宝珠の神子は優しい狼とスローライフを送りたい

緑虫

文字の大きさ
43 / 46

43 グイードの生い立ち

しおりを挟む
「オレは……狼族の頭領の家系に生まれた。父親が、複数ある群れを統率する立場にあるんだ」

 グイードの話によると、狼族には年々人化できない者が増えていたそうだ。グイードのお父さんとお母さんは、人化できた。その為二人は狼族の中から選ばれて、番いになった。人化できる者同士からは、人化できる子供が生まれる可能性がそれ以外と比べて高いんだって。

 どの種族も生まれた時は獣の姿を取っていて、ある程度大きくなってくると人化できるようになってくる。狼族の人化が始まる時期は幼児から少年に成長する時期だそうで、生まれた時から他よりも身体が大きく、中には保有してない者も多い魔力も持って生まれたグイードは、幼い頃から両親の期待を背負って育った。

 最初に自己紹介をし合った時にグイードが教えてくれた、グイードの名前の意味。『導く者』というのは、いずれ狼族の頭領の座を受け継ぐ者、という願いが込められていたんだそうだ。神子降臨の年が近付いていたこともあり、これまでのどの跡継ぎ候補よりもプレッシャーは大きかったのかもしれない。

 実際、グイードは「狼族の繁栄の為」、人化したら帝都に行き、神子の番い候補として騎士団所属となる話も水面下で進んでいたらしい。

 だけどグイードは、一向に人化できなかった。後から生まれた弟たちが人化し始めて、グイードは焦った。だけど、どうやっても駄目で、段々と父親から向けられる目が期待から失望に変わっていくのを恐ろしく感じていた。

 そしてとうとう、年の離れた末っ子が人化した時――、グイードは群れから追い出されたんだ。「好きに生きろ」と言われて。帝都には、人化できる弟が代わりに行くことになった。

 グイードは絶望した。期待を一身に背負って生きてきたグイードにとって、群れから追い出されることは自分を支えていた全てを失ったのと同じ意味を持っていたんだ。

 そこからは、彼が俺に語った通り。グイードは、ただ時間を重ねていった。何も楽しくないし、未来への希望もない。死んではいない、ただそれだけの無為な日々。勝手に期待されて、グイードの努力ではどうしようもない理由で放り出されて。

 グイードは「一族の頭領としての立場があったのは頭では分かってる」って言ってたけど、感情では納得できてないってことだろ。

 これからは俺がずっと傍にいるから。そういうつもりで、グイードに巻き付けていた腕に力を込めた。

「そっか……そういうことだったんだね」
「ヨウタが神子だと気付いた時、オレは……ヨウタを愛しているとはっきり認識したと同時に、オレはヨウタの番いにはなれないのだと気付き絶望した」
「グイード……?」

 グイードが、寂しそうな笑顔になる。

「人化できないオレでは、神子の番いにはなれないだろう。ヨウタがただの変種の猿であればよかったのにと、あの時どれほど思ったことか」
「変種の猿って言葉、好きだよね」
「その頃のオレの願いが込められてるからな」

 うそぶくグイードが、愛おしい。でもそうか、だからグイードは鋼の精神で俺に手を出してこようとしなかったんだ。俺が毎日大好きだって身体中を触りまくっても、俺の為だからって歯を食いしばりながら耐えてくれていたんだ。

 どこまでも優しくて強いグイード。俺の番いは、世界一格好いい。でも我慢しすぎるところが玉に瑕だと思うけどな。

「……話してくれてありがとうな、グイード」

 グイードの顔を両手で挟んで伝えると、グイードが鼻先を俺の鼻に擦り付けてきた。グイードが俺に甘える時の仕草だ。言葉で「愛してる」と伝えられなかったグイードの、精一杯の愛情表現。

「――俺、グイードには心から笑っていてほしい」
「それはオレがヨウタに思っていることだぞ」

 どちらからともなく微笑み合うと、もう一度唇をそっと重ねた。ゆっくりと顔を離したグイードが、突然「あ」と言う。

「どうしたの?」
「抜けそうだ」

 グイードはそう言うと、突然俺の腰を掴んでズルズルと長物を抜き始めたじゃないか。通り過ぎる時にグイードが俺の腹の途中にあるいいところを擦っていくもんだから、思わず「アッ」なんて甘ったるい声が漏れてしまった。

 ずるりと抜け出たグイードの柔らかくなった陰茎が、てらてらと赤黒くてかっている。うん、抜けた後も大きい。俺の中にある時は、一体どれくらいの大きさだったんだろう。見たいような、見たくないような。

「出たな」
「う、うん……っ」

 感じてしまっていた俺の穴が、「ごぷっ」と音を立てて余ったグイードの愛液を吐き出した。ひえっ、恥ずかしい!

 たらりと垂れて下に伝い落ちていく様をじっと目で追っていたグイードが、舌舐めずりをする。

「孕むまで、これから毎日しないとだな」
「お、お手柔らかに……」

 グイードは思っていたよりも独占欲が強いのかもな、と思わずきゅんきゅん胸をときめかせてしまった俺だった。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる

おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。 知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました

BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」 え?勇者って誰のこと? 突如勇者として召喚された俺。 いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう? 俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

乙女ゲームの世界に転移したら、推しではない王子に溺愛されています

砂月美乃
恋愛
繭(まゆ)、26歳。気がついたら、乙女ゲームのヒロイン、フェリシア(17歳)になっていた。そして横には、超絶イケメン王子のリュシアンが……。推しでもないリュシアンに、ひょんなことからベタベタにに溺愛されまくることになるお話です。 「ヒミツの恋愛遊戯」シリーズその①、リュシアン編です。 ムーンライトノベルズさんにも投稿しています。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

処理中です...