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【続編】ヨルゲンxオラフ
26 氷の守護騎士と蒼天の姫君
今度の部屋は、二階の220号室。奇しくも前回いた部屋の真下だ。
同室の相手は、同じ二年生らしい。ジャン・シュミットという名前を聞いても聞き覚えがなかったので、王都住まいの子じゃない筈だ。
何故俺が断言できるかというと、十二歳の誕生会の時に詰め込んだ王都住まいの同学年の貴族の子どもたちの名前と爵位、それに家の状況や立ち位置などの情報は、今もちゃんと俺の頭の中に入っているからだ。
俺は不器用でとろいけど、記憶力は決して悪いほうじゃない。だから間違いない。じゃなきゃ、夏休みに事前にこれから学ぶ範囲を全て詰め込んでおこうなんて手段は取らなかったし。
とりあえず、どうしても階段が苦手な俺にとって、一階分だけでも減るのはありがたい。一階には食堂や風呂、娯楽室といった施設が固まっているので、何をするにも階段の昇降が必須だからだ。
一段飛ばしや、時には二段飛ばしで階段を上り下りする生徒を見ると、ああいう運動神経がいい子なら三階も四階も苦にならないんだろうな……と羨ましく思う。だけど、ないものねだりをしても仕方ない。とりあえずこれで移動時間が少し減るんだし、と前向きに考えることにした。
いつも通り、手すりを掴みながら慎重に階段を上っていく。だけど前までと手すりの位置が逆なせいで、何度かヒヤリとすることがあった。みんなはどうしてあんなに無頓着に上り下りできるんだろう。不思議で仕方ない。
「ふー……っ」
ようやく階段を上り切り、部屋の前までくる。扉を軽く二回叩くと、すぐに中から「はーい」という男の子の声が聞こえてきた。
ほっとしながら扉を開ける。顔をそろりと突っ込むと、中の様子を窺った。と、すぐに数歩先に立っている男の子と目が合う。男の子は明るい笑みを浮かばせると、俺に顔を向けた。
「あっ、同室の人?」
「あっ、う、うんっ」
「僕、ジャン・シュミット! 一年間よろしくねー!」
「あっ、うんっ、よろしく!」
他意のなさそうな笑顔を向けられたことに安堵して、いつの間にか強張っていた身体から余計な力が抜けていく。よかった……、いい人そうだ!
ジャンは廊下で荷物の整理をしていたらしく、荷物を手にして立っている。ありふれた茶色い髪にこれといって特徴のない普通の顔の持ち主だ。格好よくも醜くもないけど、にこやかに笑う目元が好印象だった。
これまでの一年間、俺は目が眩むような美形と四六時中過ごしてきた。そのせいで、「姿形が凡庸だと周囲がキラキラ輝いて見えないんだ」という妙な気付きを得る。だけど逆に言えば、存在が眩しくなく周囲に溶け込むから、不必要に緊張しないで済むことにも気付いた。ジャンには悪いけど。
ジャンがおかしそうに笑う。
「扉の前に突っ立ってないで、入っておいでよ」
「あっ、うん!」
確かにこの子の言う通りだ。ぎこちないながらも笑顔で頷くと、身体と荷物が通るように扉を大きく開いた。
ジャンが、俺を上から下まで眺める。
「それにしても、まさかあの氷の守護騎士が守る蒼天の姫君と同室になるなんて、思ってもみなかったよ」
「は? 氷の守護騎士? 蒼天の姫君?」
聞き捨てならないおかしな名前を耳にして、思わず問い返した。ジャンが意外そうに聞き返す。
「え、知らないの? ヨルゲン・アモリムはあの見た目でしょ? で、君以外とは必要がない限り一切喋らないし笑わないから、通称氷の守護騎士」
説明されれば納得しかなかったので、これには頷いた。
「それで、君はそのすごく青い瞳から、蒼天の姫君って言われてるんだよ」
「ま、待ってよ……なんで姫君?」
蒼天は百歩譲ってまあいいとしても、姫君はいくらなんでもない。驚きながら尋ねると、ジャンはアハアハと明るく笑いつつ教えてくれた。
「ええ? だって君が喧嘩を売ってるのに、ヨルゲンは一切買わないで甲斐甲斐しく尽くしてるだろ? だから力関係から見て、君が姫のほうだよねって」
「ええ……っ、俺、別に喧嘩を売ってるつもりは……っ」
「そうなの? でも、いつも君が怒る声しか聞こえないからさ」
ヨルゲンがなんでも先回りしてやろうとするのを「自分でやるってば!」と抵抗しているのが、まさか俺から喧嘩を売っているように周りに見えていたなんて……! でも言われてみれば確かに、俺が一方的に喚いているかもしれない。く……っ、なんか悔しい……!
