女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎

文字の大きさ
163 / 386
第4章 冒険者の少女、新しい力で奮戦する

125話 勘違いするな、一つの力をみんなで・・・

しおりを挟む




 前回のあらすじ

 みんなで力を合わせてトロール四天王の一人、アコンカグアをフルボッコにしたよ。
 複数対一で卑怯な気もするけど、戦隊モノでもよくやっているし、みんなで協力して一狩りしたと思えば大丈夫だよね♪

 じゃあ、今回もみんなでフルボッコだ!

 ######

 ユーウェイン達が四天王アコンカグアと戦っていた頃、もう一体の四天王エルブルスとスギハラ達が戦っていた。

 戦い方は同じで、スギハラがエルブルスの注意を引いて、その隙にクリス、ミリア、リズが遠距離から攻撃で耐久値を削る作戦だ。

 スギハラが縮地法でエルブルスの攻撃を回避すると、エルブルスの足元にミリアが唱えた水属性最高位魔法メイルストロームの魔法陣が現れる。

「メイルストローム!」

 彼女がそう唱えると、エルブルスの足元から巨大な水柱が渦を巻きながら吹き上がる。
 アコンカグア同様その巨体を持ち上げることは出来なかったが、それなりにダメージを与えることはできた。

 リズは矢に水属性の魔法スクロール巻きつけると、それをグシスナルタでエルブルスの頭部めがけて射掛ける。
 だが、この攻撃は大したダメージを与えられず、嫌がらせ程度の効果しかなかった。

「ミーの魔力が尽きてなければ、もう少し有効な攻撃ができるッスけど……」

 ミーは特殊能力を使ったことによって、貯蓄していた魔力を殆ど使い果たして後方で待機している。

「ウォーターストーム!」

 スギハラが再び攻撃を回避すると、今度はクリスの上級魔法ウォーターストームが発動し、それなりのダメージを与えた。

 スギハラ達は先程からこれを繰り返し、エルブルスの耐久値を削っている。
 しかし、特殊能力を発動と最高位魔法の連発によりエドガーに限界が来たように、同じことをしていたミリアにも限界が来てしまう。

「はぁ……はぁ……」

 限界のきたミリアは、女神武器グリムヴォルを杖代わりに体を支える。

「リズちゃん! ミリアちゃんを後方に連れて行って!」

 そのミリアの様子を見たクリスからリズに指示が飛ぶ。

「了解ッス!」
「はぁ……はぁ……、リズちゃん。私は……、まだやれるよ、はぁ……はぁ……」

 リズはミリアに肩を貸しに行くと、ミリアはそう強がるがリズは彼女をこう諭す。

「今のミリアちゃんがいても足手まといになるだけッス。MPを回避してまた前線に帰ってきたらいいッス」

 ミリアはリズの意見に耳を貸すと納得して、一度リズに連れられて前線を離れる。
 スギハラは周りの状況を見て、ユーウェインが特殊能力を発動してアコンカグアに一人突進しているのを見て

「どうやら、援軍は期待できないってところだな……。なら、俺も覚悟決めて使うべきだな!」

 スギハラは覚悟を決めて女神武器・司一文字を構えると、「女神の祝福を我に与え給え!」と祈りを込めてオーラを司一文字に注ぎ込む。

 すると、紫音の女神武器と同じ鍔の奥に取り付けられた司一文字の女神の宝玉が輝き始め、彼に戦闘能力アップとオーラブーストを与える。

 スギハラは攻撃を回避して、クリスのウォーターストームがエルブルスに命中して、ダメージと注意を引いている内に縮地法で急加速して突進するという、奇しくもユーウェインと同じタイミングでエルブルスに突っ込む。

「風旋!!」

 だが、一つ違うとすればスギハラはエルブルスの足元の手前でもう一度縮地法で加速して、その加速力とオーラを溜めた刀による高速の切り抜け斬撃技で、左脚を切断したことだった。

