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プロローグ
求人
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三百六十六円。何度数えてみても変わらない。
平日の真昼間。それでも日当たりが悪く薄暗い部屋。洗濯機はもう何日回していないだろう。ベッドに敷きっぱなしの蒲団、その場限りを食い繋ぐためのレトルト食品。まあまあ悲惨な、しかしどこにでもいる貧乏学生の日常風景だ。
いや、小学生の小遣いじゃないんだから! なんて突っ込んでみても、全財産が増えるはずもなく。腹が満たされていれば気力もわく。気力があれば大学へも行ける。しかし今日は何ひとつ叶えられず、俺はベッドに倒れ伏した。進学が決まり、単身上京することになったとき、少しは良いものを持とうと奮発して買った財布だけが輝いている。この荒れた部屋の中で。といっても、俺なんかはマシな方なんだろう。
電気、水道、ガス。まだ使えている。督促状を見た気はするけれど。たぶん温情で期日が伸びていて、それがいつのことなのか確認できていない。見たくもない。ネットはついに昨日止まった。とはいえ、これはどうにでもなる。
俺はきっと、電気や水道よりもスマホの料金の方を優先するだろう。学生にとってはこちらの方が死活問題。ここに住み始めて四年。おかげさまで、留年もせず無事に大学四年生となった。おかげさまって誰に対してだよ、って感じだが。親からの仕送りなんて届いたことはなく、バイト中のrを代返してくれる友人もなく――まあ、これは俺の信条に反するので、頼めたとしても頼まないのだが――破れかぶれでここまで生きております。奇跡的に。いったい誰のおかげさまなのだろう。しかしいよいよ危機に瀕した。三百六十六円でもメシは食えるが、明日の分の保証はない。
「……とりあえず、行くか」
もう動けないと思ったが、ネットが使えないというのは大きかった。通信制限のせいで動画も画像もろくに閲覧できない。ひとまず大学へ向かえばWi-Fiが使えるから、そこで求人でも探そう。志だけは高く持って部屋を出た。とはいえ飛び入りで雇ってくれるところなんてないだろうし、働けたとしてもすぐに収入になるわけではない。だらだらと配信動画でも見て過ごすんだろうな、という予感が大きく膨らんでいた。
大学にしては機能特化の外見で、オシャレとは言いがたい我らが学び舎。しかし通っている学生たちはそこそこ尖っている。派手髪ピアスは当たり前で、まれに坊主頭の女学生だとかを見かけてギョッとすることも。いわゆるバズカットというやつなのだろう。きっと似合っている……と思う。俺にはよく分からん。でも、どんな髪型も服装も、自ら望んでそうしている姿はキラキラと輝いている。
腹が減ったら急に不機嫌になる奴がいるけれど、俺はそうならないタイプみたいだ。貴重な長所のひとつだと思う。妙に落ち着いた気持ちで歩みを進めることができた。体育館裏のコモンスペースなら、ほどよく空いていてちょうどいいかな。イヤホンをしてスマホをいじるだけなので、環境なんて気にする必要もないのだけれど。四方へ道の広がる分岐点に立ち、えいやっと足を踏み出した。学食とは反対方向。今日は絶対に立ち寄らんぞ。三百円でカレーにありつけるものの、いよいよそれで後がなくなるのだから。
人通りはどんどん少なくなっていく。それに反比例するように、事務的な掲示物が増えていく。本当に重要な連絡は学生のアドレスに一斉送信されるが、そこまででもないつまらない情報は、こういった場所に追いやられるのだ。目立つ場所にはサークル勧誘や楽しいイベントの告知。学生支援課からの案内は日陰のすみっこだ。
とはいえ、必要ならばここに来ればいいだけなので、嘆かわしいとも思わない。奨学金の案内。留学制度の紹介。インターンの募集。そして、大学公認のアルバイト。どれも、喧騒の波に呑まれてはならない情報だ。
掲示を眺めながら足を進め、ベンチのあるスペースに到着した。何気なく顔を上げてあたりを見渡すと、レンガ造りの時計台が視界に入る。よく似た形のものが北と南に一棟ずつあり、キャンパスのどこにいても時刻が分かるので便利だった。
その時計は現在一時を指している。もう午後なのか。ぼんやりしている場合ではない。俺は掲示物へと視線を戻した。
条件の合う仕事がすぐに見つかるなんて思っていない。とりあえず、端から順番に目を通していく。ほとんどフィールドワークのようなしょっぱい報酬のものや、高度な資格を要求されるもの。俺なんかが志望しても門前払いされそうなもの。学生のために本部が厳選した募集――といえば聞こえは良いが、こちらの足元を見ているものも多くある。大学の看板を背負って来るからにはこのくらいできるよね、とでも言いたげだ。
