平凡な僕らの、いつもの放課後。

たんさん

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21.誤解と和解

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 あーー。嘘だ、なんでこんなことになってんだろうか。

 徹夜明けで遅刻して学校に向かっていただけの僕は、何故か今、学校とは反対の方向に歩いている。前を歩くのは、キラキラの二人。僕は春川くんと並んで歩いていた。

「皆が学校で勉強してるのに、こうやって僕たち外を歩いてるのって、なんかいいね。」

 春川くんは楽しそうに呑気なことを言っている。

「そんなことより、僕は、太陽も前のふたりも眩しくて、目がクラクラするよ。」

「冬月くん寝不足?」

「うん。ちょっと野暮用で徹夜しちゃってさ。」

 あははーと僕は笑った。いくら秘密を共有したとはいえ、作詞のことは言わない方がいいだろう。

「えー、駄目だよ。寝不足はお肌の大敵って弟が言ってたよ。せっかく綺麗なお肌してるのに。」

 そう言って僕の顔に近づいてくる。それだけでなく、指で頬をつついたり擦ったりしている。春川くんは僕の肌が荒れてないかチェックをしているみたい。

 距離感!!!!
 春川くんの距離感おかしいって!!!!!

 僕は、春川くんの肩を両手で押し返し、顔を背ける。

「荒れちゃったら皮膚科とかエステとか行くから、大丈夫だって!」

 つい声が大きくなってしまった。秋瀬くんがこちらを振り向き、めちゃくちゃ睨んでいた。

 えーーー僕なんかしましたっけ……

「春川は、パーソナルスペースについて学んだ方がええなぁ。」

 夏木くんは後ろを振り返り、僕のパーソナルスペースを侵しまくっている春川くんに、諭すように言った。

「パーソナルスペースって何ー?」

 途端、春川くんは僕からぱっと離れて、夏木くんの隣に移動した。必然的に1人になった僕と秋瀬くんは一定距離を空けてそれぞれ歩く。

 と、思っていたが、徐々に秋瀬くんが歩く速度を落とした。気づいたら僕の隣に並んでいた。

「あのさ。」

 秋瀬くんに急に話しかけられて、僕は再びビビる。本当に慣れない。でも、何故か声のトーンは優しく聴こえた。

「は、はい!」

 僕の声は一瞬裏返ってしまう。

「クラスメイトなんだから、俺に敬語とか、しなくてもいいんだけど。」

 いや、超絶人見知りの僕が、キラキラ様に敬語を使わないなんて、近年の僕史上、ありえない事なんですが!

「…俺も、言葉、キツくならないように気をつける。」

 秋瀬様??

「お前さ。春川に、自分の好きな物押し付けんなって怒ったんだろ?」

 いや!決して怒っては無いです。僕は、平和に、穏便に、優しく諭したつもりなんですけど……春川くんは怒ったと思ってたのかな。

「実は春川に、お前らのコンカフェ一緒にって誘われてたんだけど、お前と話して考えが変わったって。俺に謝りに来たんだ。」

 よ、良かったー。僕の思い、ちゃんとまっすぐ春川くんに伝わってたんだね、嬉しい。

「春川がちゃんと自分で考えて、あーやって謝りに来るのすげー珍しくてさ。」

 その……と、少し言葉をくぐもらせる。

「ありがとな……」

 少し照れながら秋瀬くんは呟いた。僕の緊張はいつしか解れてきた。

「い、いえ。あ、いや。僕も敬語気をつけま…気をつける…よ。」

 いきなり敬語を外すのもまた難しく、僕は変な日本語を使いながらなんとか返事をした。

 そのあと秋瀬くんは、実は自分は人見知りで、親しくない人と喋るのは苦手だ、ということを話してくれた。僕もそうだと伝えると、お互い苦労するよな、といい笑顔を見せてくれた。

 こんな柔らかい顔もするんだなぁと僕の胸はポカポカした。

 僕の前を歩く夏木くんは、春川くんのアニメ談義を、興味深げに真剣に聞いてあげていた。まるで、春川くんのお父さんのようだった。

 秋瀬くんも夏木くんも、話してみるとすごく話しやすくて、勝手に怖い人と僕が決めつけていたのだと気付いた。

 キラキラしてるという理由で勝手に二人と壁を作って、変な色眼鏡で見ていた。昔のことをいつまでも引きずらずに、ちゃんと、向かい合わないと。僕こそ、偏見をして彼らを誤解していたんだから。

 僕が三人に対して思いを新たにしてると、急に夏木くんが声を上げた。

「みんなお疲れ様ー、俺のマンションここやで。」

 案内された建物は閑静なな住宅街にひっそりと佇むマンションだった。


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