〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~

乃ノ八乃

文字の大きさ
69 / 172
第二章 エルフのルーコと人間の魔女

第66話 噛み合わない組み合わせと突然の出発

しおりを挟む

 ウィルソンから料理、ノルンから外の世界の言葉の意味や発音を習い始めてから十日が経つ。

 アライアの指導による魔法の練習の合間やウィルソンの手伝いのついでだったりするから少しずつではあるけれど、それでも私はここでの生活にようやく慣れ始めてきた。

「んーっ……さて、今日はどんな練習をするのかなー」

 ぐっと伸びをしてさっそくアライアを呼びにいこうとしたちょうどその時、食堂の方からノルンが手招きしてるのに気付いてそちらの方に足を向ける。

ノルンさん、何の用だろう……。

 いつもの書庫ならともかく食堂に、それも魔法の練習の前に呼ばれるなんて珍しいと思いながらも向かうと、そこにはウィルソンを除く全員が集まっていた。

「――よし、これで全員が集まったね」

 私が入ってきたところでアライアがそう言いながらぐるりと見まわす。

「えっと、これは何の集まりなんですか?それにウィルソンさんもいないし……」
「ウィルソンは買い出しに出掛けてるよ。だからこれで全員……で、集まってもらった要件だけど、それはトーラスとルーコちゃんの事だよ」
「僕と……?」
「私……?」

 何の事か分からず首を傾げる私とトーラス。

 そもそも私とトーラスについての話だというならわざわざ全員を集める必要はない。

 それなのにどうしてだろうと考えていると、すぐにアライアがその理由を口にする。

「そ、ルーコちゃんがここにきてそれなりに経つけど、君達はほとんど話さない。それどころかたまに話したかと思ったらすぐにいがみ合いに発展する……同じパーティとしてそれはいただけない事だと私は思うんだよ」
「は、はぁ……」
「そ、それは……ルーコが変に突っ掛ってくるからで……」
「突っ掛ってるのはバカ兄でしょ……」
「そうね。だいたいはトーラスが変に対抗心を燃やしてるって感じかしら」

 確かにトーラスと会って話すと大体、口論に発展してしまう。

……私にも悪い部分はあったかもしれないけど、いっつもトーラスさんが絡んでくるから仕方ないよね。

 サーニャとノルンの言う通り、私はいつも普通に話しているのに途中からトーラスが挑発するような口調になってそれに乗ってしまい、口論になる。

 もちろん、最初は我慢するんだけど、あまりにしつこく挑発してくるから私もついつい反応して喧嘩腰になってしまう。

「……どっちにしても、いがみ合ってるのは事実。だから私は君達の現状を何とかするためにある提案をしようと思うんだよ」
「提案……?」
「……なぜかしら、物凄く嫌な予感がするわ」

 私とトーラス、そしてサーニャが首を傾げる中、アライアの言わんとしている事を察したのか、ノルンが眉根を寄せて難しい表情を浮かべている。

「ルーコちゃん、トーラス……それにノルン。この三人である魔物の討伐に行ってほしいんだ」

 にっこりと笑顔を浮かべたアライアが私達の方を向いてそう言い放った。


「――はあ……なんで私が……」

 隣で荷物を準備しているノルンが大きなため息を吐きつつ、そう呟く。

 あの後、当然ながら私以外の全員から不満の声が上がった。

 トーラスからは魔物の討伐なら一人で十分だという声が、サーニャからはどうして私は留守番なのかと、そしてノルンからは何で私なのか、と。

 三人からの不満をアライアは手で制し、それぞれの理由を口にした。

 今回の目的はあくまでパーティー内の不和を取り除く事。

 だから当事者の二人が行くのは当然で、ノルンは間に立って仲裁するためのお目付け役、サーニャが留守番なのは彼女がいたら深まる中も深まらないからだそうだ。

 アライアの言葉に最初こそ反論していたが、最終的に全員が折れて私とトーラスとお目付け役のノルンはその魔物討伐に向かう事になったのだった。

「……すいません。私のせいで」
「え……あ、いや、ルーコちゃんが謝る事じゃないわ。私はアライアさんの強引さに怒ってただけだから」

 慌てて否定したノルンは額に手を当て、もう一度ため息を吐いてから言葉を続ける。

「……今回の討伐依頼、元々はアライアさんが知り合いから頼まれたものらしいの。だから今回の付き添いもアライアさん本人が行くべきで、それを私に押し付けたみたいに見えたからちょっと頭にきただけ……決まった以上はきちんとするから安心して」
「……できるだけ迷惑が掛からないように努力します」

 向こうから絡んでくる以上、絶対は約束できないけど、それでも我慢できる限りは私の方で抑えようと決意し、自分の荷物の準備を進めた。


 それぞれの準備が終わり、拠点の裏にある倉庫らしき場所に集まった一同。

 準備が終わったのだからてっきり出発するものだと思っていたけど、どうやらこの倉庫に何かあるらしい。

「えっと、ここに何が……?」
「ん?あ、そっか、ルーコちゃんは知らないんだっけ。まあ、見てればわかるよ」

 一番近くにいたサーニャに尋ねると、そう言って倉庫の方に目を向けた。

「――これを使うのは久し振りだね」

 アライアが倉庫の扉を上に押し上げて開け、中から大きな何かの存在が見えてくる。

何だろう……あれ……。

 見覚えのない物体に首を傾げる私に気付いたのか、アライアがそれについて簡単に説明してくれた。

「これは魔動車まどうしゃといって、名前の通り、魔力を動力にして動く乗り物だよ」
「魔力を……ですか?」

 確かによく見れば四方に車輪のようなものが付いているのが分かる。

 おそらく魔力を込める事であの車輪がそれぞれ動くのだろうけど、どういう仕組みなのかは皆目見当もつかなかった。

「そ、これなら荷物も載せられるし、全員で素早く移動ができるからね」
「でもこれって誰にでも動かせるんですか?」

 仕組みはわからないものの、一見してこれが簡単に動かせそうな代物には見えない。

 それに魔力を込めると言っても、どこにどれくらい込めるという基準もわからないの状態では動かしようがないだろう。

「操作はそこまで難しくないんだけど、合う人と合わない人がいるから一概には言えないかな……あ、でも、トーラスとノルンは運転できるから今回に関しては心配しなくて大丈夫」
「……私も運転できるのに」

 不貞腐れたようにぼそりと呟くサーニャ。

 一度は折れたとはいえ、やはりまだ納得はいってないらしく、不満を漏らしている。

「……次はサーニャも同行させるから今回は我慢して、ね?」
「……分かってますよ」

 アライアからの念押しで流石のサーニャも観念したようでそれ以上は何も言わず、黙々と魔動車へ荷物を運んでいた。


 荷物を載せ終え、後ろの席に私とノルン、前の席にトーラスといった形で乗り込み、窓から顔を覗かせてアライア達の方を向く。

「それじゃあ、頼んだよ。向こうに話は通してあるから。大丈夫、相手はそこそこの魔物だし、三人なら問題ないよ」
「……いってらっしゃい。あのバカに何かされたら帰ってきてから教えて?絶対にやり返すから」

 窓越しにアライアとサーニャの言葉を受け取った私達は二人に見送られながら目的地である村を目指して出発したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。 小説家になろう様で先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n0441ky/

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

辺境の最強魔導師   ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~

日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。 アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。 その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。

処理中です...