スマホの画面をスワイプするイメージで情報を流し込む。これも駄目、あれも駄目。どうせどれも駄目。そんなこんなで掲示板の端までたどり着いたとき、最後の募集が目に留まった。
「お、これは……」
映像編集の仕事。時給制で、支払い日は可能な限り要望に応じるとのこと。つまり即日もらえる可能性があるのだ。フレックス制度を導入しており、ほぼ二十四時間どんなタイミングでも出社できる、というのも魅力的だった。学生の本分は勉強だものな。もっともらしい言葉が頭に浮かぶ。ついさっきまで登校すら諦めようとしていたくせに。
「募集元はどこだ?」
掲示に目を凝らす。いくら好条件でも怪しいところだったら意味がない。まあ、大学公認なので大丈夫だとは思うが。紙面は堅苦しい雰囲気のレイアウトになっており、他の募集のように人目をひこうとする気概が感じられなかった。白い背景に黒い文字。重要な部分だけが太字になっている。カラーはほとんど使われていないが、ただ一ヶ所だけ鮮やかな赤色が見えた。
「学習支援サイト、アラクネ……?」
社名に添えられたロゴの部分だ。クモの姿をシルエット化したイラストに、英語で綴ったArachneという文字が組み合わされている。アラクネって、ギリシャ神話の登場人物だっけ? 機織りの名手だったが、神の怒りを買ってクモに変えられた女性。そういえばクモって赤のイメージがある。運命の赤い糸からの連想だろうか。
学習支援サイト・アラクネは、俺にとって「名前は聞いたことがある」程度の認識だった。三、四年ほど前から耳にするようになった組織で、中高生の勉強を支援するためのサイトを運営しているらしい。義務教育の範囲から難関大学の入試問題まで、何でも無料で解説してしまうので、塾の営業妨害だと騒がれたこともあったような。その頃、俺自身は受験が済んでいて、お世話になる機会はなかった。今の子供たちにとっては助かる存在だろうな、と考える。
事業内容からして真面目だし、バイトをこき使うこともなさそうだ。
しかし、俺にとってはひとつだけ不安要素があった。
「確かここって、すっごい高学歴の人ばっかりなんだよなぁ……」
スマホを取り出し、アラクネの公式サイトを確認した。あったあった、スタッフの紹介ページ。彼らの扱うコンテンツは大きく分けて二種類あり、ひとつはウェブサイト、もうひとつはYouTubeだ。関わっているスタッフたちもざっくりと分けて紹介されている。まずはサイトの記事を書いたライターたちを確認したが、層々たるプロフィールの持ち主ばかりだった。
「ほらぁ、トウキ大とかケイト大ばっかりじゃん」
我が国のツートップを誇る難関大学だ。どちらかに受かれば勝ち組確定、その後の一生はバラ色――俺なんかはそう認識している。もちろん縁のない話なので、指をくわえてその経歴を眺めるだけだ。もちろん全員がこの二校に集まっているわけではないが、見渡す限りは名の通った大学ばかりが記されていた。
「動画に出ている人たちの方はどうだっけ」
最初は文字と画像だけのサイトを運営していたアラクネだが、YouTubeに進出するまでさほど時間はかからなかった。勉強の解説をするなら、チャンネルを持っていた方が便利なのは間違いない。そこで活躍をしているスタッフたちもまた、写真と共に紹介されていた。
アラクネでは「幹部」と呼んでいるらしい、五名の講師陣。英語・数学・国語・理科・社会といった主要科目にひとりずつ担当がおり、バストショットの写真とプロフィールが載っていた。勉強に不安を抱える子供たちを励ますかのように、優しくも自信に満ちた表情を浮かべている。
「やっぱりこっちもすごいな。英語担当なんて帰国子女だし……」
五名の講師陣のうち二名がトウキ大、一名がケイト大の出身だと記されていた。あとのふたりは学歴非公開だが、教える側に立っている時点で想像はつく。通っていた学校こそ分からないが、取得している資格や経歴を見れば、頭の良さなんて明らかだし。
スマホから視線を上げ、溜め息をつく。情けない話だが、俺の通っている大学は視界にも入っていないだろう。住んでいる世界が違う。幹部メンバーも、交代制で記事を書いているライターたちも、当たり前のように高学歴なのだ。この中に混ざって馴染める自信がない。
今回は引き下がろうか、と考えたとき。腹の虫が大きく鳴いた。
「とはいえ、金は必要だもんな……」
ええい、空腹には耐えられない。ただのバイトだ。映像編集の仕事だ。勉強ができるかどうかなんて関係ないじゃないか。お高くとまりやがって――八つ当たりに近い感情に突き動かされ、俺は決断する。ここに応募しよう。ふさわしくなかったら向こうから断られるだけだ。
