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第四章 魔女のルーコと崩壊への序曲
第127話 すっ転ぶ私と進む議論
しおりを挟むアライアに手を引かれるままに庭へとやってきた私は何故かそこで日に当たりながら昼寝をしていたリオーレンを巻き込んで、今できる事の検証を始める事になった。
「さ、ルーコちゃん。ひとまずは普通に魔法を使ってみようか」
見えないから正確な位置は分からないが、たぶん、庭の真ん中あたりに立たされ、アライアからそう促されたけど、このまま魔法を使ったら私は魔力が無くなって倒れてしまう。
だから検証をするのなら普通に魔法を撃つのを後回しにすべきなんじゃと思っていると、まだ半分寝ぼけているらしいリオーレンが大きな欠伸と共にその部分を指摘してくれる。
「ふわぁ……今のルーコサンが普通に魔法を撃ったらその時点で検証が終わっちゃうっスよ。やるんだったら他の事から試さないと」
「……まあ、そうなっちゃうよね。本当に使えないのかまず知りたかったけど、仕方ない。それなら先に色々試そうか」
リオーレンの指摘はアライアも分かっていたようで、あっさりと引き下がり、何から始めるかの思案し始めた。
「ふむ……本当に一回撃ったら終わりなのか?例えば放出を一瞬に抑えてみるとか…………」
「……駄目っスね。そもそも今のルーコサンでは抑える、抑えない以前に放出した瞬間、全部漏れ出てしまうっスよ」
レイズの提案をリオーレンがばっさりと切り捨てる。
まだ実際にやったわけじゃないから何とも言えないが、リオーレン曰く、魔力操作の練度の問題ではないらしいので、私からその部分を改善する事はできない。
「……魔法の放出が駄目なら強化魔法はどう?一応、放出ではあるけど、あれなら身体に纏うものだし、上手くいくんじゃない?」
「強化魔法……確かにそれなら大丈夫かもしれないっスね。事例が事例だけに断言はできないっスけど……」
もしも強化魔法が使えるのならまだ私にも戦う術が残されているという事になる。
魔法使いとは言えないかもしれないけど、それでもそこに僅かながら希望を見出す事ができるだろう。
「……もし強化魔法が使えるならやりようはある。身体に纏う魔法なら少し考えただけでもいくつか思いつくしな」
「だね。それじゃあひとまずはそこから試していこうか……ルーコちゃん、準備はいい?」
「えっと……強化魔法を発動させればいいんですよね?…………いきます」
後遺症を負ってから初めての魔力使用。大丈夫と言われても、もしもの事を考えてしまい、恐怖から全身に緊張が走る。
大丈夫……強化魔法は今まで何度だって使ってきたし、お姉ちゃんとの特訓で身体に染みついてる……だから変に緊張する理由はない――――
大きく息を吐き出して内側から魔力を練り上げ、全身を覆うように巡り渡らせた。
「っ…………できた!」
全身を覆う魔力は淀みがなく、今まで使ってきた強化魔法の感覚となんら変わりはない。これに関しては本当に後遺症があるのだろうかと疑ってしまう程だ。
「やっぱり強化魔法は影響を受けないみたいっスね。これなら問題なさそうっス」
「……それじゃあ、リオーレンのお墨付きをもらったところで、その強化魔法を維持したまま動いてみようか?」
「は、はい…………わぶっ!?」
霞んで周りが見えないため、前へ軽く進み戻るつもりで動いた瞬間、上手く身体を操れずにつんのめって派手にすっ転んでしまった。
「……どうした?何か石にでも躓いたか」
私の醜態に怪訝な顔をするレイズ。まさか何もないところで突然転ぶなんて思わないだろうからその反応は当然なのだが、私としても何があったか理解できず、言葉を返すことができなかった。
「あー……もしかしてっスけど、強化魔法を纏うこと自体に問題はなくても、それを動かす際の感覚が大分違ってるんじゃ…………」
「?どういうことなのリオーレン」
説明を乞われたリオーレンが困ったような顔をして頭をがしがし掻き、大きなため息を吐いて口を開く。
「…………正直、ボクも理屈の方は正確に分かってないのですが、纏うこと自体に問題はないっス。おそらくっスけど、強化魔法を維持、あるいは纏ったまま激しい動きを伴う際の操作難度が跳ね上がってるんじゃないスか?」
「操作難度……か。確かにそれならルーコちゃんが突然、派手にこけた理由にも納得できるね」
「……難度が跳ね上がってっていっても強化魔法だろ?ルーコの魔力操作の練度なら問題ないんじゃないか?」
「いや、それこそルーコサンだから動けたんじゃないスか。卓越した魔力操作があったからこそ纏い、動いて転んだ……たぶん、普通の人がやったら維持するのが手一杯になるんじゃないスかね」
「……そっか、なるほどね…………でも、それは裏を返せばルーコちゃんの技量が上がるないし、慣れれば強化魔法は今まで通りに使えるって事じゃないかな?」
「そうだな……まあ、後は単純に道具で補うって方法もあるだろうが……」
倒れたままの私を他所に議論を続ける三人。いや、確かにこけたのは私だし、痛みはあっても傷自体は擦り剝いただけで大した事ないけど、少しはこちらの事を心配してくれてもいいのではと思ってしまう。
「――――よし、それじゃあ方向性は決まったし、続きを始めようか」
「じゃあまずは俺が……と、いつまで寝てるんだルーコ。今更、こけたくらいなんでもないだろう」
「……相変わらずっスね。言い方ってものがあると思うんスけど」
話がまとまったようで三人がようやくこちらにの方に声を掛けてくる。
「…………別に大丈夫ですよリオーレンさん。いつもの事ですし」
思わず少し拗ねたようにそう言う私にリオーレンは苦笑いを浮かべながら擦り剝いた箇所を簡単に治療してくれた。
「……そのくらいの傷なら放っておいても大丈夫だろうに」
「そういう訳にもいかないっスよ。小さな怪我だってそのままにしてたら大変な事になるんスから」
「まあ、レイズにその手の話はぴんとこないかもね。普段から戦いばかりで傷も絶えないし」
登場した当初からいきなり襲撃を仕掛けてくる人だし、アライアの言葉にも頷ける。
「……よし、治療は終わったな。それじゃあ早速、続きを始めるぞ」
「……続きって何をすればいいんですか?」
治療を終え、リオーレンにお礼を言ってから立ち上がり、何か嫌な予感がする中で尋ね返すと、レイズはにやりと笑い、両の拳をぱきぱき鳴らして答えた。
「――――今からその強化魔法の限界がくるまで俺と殴り合いだ。終わる頃にはたぶん、いつも通りに使えるようになってるだろ」
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