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第五話-2
しおりを挟む「残り湯がありますが湯船はお使いになりますか」
「借りてよければ……」
「はい。それと介助は必要でしょうか」
「えー、と……」
「こういった場合にどこをどう洗えば良いか、お判りで?」
こういった場合って何の話だ!?
もしかして閨事には風呂の入り方みたいな作法やスキルがあるのか。殿下の側近ならそのあたりのスキルは俺よりも上なのだろう。
ここは素直に従っておくべきだろうか。今後のスキル習得にも役立ちそうだし……。
「ウォルフハルド。お前まさか無理矢理犯されたのか?」
「は?違いますが」
「おや違うんですか」
気遣いの欠片もない殿下の問いかけに反射的に答えると、目の前のエルヴェが首を傾げて眼鏡を弄っていた。そして次の瞬間、キラリと硝子の向こうで紫の瞳が煌く。
「では服がここまで乱れているのは何故ですか」
「房中術の修行中だった」
「……ああ、なるほど。だから『無理矢理犯された』のではない、と。殿下の聞き方が悪かったですねそれは」
穏やかな口調で話しながら、エルヴェはタオルと着替えを台に置いて、猫足バスタブに俺を導いた。
汗が冷えて張り付いたシャツを、丁寧に脱がしてくれる。ボタンとベルトの外れた下穿きも脱がされ、肩に掴まるよう促された。
エルヴェの肩に手を置いて、下着も取り払われる。散々舐めしゃぶられて吐精した名残のある性器と、つうっと内股を伝う透明な液体が、二人の視線に晒された。
「身体を洗いましょうか」
「自分で出来なくもない」
「私にやらせてください。……それでは、どこがどうなっているか、教えて下さいますか」
エルヴェは突っ立ったままの殿下に指先で指示を出し、厚めのタオルを取ってこさせる。
オイ殿下だぞいいのかそれ、と横目で見ながら促されてバスタブに入った。
ぬるめの湯が心地良い。フチに新しいタオルが置かれてそこに頭を乗せると、エルヴェが俺の肩に手で湯をかけてくれた。
「アナルが濡れていて気持ち悪い。ペニスも汚れたままで不快だ」
「尿道口やアナルに痛みはないですか?腫れていたりは」
「ない。アナルに入ったのは指と舌だけだ」
「では濡れているというのは……」
「執拗に舐めて唾液を注がれた。……ん、洗い、たい……」
ちゃぷ、とエルヴェの手が湯に入ってきた。袖が肩までめくり上げられて、筋肉質な二の腕が見えていた。
その手はペニスについた汚れを擦り取るように竿を扱いた。亀頭にも大きな手が被せられ、くにゅくにゅと手のひらで刺激される。
俺はぬるま湯の中のゆるい刺激が心地良くて、両足を大きく開いていた。アナルにもくちゅくちゅと指先が入り中の唾液を洗っている。
フレデリックに触れられた時は驚いたが、今のように洗浄目的だと判れば触れられても問題はないようだ。
ふと見ると、オーギュスト殿下がバスタブの向こうで俺達の様子を凝視していた。澄んだ碧玉が熱をもって俺の身体に向けられているのが判る。
何でそんなに見てるんだ?風呂まで着いてくる必要もなかったよな。
「オーギュスト殿下は、実はそれほど先王に似ていません。とくに性格が」
「……ん?」
エルヴェは湯船の中で俺の身体を撫で回しながら、穏やかな口調で話し始めた。
それ、たぶん俺が聞いてはいけないやつじゃないか。撫でられる感触が気持ち良いからこのまま聞いているけども。
「体格には恵まれ剣技については申し分ありません。天才の部類です。しかし、座学などの成績については私の補助があってはじめて上位に至りますし……性格は、迂闊で落ち着きがなく、パニックになると暴走してしまう。もう十七ですが全く直りません」
おいエルヴェ、目の前の殿下がみるみる萎れていくんだが?
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