…別に大したことじゃないんだけどさ」
「うん」
「ブルー軍が強すぎると思うのですが」
「うん」
先程の戦況報告から、約5分が経過した。

大きなな状況変化はレッド軍が壊滅したことだな。
撃破したチームは勿論の如く、ブルー軍。

もうあのチームだけ異次元なんだけど…

「やばすぎだろ…」
「うん!うん!今日も強いね!」
アリスが手をブンブン振りながら、言ってくる。

「あ?今日もだとぉ…?」
「あ…い、いやッ!なんでもないよ!」
おいまてまてまて
この反応から予想できることだが、ようは勝ち試合ってことか?
つまり…日頃からこのコロシアムで賭けているやつらが圧倒的有利ってわけだ。

「おい」
俺はアリスに問いかける。
「………」
「おーい!アリスちゃん?」
「………」
ん?俺もしかして嫌われてる?
さっきまで普通に話してましたが??

「おい」
「………」
「………」
「………」
沈黙の時間、僅か7秒。

「おい、ガキ」
「ガキとはなんだ!」
「聞こえてんじゃねぇか」
「そーゆうのは返事しない時点で察するもんでしょ!」
「理不尽すぎるだろ…」
「でもさっきのは聞き捨てならんよ!」
「なんだよ?」
「忘れたとは言わせないよ!さっき私のことガキ発言したでしょ?!」
「あ、あぁ…」
「まったく……これでも私は結構大人なんだよ!」
「へ、へぇ………それは頼もしいですね…」
「うん!うん!任したまえ!」 
途中からこいつの自分語りになっていた気がするが…

まぁそんなことはどうでもいい。
皆さんには試合の結果をお伝えしよう。

先程のレッドチーム壊滅から数分の内に勝敗が決まった。
勝利したチームは言うまでもないだろう。
まぁ…ブルー軍です…
我らがグリーン軍は瞬殺されました。
二人っていうハンデを考慮しても、勝ち目はなかっただろう。

とゆうわけで…僕の人生初ギャンブルは負けでした

「そろそろ出ようか」
アリスが言う。
「おう」
試合が終わった頃合いで観客が退場を始める。
俺たちもそれは同じというわけだ。


「やっと出られた…」
「今日は混んでたねぇ」
想像以上に混んでいたせいか、体感時間が長すぎた。

「じゃあそこら辺のカフェ的な所で休憩しよう」
「よき!」
アリスが応えてくれる。
ほんとにこいつのテンション高いな…


俺たちはコロシアムを出て、徒歩1分ぐらいのカフェに行くことにした。

「いらっしゃいませ!」
店の人が向かえてくれる。
「何名様ですか?」
「二人で」
「りょうかいでーす」
そうして、向かいテーブルの席へ案内される。

「ふー」
席へつき、ため息をもらす。
「つかれた?」
「まあな」
普段あんまり運動しないせいか、疲れがでた。

「ところで…アリス?」
「なに?」
「さっきのコロシアムのことなんだが…」
「あー!それはもう良いでしょ!」
「いや…ブルー軍のことじゃねぇよ」
「へ?」
まぁ確かに、ブルー軍のことも知りたいけどさ…

「アリスはさ…」
「うん」
「あのオーク達を見て……心とかが痛まないのかなって…」
「………」
「これは俺の単純な疑問だ。」
「たとえ、人間じゃなくても、あいつらには意志があっただろ?」
「それを賭けの対象にして何回も見るってのは…」
「俺は好きではない。でしょ?」
アリスが話を遮る。
しかし、これは俺が正に言おうとしていたことだ。

「あぁ…その通りだ。」
少しの沈黙の時間の後にアリスが話を始める。

「最初は怖かったよ。」
それは俺の予想していた言葉とは無関係のものだった。

俺の予想はこうだ……この世界では当たり前。
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