孤独な闇魔法使いに聖騎士の溺愛

天城

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九話 紫紺の瞳②




「いや待て、なんか顔面に圧されたが、別に好きとか、言ってきたわけじゃ……」

 誤解するなと頭の中から妄想を追い払う。そもそもライオネルに迫られたからといって男のオレが、なんで動揺する必要がある。女ならまだしも。口付けだって手慣れていたから、本当のライオネルは聖騎士にあるまじき色情魔なのかもしれないし……。
 貴族の間では男を妾にするヤツもいる聞く。ライオネルもその一人としてオレを囲いたいということか? いや貴族の妾なんか針のむしろだろうから嫌だが。

『この目には闇魔法の残滓を取り込んである。君の残したぬくもりを忘れたくなかったから、ネロの色を貰ったんだ』

 さっきのライオネルの言葉が頭の中に再び響いた。あの瞳、オレの魔力を取り込んだせいでアイスブルーから紫に変わったのだと言っていた。
 ライオネルがオレの色をまとっている? そうを考えると急に心臓が跳ねてソワソワと落ち着かなくなって、またベッドにぼすんと顔を伏せた。
 シーツが冷たくて心地良い。違う、これはオレの顔が熱くなってんだ。

「ってか、あいつもしかして用事が終わったらこの部屋に帰って来るのか?」

 見回したところ、部屋にベッドはひとつしかない。でも部屋が貴族仕様なので応接とソファがあるから、オレはあっちで寝ればいいかな。
 もそもそと身体を起こし、さっき被せられたマントを引っ張って移動した。
 ベッドではないが充分に柔らかいソファに横になってマントを被る。ふと、さっきは気付かなかったがマントの布地からわずかにライオネルの匂いがした。
 抱き締められると香る、妙に落ち着くあの柔らかな花の匂いに包まれて、オレは目を閉じた。


 翌朝眩しくて目が覚めると、オレはいつの間にかベッドに運ばれていてマントは跡形も無く消えていた。

      ‡

 ライオネルの屋敷へ戻されたオレは、バージルにこってりと叱られて護衛なしでは外出しないよう言い含められた。
 近くとも馬車を使うこと、出来る限りバージルかライオネルを連れていくことも約束した。まるで貴族の箱入り娘みたいな扱いで全く解せない。

 神殿はあの後、すぐに事件の詳細を発表した。
 命を狙われた大神官は実は今も無事に生きている。
 彼が大神官の地位についてから嫌がらせや脅し、殺害予告が頻繁にきていたため、警戒して住居を移動していたらしい。あの部屋は偽の血と死体に似せた人形で偽装されたものだったという。
 カキアをはじめ皆が騙されて棒立ちになっていたんだから、神官たちがあたりを囲む時間は充分取れただろう。
 殺人未遂の容疑で捕まったのはカキアたちと、例の殴られて運ばれた老人だった。数日中に裁かれ刑が下されるだろうと聞いている。
 あの老人は怪我を治療するため神殿の中に入り、その日のうちに大神官の部屋に忍び込んでいた。もちろん部屋は空で大神官はおらず、老人はすぐに神官たちに取り押さえられた。

 そこで彼が別の街の神殿を任された神官だということが判明し密かな騒ぎとなった。
 神官が殺人未遂で捕まるなんて今までにないことだ。その晩、神官たちは取り押さえた老人の対処に困り、再びライオネルを呼んで指示を仰いだ。
 ライオネルはオレがカキアに連れ去られたことに気付いていて、これを機に罠を張った。そうとは知らずオレたちはまんまと神殿に忍び込んだ……というわけだ。
 別にオレが護衛を連れてても事件は同じようにおきたように思うが、バージルが薄ら寒いような笑みを浮かべて圧をかけてくるので頷いておいた。



「ネロ様へお手紙が届いております」

 あの事件から一週間が経った頃だ。書斎に籠もっていたオレの元にバージルが現れ、大層な封蝋のついた手紙を盆に載せて差し出してきた。
 物を知らないオレでも分かる、皇族の印がしっかり押さた手紙だ。頷くとバージルが目の前で開封し、中身を渡してくれる。
 内容は、闇魔法関連の資料の精査が終わったので皇宮へ来いというものだった。やっとか。
 これは正式な招待の手紙で機密に触れていないので、焼く必要はない。そのままライオネルに持っていってくれ、とバージルに頼んだ。
 その間にオレはメイドを呼んで服の準備をさせる。時刻はまだ昼前だ。今から準備して出れば先日のような日暮れになることはないだろう。いや、それとも泊まりになるか?

「ネロ! 今から皇宮へ行くつもりなのか。私も一緒に」


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