平凡な僕らの、いつもの放課後。

たんさん

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57.紫苑の独白

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 蕾斗は僕の双子の弟で、何故か僕の真似をするのが好きで、髪型も髪の色も僕と同じにするものだから、僕は髪型も髪色もいろんな色に変えるんだけど、次の日には全く同じ色にしてくるんだ。

 僕とそっくりなのをいいことに、僕の名前を名乗って悪いことをするから、なんとか間違われないようにするにはどうすればいいか、それが子供の頃から悩みだった。

 ある時、髪の色を今のストロベリーブロンドにしてみると、蕾斗は僕と同じ色には出来なかった。おかげで間違われることが少なくなったから、それからはこの髪色にすることにした。奇抜で少し恥ずかしかったけど、やっと蕾斗と自分の境目が作れたような気がした。

 蕾斗は、何故か子供の頃から、僕のものを全て自分のものにしたいようで、僕の友達は気付けば、全部蕾斗に持っていかれていた。

 蕾斗は催眠術が使える。人の心理を読むことも得意な蕾斗は、そうやって僕の居場所を少しずつ奪った。

 蕾斗は自分で何かを望むことは無い。僕から奪ううことで満たされるようなやつだった。

 だから僕は少し遠い中学を受験し、蕾斗とは別の学校に通っている。その中学で出会ったのが、春永神楽だった。何故かその子は友達を作ろうとしない。

 ひとりが好きというわけでもないけど、ほら、夏木くんと一緒だよ。周りが楽しそうにしてるのが羨ましそうに見えるのに、声をかけると逃げちゃう。神楽くんにも多分友達を作らない理由があったんだと思う。

 何故か僕は神楽くんが気になった。仲良くなりたくて声を掛けても、聞こえないフリとか逃げたりするの。あの眼に、あのヘーゼルの綺麗な目に僕は魅了された。気付いたらいつも目で追っていた。

 ある日教室に行くと、神楽くんが一人で鞄の中の整理をしていた。僕は、神楽くんの前の席に座ると、吸い込まれるようにヘーゼルの眼を覗き込んでた。

 そしたら、神楽くんの方から「苺みたい」そう言って髪の毛を触ってくれた。やっと、僕を見てくれた。僕はそれが嬉しくて、気づくと「僕と付き合ってください」
 なんて言ってしまっていた。神楽くんは驚いていたけど「いいよ。」とフワッと笑った。

 1年限定になるかもしれないけど、と前置きをして、1年後はこの学校にはいないことを説明された。僕は1年後のことは分からないけど、お願いしますと言ってそれから恋人になった。

 付き合って2ヶ月くらいの時に、勉強会をする為に僕の家に招待した。それが悲劇の始まりだった。夜中トイレに行ったまま神楽くんは帰ってこなかった。

 嫌な予感がした僕は家中を探し回った。もしかしたら、自宅に帰ったのかもしれない。そうだったらとれだけ良かったか。

 最後に一番最悪の事態を考えて、蕾斗の部屋を覗いたんだ。そしたら神楽くんがいた。蕾斗はついに、僕の恋人にまで手を出したんだ。

 悪いのは蕾斗。神楽くんは蕾斗の催眠にかかっているだけで、自覚が無い。だけど、目の前の光景に僕は絶望した。

 大好きな恋人が、自分とは違う相手に、蕩けるような眼差しを向けている。頬を火照らせて、「アイシテイル」と。

 その瞬間、僕の中で、何かが崩れた気がした。

 その日から、僕の世界の色は少しずつ失われて行った。
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