「そ、それは……。でも……姫って女じゃないかっ」
すると、ジャンが何を言っているんだとばかりに言った。
「だって君、王子って感じじゃないだろ? ドジっ子っぷりが妹系だよな、だったら跳ねっ返りなお姫様だな、それで蒼天の姫君」
「は……」
え、俺、ドジっ子扱いされているのか? それに跳ねっ返りって……俺、真面目にやってるのに……!
先程から衝撃の内容を連続して聞かされているせいで、情報の処理が追いつかない。
ぽかんとしながらジャンを見ていると、ジャンが一歩俺のほうに近付いてきた。興味津々といった様子で、俺の目を覗き込んでくる。
「わあ……近くで見ると本当にきれいだね、君の目」
「え? あ、ありがと……?」
ジャンが更に顔を近付けてきた。
「な、もっとよく見せてよ。ヨルゲン・アモリムの守りが堅くて君に近寄れなかったから、みんな興味津々なんだよね」
「え? ま、まあ、別にいいけ――」
言いかけた、次の瞬間だった。突然腰に何かが巻き付いてきたかと思ったら、足が宙に浮いたじゃないか。
え――?
「駄目だ」
低い、聞き慣れた男の声が真後ろから聞こえてくる。
え、どうしてここに――?
目を見開きながら振り返ると、険しい薄い水色の瞳と目が合った。
同室の相手は、同じ二年生らしい。ジャン・シュミットという名前を聞いても聞き覚えがなかったので、王都住まいの子じゃない筈だ。
何故俺が断言できるかというと、十二歳の誕生会の時に詰め込んだ王都住まいの同学年の貴族の子どもたちの名前と爵位、それに家の状況や立ち位置などの情報は、今もちゃんと俺の頭の中に入っているからだ。
俺は不器用でとろいけど、記憶力は決して悪いほうじゃない。だから間違いない。じゃなきゃ、夏休みに事前にこれから学ぶ範囲を全て詰め込んでおこうなんて手段は取らなかったし。
とりあえず、どうしても階段が苦手な俺にとって、一階分だけでも減るのはありがたい。一階には食堂や風呂、娯楽室といった施設が固まっているので、何をするにも階段の昇降が必須だからだ。
一段飛ばしや、時には二段飛ばしで階段を上り下りする生徒を見ると、ああいう運動神経がいい子なら三階も四階も苦にならないんだろうな……と羨ましく思う。だけど、ないものねだりをしても仕方ない。とりあえずこれで移動時間が少し減るんだし、と前向きに考えることにした。
いつも通り、手すりを掴みながら慎重に階段を上っていく。だけど前までと手すりの位置が逆なせいで、何度かヒヤリとすることがあった。みんなはどうしてあんなに無頓着に上り下りできるんだろう。不思議で仕方ない。
「ふー……っ」
ようやく階段を上り切り、部屋の前までくる。扉を軽く二回叩くと、すぐに中から「はーい」という男の子の声が聞こえてきた。
ほっとしながら扉を開ける。顔をそろりと突っ込むと、中の様子を窺った。と、すぐに数歩先に立っている男の子と目が合う。男の子は明るい笑みを浮かばせると、俺に顔を向けた。
「あっ、同室の人?」
「あっ、う、うんっ」
「僕、ジャン・シュミット! 一年間よろしくねー!」
「あっ、うんっ、よろしく!」
他意のなさそうな笑顔を向けられたことに安堵して、いつの間にか強張っていた身体から余計な力が抜けていく。よかった……、いい人そうだ!
