最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒夜零

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6話　執事としての心得

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「あのビジョンは一体何だったんだ？」　

ボクは起きてから自然とそんな言葉が、第一声として出た。
ポケットからジャラジャラと音がなる。あの黒い本は夢ではなく本物か、レードさんやユウナさんに言った方が……やめて置こう。これだけは今はボクだけの秘密にしよう。
トントンと扉がノックされる音。それと同時にレードさんの声。

「クロ様起きていますでしょうか？　部屋に入っても？」

レードさんはボクの様子──起こしに来た。
ボクは確か見習い執事になった。それなのに様付けは抵抗感がある。
ボクは返事をし言葉に反応してレードさんは部屋に入ってくる。
ベットから降りてレードさんの前に立つ。
軽くレードさんに挨拶をし、指示待ちをしていた。

「それでは朝食にしましょうか」

レードさんは言い終わると部屋から出て、食堂に向かった。ボクも後を追いかける。
食堂にはもう既にユウナさんが居り、眠たそうにあくびをしている。
ボクに気づいたユウナさんは慌てて、礼儀正しい素振りをし、挨拶をしてきた。
その一連の行動に思わず、苦笑をしてしまう。
レードさんは手を叩き、食堂の奥に向かっていった。ボクは席に着く。
少ししてからレードさんが食事を持ってくる。朝食らしく軽めなパンとスープ。
昨日がっついてしまったから、今日はなるべく大人しく食おうと思った。その時、ユウナさんの声が響く。

「美味しい！」
「ふふ、お嬢様クロ様がいる前ですよ？」

レードさんはユウナさんをあやすように言った。ユウナさんはその言葉を聞いて、だんだんと顔を赤らめていた。
これは言い逃れはできないだろう。と、考えた通りにユウナさんは口をパクパクしている。
その様子に思わず口元が緩む。
ユウナさんは何か言うとかではなく、頬を膨らませていた。
「可愛い」
「へ…………？」

あ、と思いボクは慌てて口元を塞ぐ。
既に時は遅し、レードさんはニヤニヤしながら見てくる。それとは反対にユウナさんはさっきよりも顔が赤い。
ボクの顔も火照っている感覚がある。
しばらくの間、沈黙が続きながらも食事をした。食事が終わると沈黙も自然に破られた。

「あ、もうこんな時間か、私そろそろ学校に行かないといけない。レードさんクロくんの事よろしくね」
「はい承知しています。お嬢様もお気をつけて下さい」
「分かっているよ。それじゃあ行ってきます」

ボクたちは食堂を出てユウナさんを送り出す。ユウナさんは笑顔で出ていった。
だけどユウナさんの笑顔の中に、引きつった表情をしていた。ボクはそれを見逃さなかった。

「さてとワタシたちも仕事しますか」

仕事？　あ、そうかボク見習い執事になったんだ。言葉を発する前にレードさんは神妙な顔持ちでボクに言う。

「クロさん貴方は見習い執事ですが、リステリ家執事の心得を教えします」

リステリ家執事の心得。その言葉は一見何事もない言葉。だが、ボクにとって違い響く。胸の中の奥底に眠っている何かが、目覚める感覚に陥いた。
なんだ今の感覚は？　ボクの何かが目覚めそうになった。もしその何かが目覚める事により、強くなれるのであれば知りたい。

「どうやらたった一言で意思は決まったようですね。それでは貴方に教えましょう。ワタシに付いて来て下さい」

レードさんは真剣な表情で館を歩いていた。後ろを付いていく。約五分くらい歩くと魔力で構成された部屋に入る。
床も壁も茶色な木製でできた部屋。
肌がひりつくくらいの魔力が、部屋に充満していた。
普通は部屋に魔力が充満する事はない。だが、この部屋は充満としている。相当高い魔法師がこの部屋を作ったと思われる。
流石はリステリ家と言えるだろう。
レードさんは一体ここに連れてきて何をするつもりだろう？

「さぁ教えましょう。心得としては三つ。一つ目は当主の期待にどんな無理難題でも答える。二つ目はリステリの執事らしく品性を持て。最後の三つ目これが一番重要ですよ。リステリの当主を守り右腕として最強であれ」
「最強であれ…………」
「クロさん。ワタシ個人の判断ですが、貴方は一つと二つ目は出来ているでしょう。問題は三つ目」

やっぱりボクの難題とも言えるの三つ目。それはもう分かりきっていた。だからボクは尚更、執事としての心得を知りたくなった。
リグに勝てた時、ボクは慢心をした。
いざ冷静になると偶然倒せたに過ぎない。
それでも最強と慢心はしない。ユウナさんの役に立ってるくらいの強さを持つ。

「レードさんボクはですね…………」

ボクは自然とレードさんに、自分の過去を語っていた。詳しくは言わない。ヒュウガの部分は端折り、それでも具代的に自分の事を語った。
レードさんは話を折る事も質問をしてくる事はせずに、ただ黙って聞いてくれた。
多分、ユウナさんはボクの事情を気付いてるだろう。だからこそあの時……

「君は自分の過小評価しているようですね。だからこそはっきり言ってあげます。貴方は最強になれる」

その言葉を聞き、自然と体に力が入り、目の奥が熱くなる。頬に冷たい物が滴れる。それに気付くまでに数秒はかかった。ボクはレードさんの言葉に、感極まって涙を流してしまっただろう。
目に溜まっている涙を拭き。

「ユウナさん──ユウナ様の役に立てる最強にして下さい！」
「いい目標であり意気込みですね。貴方をリステリの執事として認めましょう！　そして最強に育てあげる」

どうやらこの執事の心得とのは、一つの執事をする為の試験。でもこの人は断言した最強に育てあげると。ボクはそれを信じる。

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