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中学生、異世界転生する
0) ダンジョンに響く軽快なファンファーレ
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たったったった……
ダンジョンの中に、軽い足音が響く。
トンッと床を蹴り宙を舞うと、次いで土に苔の生えた壁を蹴った少年は、右手に、刃を下にして握った細いナイフを振りかざすと、刃の先に埋め込んだ夜行石が放つ閃光が大きく弧を描きながら、目の前にいる魔物の体を大きく切り裂いた。
声ではない、短い音の断末魔。
真っ二つになった体から噴き出す体液を浴びないように、注意深く、くるくると回転しながら後ろに飛び退ると、トン、と上手に床に降り立った。
「ふぅ」
倒したばかりの魔物が目の前でボロボロと崩れていく。
ナイフを鞘に入れ、じっとそれを待っていると、崩れ落ちて消えた魔物の遺骸のあった場所には、つやつやの銅貨1枚と、手のひらにちょこんと乗るくらいの小さな袋が落ちていた。
「やった! 傷薬も落とした」
トントン、とそこに近づき、しゃがんでそれに手を伸ばす。
「なんで魔物がアイテムとか金とか持ってるんだろうな?」
それは確かに教わった通りなのだが、どうにも不思議に思え、それをつまみ、拾い上げながらつぶやいた時だった。
ちゃららららん、ちゃんちゃんちゃ~ん♪♪
薄暗いダンジョンに不釣り合いの、軽快な祝福の金管楽器の音とともに、少年の右手につけられた木の腕輪から、しゅるしゅると伸びた細い枝が、くるんと目の前で丸い形をとると、スマホの液晶のように、難解字と数字を映し出した。
これがいわゆるこの世界の個人情報確認画面という奴で、それを覗き込んだ少年は、ぐっとこぶしを握った。
「あ……やっt 『わあ! やっとレベルが上がったね! おめでと~!』
腕輪の主である少年の言葉を遮るように、パチパチパチ! と力いっぱい拍手する音とともに、のんきで明るい女の声がダンジョン内に響き渡る。
その声と拍手を聞き、心底嫌そうに顔を顰めた少年は、噛みつくような勢いで、背後にいるとだろうと思しき、声と拍手の主の方を振り返った。
「うるさいなぁ! 解って『カヲル! 危ない!』
振り返った、カヲルと呼ばれた少年の顔の横すれすれに、目にも止まらう速さで銀色の閃光が走る。
バチーーーン!
柔らかい何かに平手を打ちつける音と、複数の金と荷物の劣る音。
そして。
ちゃららららん、ちゃんちゃんちゃ~ん♪♪
と、再びダンジョン内に軽快な祝福の音色が鳴り響いた。
しかもに連続で。
少年が出しっぱなしにしていた個人情報確認画面に表示されていた数字が変わっていくのを苦虫を潰したような顔で見た少年は、深い深~い怒りのこもったため息をつきながらゆっくりと振り返る。
そこには先ほど少年が倒したのと同じ形で柄付き色違い、つまりはスリーランク上のスライムが1体が、ボロボロと崩れおち、銅貨10と先ほどと色違いの小袋を落とした後だった。
「……またか」
『もう! 危ないよ!』
もう一度深い溜息をついた時、カヲルの頭上からのんきで軽い声がふってきた。
『今のはとっても危なかったよ! 初心者用の試練のダンジョンとはいえ、こういう場所は常に危険と隣り合わせだから、気を抜かず、周りを確認しなさいっていつも言ってるよね? あ、でもレベル上がったね! わ~い、おめでと~』
パチパチパチパチパチパチ……。
能天気な女性の声と拍手の音に、ぎりぃっ! と少年の歯が軋んだ。
「……っるっさいなぁ! そんなことわかってるよっ! 少し黙っててよっ!」
明るめの声で女性の声を出すモノに、少年は叫んだ。
「母さん!」
『……あ、ごめ~ん』