ジャンは廊下で荷物の整理をしていたらしく、荷物を手にして立っている。ありふれた茶色い髪にこれといって特徴のない普通の顔の持ち主だ。格好よくも醜くもないけど、にこやかに笑う目元が好印象だった。
これまでの一年間、俺は目が眩むような美形と四六時中過ごしてきた。そのせいで、「姿形が凡庸だと周囲がキラキラ輝いて見えないんだ」という妙な気付きを得る。だけど逆に言えば、存在が眩しくなく周囲に溶け込むから、不必要に緊張しないで済むことにも気付いた。ジャンには悪いけど。
ジャンがおかしそうに笑う。
「扉の前に突っ立ってないで、入っておいでよ」
「あっ、うん!」
確かにこの子の言う通りだ。ぎこちないながらも笑顔で頷くと、身体と荷物が通るように扉を大きく開いた。
ジャンが、俺を上から下まで眺める。
「それにしても、まさかあの氷の守護騎士が守る蒼天の姫君と同室になるなんて、思ってもみなかったよ」
「は? 氷の守護騎士? 蒼天の姫君?」
聞き捨てならないおかしな名前を耳にして、思わず問い返した。ジャンが意外そうに聞き返す。
「え、知らないの? ヨルゲン・アモリムはあの見た目でしょ? で、君以外とは必要がない限り一切喋らないし笑わないから、通称氷の守護騎士」
説明されれば納得しかなかったので、これには頷いた。
「それで、君はそのすごく青い瞳から、蒼天の姫君って言われてるんだよ」
「ま、待ってよ……なんで姫君?」
蒼天は百歩譲ってまあいいとしても、姫君はいくらなんでもない。驚きながら尋ねると、ジャンはアハアハと明るく笑いつつ教えてくれた。
「ええ? だって君が喧嘩を売ってるのに、ヨルゲンは一切買わないで甲斐甲斐しく尽くしてるだろ? だから力関係から見て、君が姫のほうだよねって」
「ええ……っ、俺、別に喧嘩を売ってるつもりは……っ」
「そうなの? でも、いつも君が怒る声しか聞こえないからさ」
ヨルゲンがなんでも先回りしてやろうとするのを「自分でやるってば!」と抵抗しているのが、まさか俺から喧嘩を売っているように周りに見えていたなんて……! でも言われてみれば確かに、俺が一方的に喚いているかもしれない。く……っ、なんか悔しい……!
「そ、それは……。でも……姫って女じゃないかっ」
すると、ジャンが何を言っているんだとばかりに言った。
「だって君、王子って感じじゃないだろ? ドジっ子っぷりが妹系だよな、だったら跳ねっ返りなお姫様だな、それで蒼天の姫君」
「は……」
え、俺、ドジっ子扱いされているのか? それに跳ねっ返りって……俺、真面目にやってるのに……!
先程から衝撃の内容を連続して聞かされているせいで、情報の処理が追いつかない。
ぽかんとしながらジャンを見ていると、ジャンが一歩俺のほうに近付いてきた。興味津々といった様子で、俺の目を覗き込んでくる。
「わあ……近くで見ると本当にきれいだね、君の目」
「え? あ、ありがと……?」
ジャンが更に顔を近付けてきた。
「な、もっとよく見せてよ。ヨルゲン・アモリムの守りが堅くて君に近寄れなかったから、みんな興味津々なんだよね」
「え? ま、まあ、別にいいけ――」
言いかけた、次の瞬間だった。突然腰に何かが巻き付いてきたかと思ったら、足が宙に浮いたじゃないか。
え――?
「駄目だ」
低い、聞き慣れた男の声が真後ろから聞こえてくる。
え、どうしてここに――?
目を見開きながら振り返ると、険しい薄い水色の瞳と目が合った。
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