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二章 王都と精霊術士
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しおりを挟むハッとして見回したら周りにいたはずの精霊術士たちはもう一人も残っていない。
俺は大慌てで馬車から降りて外の様子を観察した。着いた場所は、高い塀に囲まれたお城のようだ。王様が呼んでいるって言ってたし、そうなるよな。
目の前にあるのは塀の途中に作られた通用口のような扉で、精霊術士たちは何か身分証らしきものを衛兵に見せていた。そして一人ずつ魔道具の扉をくぐり中に入っている。
なんだろうアレ。身分証と人が合ってるか調べてるのかな。人に見えず感知されないとはいえ、さすがにあそこにくっついて中に入るのは難しそうだ。
「おい、さっさと歩け!」
馬車から出された師匠は、怒鳴られたり小突かれながら奥へと引っ張られていった。ハラハラしながらその様子を見守っていたら、突然師匠の足が止まる。
「……?」
一瞬、師匠が怪訝そうに辺りを見回し、こちらを向いた。
ビクッと震えた俺はエレンを抱えたまま硬直してしまったけど、よく見たら師匠の目は俺を映してはいなかった。気配だけで何か感知したのなら、やっぱり師匠はすごいな。
「何をしている! 早くすすめ!」
名残惜しくてしばらく師匠の背中を見つめていた俺は、コソコソと移動して先ほどの大通りへ向かうことにした。馬車の停まったお城の外門は、俺が出たと同時に兵士たちに閉められてしまう。ああ、間に合ってよかった。
『ルイス、これからどうするの?』
「王都のことよく知らないから、ひとまず神殿に行こうかな。精霊術士ですって言ったら、神殿はどこでも受け入れてくれるって聞いたことがある」
俺はエレンにかけてもらった術を解いて、そのまま路地裏を駆けた。
広場に出たら誰でもいいから神殿の場所を聞けばいい。信仰の薄い人はいても、神殿がない街なんかないと聞いている。
俺が買い物に行っていた田舎の小さな村だって、神殿の出張所はあった。たまに豊穣の祈りとかでお参りするだけで、精霊術士がそこに来たことは一度もなかったらしいけど。
「よし、がんばろう!」
すぐにしぼみそうになる心を奮い立たせて、俺は拳を握った。
‡
「ルイスちゃん、おはよう~」
今日は気持ちの良い晴天だ。朝、窓を開けると外から明るい声が掛かった。俺は元気いっぱいに返事をして手を振る。
「おはようございます!」
王都について早くも三日が経っていた。
俺は初日に神殿で精霊術士の登録をしたんだけど、そしたらそのまま神殿の宿舎に安価で宿泊できてしまった。路銀なんてほとんどなかったからすごく助かっている。
その宿舎は引退した精霊術士のおばちゃんたちが数人で切り盛りしていて、今日も朝からお掃除中だった。俺の朝一番の仕事は、おばちゃんの手伝いから始まる。
掃除の必要な部屋に次々入って、シーツを外し新しいものに変えた。そして集めた洗濯物を山にして運び、桶で洗って干して、箒で部屋を手早く掃いてゴミを集める。
それだけなのに「仕事が早くて丁寧!」とみんなに褒められた。そして今日もまかないの食事を分けてもらって、朝食にする。
たった数日で俺はおばちゃんたちのお気に入りになってしまい、ここで働かないかと言われるけど、今はちょっと無理なんだと言うしかなかった。
まさか王都で家事能力が役に立つなんて思わなかったな。こんな幸運なこともあるから、努力は無駄にはならないものだよね。本当によかった。
ジリジリと焦る気持ちはあるし、早く師匠を助けに行きたい。だけど、今はそれができない理由があった。
思ったより調べ物の沼が深かったというか、初めて知る事実が多過ぎて、迂闊に動けなくなっちゃったんだ。
俺みたいな落ちこぼれが『精霊術士』なんて名乗るのも申し訳ないんだけど、この資格を得て最初にやったのが図書館に入ることだった。
この国の歴史の本をいくつか開いて、三百年前の戦争やゲニウス師匠の記述を探した。師匠の蔵書にはそういうのがあんまりなかったから、俺には知識が全然足りてないと思ったんだ。
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