映像編集というのは、YouTubeに投稿している解説動画に関する作業だろう。切って繋げて、セリフにテロップを入れたりして。そのくらいなら俺にだってできる。むしろ得意分野だ。
ポスターには「電話かメールでご連絡ください」と書かれていた。こういうのは思い切りが大事だから、電話で申し込むことにする。メールだと文面を考えている間に決意がしぼんでしまいそうだ。先ほどまでサイトを閲覧していたスマホを使い、番号を打ち込んで電話を掛ける。コール音が二回だけ響いてすぐに繋がった。
「はい、株式会社アラクネです」
若い女性の声が聞こえる。アラクネがサイトの名称であると同時に、独立した企業でもあることを思い出した。他の配信者のように個人事業主としてやっているわけではない。れっきとした株式会社だ。俺は今から、ここに雇ってもらうつもりなのだ。少しでも真面目な印象を与えるよう、声色や口調を意識しながら要件を伝えた。
電話口ではきはきと相槌を返してくれた女性は、俺の予定が空いている日を尋ねた。面接のセッティングだ。とりあえず面接までは漕ぎつけたのだ。
「いつでも構いません。その、何なら今からでも」
自分でもなぜそう言ってしまったのか分からない。講義はどうした。学生なんだから、いつでもいいわけがないだろう。しかも今からだなんて、準備もできていないのに。だが言ってしまったものは仕方がない。電話はしばらく保留され、裏で何やら相談している気配を感じた。再び電話が繋がったとき、通話相手は別の女性に代わっていた。
「それでは本日の十七時頃、オフィスまでお越しください」
先ほどの女性よりずっと毅然とした声が告げる。場所の確認や、移動手段について話したあとに通話は切れた。俺は北の時計台を見上げる。まだ時間はあるが、決して暇ではない。やるべきことはたくさんあった。
「まずは履歴書だよな……」
呟きながら立ち上がる。大学のロゴ入りのものを購買部で買えるが、パソコンルームで印刷をすれば無料だ。証明写真は以前に撮ったものが財布に入っている。何でも財布に突っ込んでしまうのが悪い癖だが、今回ばかりは助かった。これが無ければ自宅まで取りに戻る必要があった。空腹の身で無駄な体力を使いたくない。
就職支援課でペンとスティック糊を借り、履歴書を完成させる。証明写真の中の俺は、長い黒髪を縛って右肩に流していた。日雇いのイベントスタッフとして働くために撮ったので、こんな容姿でも構わないと思ったのだ。そして目下の問題は、現在も俺は長髪のままだということだった。
「いや、まぁ……編集担当だし……うーん」
場違いではあるだろうが、切るべきというほどでもないはず。清潔感さえあれば大丈夫だ、と自分に言い聞かせる。これも個性。駄目ならお祈りされるだけ。クリアファイルに履歴書をしまい、再び体育館裏のベンチに腰を落ち着ける。
さて、あとは予習勉強だ。こっちの方が見た目よりも大切な要素だろう。これから面接を受ける企業のことを、ろくに知らないというわけにはいかない。俺はアラクネのYouTubeチャンネルを開いた。
ざっと眺めたところ、どの動画も長尺だ。学校の講義と同じような構成で撮っているからだろう。ひとつの動画が三、四十分ほどある。短い動画もあるものの、他のチャンネルとのコラボだったり、息抜き的な動画だったりと、毛色が異なっていた。
ひとまず、長尺の方をかいつまんで視聴するのが良いだろう。科目ごとにアーカイブされているそれを数学から再生した。
担当しているのは、いかにも真面目そうな女性講師だった。非常に分かりやすい解説だが、ユーモアを交えることはない。その一方で、学ぶ意思を持つ者は決して見捨てないという、執念らしきものを感じた。使える定理や公式を全てさらけ出し、何の手掛かりもないように見える問題を解いていく。
動画をひとつ見終えた頃、構内のチャイムが鳴った。大学の講義は九十分制で、この動画は四十分――たまたまタイミングが重なっただけだが、高校生の頃を思い出して懐かしくなる。
英語、社会、理科の順で他の動画も視聴した。講師が変われば講義の雰囲気も変わる。英語の講義は資料として映画や洋楽を使い、どこか洒落た雰囲気。社会科は受験に必要な知識を効率的にまとめ、スピード感のある構成に。理科は教室で簡単な実験を行ったりして、小学生でも楽しめそうな内容だ。そして最後に国語の講義も再生しようとしたとき、何度目かのチャイムを耳にした。
「やべ。時間だ」
四十分の動画を四回視聴すれば、そりゃあ時間も経つ。十七時にアラクネのオフィスに着くためには、そろそろ出発しなければならなかった。予習できなかった国語のことが引っ掛かりながらも、俺はスマホを鞄に入れて駐輪場へ向かった。
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