少年の切実な怒りの悲鳴に『母さん』と呼ばれた、顔が3つ、手が3対の異形の存在は、きょとんとした顔をしてから、3対ある両手を全て器用に合わせ、眦を下げて謝った。
ダンジョンの中に、軽い足音が響く。
トンッと床を蹴り宙を舞うと、次いで土に苔の生えた壁を蹴った少年は、右手に、刃を下にして握った細いナイフを振りかざすと、刃の先に埋め込んだ夜行石が放つ閃光が大きく弧を描きながら、目の前にいる魔物の体を大きく切り裂いた。
声ではない、短い音の断末魔。
真っ二つになった体から噴き出す体液を浴びないように、注意深く、くるくると回転しながら後ろに飛び退ると、トン、と上手に床に降り立った。
「ふぅ」
倒したばかりの魔物が目の前でボロボロと崩れていく。
ナイフを鞘に入れ、じっとそれを待っていると、崩れ落ちて消えた魔物の遺骸のあった場所には、つやつやの銅貨1枚と、手のひらにちょこんと乗るくらいの小さな袋が落ちていた。
「やった! 傷薬も落とした」
トントン、とそこに近づき、しゃがんでそれに手を伸ばす。
「なんで魔物がアイテムとか金とか持ってるんだろうな?」
それは確かに教わった通りなのだが、どうにも不思議に思え、それをつまみ、拾い上げながらつぶやいた時だった。
ちゃららららん、ちゃんちゃんちゃ~ん♪♪
薄暗いダンジョンに不釣り合いの、軽快な祝福の金管楽器の音とともに、少年の右手につけられた木の腕輪から、しゅるしゅると伸びた細い枝が、くるんと目の前で丸い形をとると、スマホの液晶のように、難解字と数字を映し出した。
これがいわゆるこの世界の個人情報確認画面という奴で、それを覗き込んだ少年は、ぐっとこぶしを握った。
「あ……やっt 『わあ! やっとレベルが上がったね! おめでと~!』
腕輪の主である少年の言葉を遮るように、パチパチパチ! と力いっぱい拍手する音とともに、のんきで明るい女の声がダンジョン内に響き渡る。
その声と拍手を聞き、心底嫌そうに顔を顰めた少年は、噛みつくような勢いで、背後にいるとだろうと思しき、声と拍手の主の方を振り返った。
「うるさいなぁ! 解って『カヲル! 危ない!』
振り返った、カヲルと呼ばれた少年の顔の横すれすれに、目にも止まらう速さで銀色の閃光が走る。
バチーーーン!
柔らかい何かに平手を打ちつける音と、複数の金と荷物の劣る音。
そして。
ちゃららららん、ちゃんちゃんちゃ~ん♪♪
と、再びダンジョン内に軽快な祝福の音色が鳴り響いた。
しかもに連続で。
少年が出しっぱなしにしていた個人情報確認画面に表示されていた数字が変わっていくのを苦虫を潰したような顔で見た少年は、深い深~い怒りのこもったため息をつきながらゆっくりと振り返る。
そこには先ほど少年が倒したのと同じ形で柄付き色違い、つまりはスリーランク上のスライムが1体が、ボロボロと崩れおち、銅貨10と先ほどと色違いの小袋を落とした後だった。
「……またか」
『もう! 危ないよ!』
もう一度深い溜息をついた時、カヲルの頭上からのんきで軽い声がふってきた。
『今のはとっても危なかったよ! 初心者用の試練のダンジョンとはいえ、こういう場所は常に危険と隣り合わせだから、気を抜かず、周りを確認しなさいっていつも言ってるよね? あ、でもレベル上がったね! わ~い、おめでと~』
パチパチパチパチパチパチ……。
能天気な女性の声と拍手の音に、ぎりぃっ! と少年の歯が軋んだ。
「……っるっさいなぁ! そんなことわかってるよっ! 少し黙っててよっ!」
明るめの声で女性の声を出すモノに、少年は叫んだ。
「母さん!」
『……あ、ごめ~ん』
少年の切実な怒りの悲鳴に『母さん』と呼ばれた、顔が3つ、手が3対の異形の存在は、きょとんとした顔をしてから、3対ある両手を全て器用に合わせ、眦を下げて謝った。
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