女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎

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第2章 新米冒険者、異世界で奮闘する。

40話  迫りくる驚異

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 紫音とクリスのいる所に、他の者達と一緒に集まってきたエレナはまだ回復しきっていない紫音を見ると回復魔法を唱える。

「ヒーリング!」

 エレナのロッドの先に付いた玉が光り、優しい光が紫音の傷口を照らすとその傷がみるみる回復していく。温熱療法みたいでちょっと気持ちがいい。

「ありがとう、エレナさん」

 紫音はエレナに傷を回復してくれたお礼をすると、彼女からは「いいえ」と返ってくる。

「ところでお姉様、どっちが勝ったんですか?」。
「彼女の勝ちよ」

 ソフィーの質問にクリスはこう答えたが、自然と悔しさは無かった。

「シオンさん、やったッス」
「やりましたね、シオンさん」

 ミリアは嬉しそう拍手する。

「そんなお姉様が負けるなんて……」

 ソフィーはがっかりするが、その後にリズに近づくと髪を触り照れながら、彼女に怪我が無いかツンデレ問い掛けをしてきた。

「リズって言ったかしら…… その…… ケガしていないかしら?」
「お姉さんが、手加減してくれていたから大丈夫ッスよ」


「そう、ならいいの」

 リズの返答にソフィーはホッとした感じで続ける。

「あと……、さっきは少し言い過ぎたし……、やりすぎたわ……」
「私も言い過ぎたッス、ごめんなさいッス」

 リズはツンデレお姉さんなりに、謝ってくれているのであろうと思って自分も謝った。

「あと、ミリアちゃんも怒鳴ってごめんなさいね……。あの時は余裕がなかったから……」
(ミリアちゃんには、普通に謝るッスか!)

 リズが心の中で、突っ込んでいるとミリアも小さな声で謝る。

「私も……眩しくして……、ごめんなさい……」
「いいのよ、お友達を助けたかったんでしょ?」

 ソフィーは、笑顔でミリアにそう答えた。

「みんな仲良しになってよかったね」

 アフラはオーラ回復薬を飲みながら嬉しそうに言う。

「では、そろそろ帰りましょうか?」
(早く帰って、シャワーを浴びて服を着替えたい)

 紫音も女の子、いつまでも汚れたままでは居たくない。
 そのためそう思いながら、みんなに提案する。

「そうッスね、私も早く帰ってシャワーを浴びたいッス!」
「たしかに、全身砂埃まみれですもんね」

 エレナとリズの返事にミリアも頷く。

「では、私達は帰ります。コートは明日お返しします」
「ええ、わかったわ」
「どうして、アンタがお姉様のコートを!!」

 紫音とクリスのやり取りを見たソフィーは、紫音がクリスのコートを着ているのに気付き騒ぎ始める。

「うるさいわよ、ソフィー! 私達も引き上げるわよ」

 クリスが騒ぐソフィーの襟首を掴んで引っ張っていく。

「どうやら、無事決着が付いたみたいだな」

 スギハラがその様子をノエミと一緒に遠くから見ていた。

「ん? どうして俺が直接止めなかったのかって?」

 ノエミがジト目でコクッと頷くとスギハラが答える。

「俺が言った所で、アイツラが大人しく辞めると思うか? シオン君には迷惑だが、決着を付けたほうが今回の件が丸く収まるだろうと思ってな。それに、あの明敏な副団長が無茶する訳がないし」

 スギハラは一応ここで待機していて、何かあったら飛び出すつもりでいたが、無事に決着が付いてほっと胸を撫で下ろした。

「彼女にはいつか借りを返さないといけないな」

 そう言って、ノエミとその場を後にする。

 紫音達は屋敷に帰ってくると、シャワーを浴びて服を着替えた。
 そして、まだ時間があったので、四人で買い物に出かけることになる。

 まずは、服を買ってそれからカフェでコーヒーを買って歩きながら飲む。

(元の世界では出来なかった、女の子の友達とお出かけ&ショッピングを、私は今行っている! これで私もリア充の仲間入りだ!)

 紫音がリア充という言葉の響きに酔いながら、屋敷への帰路を歩いていると陽が落ちてきて綺麗な夕陽に空が染まる。

「きれいな夕陽……」

 紫音達は夕陽を見ていると、エレナが思わず呟いてしまった。

「このきれいな夕陽を、この先も四人でいつまでも見られたらいいですね……」

(そうか、今いる世界はもしかしたら明日にも誰かが居なくなってしまう世界なんだ……)

 そう思うと紫音は、少し悲しくなってしまう。

 ミリアもそう思ったのか、心做し悲しそうな表情になっている。
 リズはいつもの眠そうなジト目だった。

「すみません、盛り下がるような事言ってしまって……」

 エレナは自分の言葉で、雰囲気が暗くなったのに気付くとすぐさま謝ってきたが、その後に紫音は自分にも言い聞かせるようにみんなにこう提案する。

「明日も明後日も、この綺麗な夕陽を四人で見られるように、努力を重ねて頑張ろう!」

「「「はい」」」

 他の三人も想いは同じなので、紫音の言葉に目標に賛同した。

 その夜夕食が終わった後、リズが雑談から連日続いた”月影”との戦いを振り返って、このような話を口にする。

「クラン”月影”の人達、昨日今日と続いて明日も来たりはしないッスよね?」

 リズの懸念を聞いた紫音は、確証はないが次のように自分の考えを答えてみた。

「団長さんであるスギハラさんは、戦わないってスタンスみたいだから、副団長さんのクリスさんと戦ったんだから、もう無いと思うけど……」

 紫音の意見を聞くとリズが、ミリアの方を向いて意地悪そうな顔でこう言ってくる。

「じゃあ、もうミリアちゃんが半泣きに追い込まれなくて済むッスね」

 それを聞いたミリアは少し怒って、リズを可愛くポクポク叩き始めた。
 それを見て可愛いと紫音とエレナが微笑ましく見ていると、”ドンッ!”とテーブルに力強く何かを置く音が部屋中に響く。

 四人がびっくりして音の鳴ったほうを見ると、ワイングラスをテーブルに置いて怒りに体を震わせているミレーヌが目に映る。

「リズくん、今の話を私に詳しく話してくれないかな?!」

 そして、ミレーヌは引き攣る笑顔でリズに説明を求めた。

(あっ、これは余計なことを言ってしまったかもッス……)

 リズはそう思ったが、もはや後の祭りである。
 ジト目ちゃんは自分に被害が及ばないように、素直に昨日今日起きたことをミレーヌに説明した。




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