 同じ左脚への攻撃でも、ユーウェインの魔法剣が左半身への範囲攻撃であるのに対して、スギハラの攻撃は左脚への一点攻撃であったためである。

「グウッ!」

 エルブルスは左脚を失って左膝をつく。
 スギハラは更に右脚を狙いに行くが、エルブルスがタッチの差で右脚だけでジャンプして空中に退避する。

 巨体と片足だけのジャンプなので、高さと滞空時間は短かったがスギハラの攻撃を躱すのと、この行為がもたらすこの後の効果にはコレでも十分だった。

「何っ!? やべぇ!!」

 スギハラも歴戦の経験から、すぐさま危険を感じその場から縮地法で退避する。
 エルブルスのその巨体が地面に着地した時に、地面を揺らし砂煙を上げ衝撃波が起きた。

 スギハラは何とかその巨体の下敷きにならずに済んだが、地面の揺れにより体制を崩しそこを衝撃波に襲われ地面を転がる。

「くっ!」

 スギハラは地面に倒れた状態から、何とか体制を立て直そうとするが、丁度砂煙が消えてエルブルスに捕捉されてしまう。

 クリスも衝撃波と地面の揺れに耐えるので必死で、援護の魔法を唱えられずにいた。
 立ち上がろうとするスギハラに、エルブルスは武器を振り下ろす。

 あわやと思われた時、武器を振り下ろすエルブルスにアキのゴーレム一体が斜め後ろから体当たりをする。

 これは左脚の切断を見たアキがチャンスと思って、当初3体向かわせたのだがエルブルスがジャンプしたので、これは不味いと思って一体だけそのまま行かせたのであった。
 残りの2体はこのあとアコンカグアをタコ殴りにすることになる。

 アキのゴーレムの体当たりで、片足のエルブルスは両手両膝を地面につく形で体制を崩しスギハラへの攻撃を中断されたが、右脚を立てて片膝立ちしてすぐさま体勢を立て直すと、アキのゴーレムに振り向きざまに武器による強力な横薙ぎを行なう。

 振り向く体の捻りと、遠心力の乗ったエルブルスの強力な横薙ぎ攻撃は、盾で防御したアキのゴーレムをその盾ごと横一文字に斬り伏せ胴体を真っ二つにする。

 胴体を真っ二つにされ岩の欠片になって、崩れ去るゴーレムを見たアキはこう言った。

「勝ったぞ!!」

 アキがそういった瞬間、エルブルスの残った右脚がスギハラの風旋で切断される。

「ナニ!?」

 武器を振るために右脚に体重をかけていたエルブルスはその右脚を失い、前に倒れそうになって両手を地面につく。

「スピンブレイクスマッシュ!!」

 すると、その左手にオーラステップで加速してきたレイチェルが、体を思いっきり捻ってオーラを溜めたゲイパラシュを力いっぱい叩き込んで切断した。

 強力な一撃を放ったレイチェルであったが、勢いよく振り回したゲイパラシュを制御できずに体制を崩しその場で倒れてしまう。

「トルネードタイラントブレイク!」

 タイロンはレイチェルよりも更に体を捻って、全身のバネを使うとオーラを溜めたブルトボルグで強力な横薙ぎを叩き込み残った右手をほぼ同時に切断する。

 この二人がこれ程大胆に隙の大きい大技を使ったのは、お互いが必ず担当の腕を切断して反撃を受けないと信頼していたからであった。

 こうして、アコンカグアと同じ状態になったエルブルスは前回あらすじの予告どおりにスギハラ、クリス、レイチェル、タイロンにフルボッコにされる。

「悪りぃな、これも戦いだ。遠慮なく止め刺させてもらうぜ」

 スギハラは最後にエルブルスにそう告げると、オーラを溜めた刀を自分の右の胴あたりで横薙ぎの構えを取ると、

「花冠!」

 円を描くような、横薙ぎをエルブルスの頭部目掛けて振り抜き、すぐさま霞の構えに構え

「鳥嘴!」

 高速の三段突きを打ち込むとサイドステップで横に移動して、

「風旋!!」

 高速で頭部を横一文字に斬り抜け、素早く体を切り返して頭部の方を向きながら脇構えに構えるとそのまま強力な右斬上を放つ!

「月下!」

 オーラを宿した刀は三日月のような軌跡を描き、エルブルスの頭部に強力な一撃を与える。

「奥義、花・鳥・風・月!!」

 スギハラがキメ顔でそう言い放つと

「グオォォォォォォォ!!」

 花鳥風月を受けたエルブルスは、断末魔の声をあげて魔石へと変化した。

「グハッ!」

 それと同時に、スギハラの特殊能力が切れて彼も特殊能力の負荷で吐血して、その場に片膝をついてしまう。

「なんて情けねぇ体だ……、この程度の負荷で血を吐くなんてな……」

 クリスが心配して近づいてくる。

「大丈夫ですか?!」
「ああ……、何とかな……」

 クリスの心配する言葉に、彼は何とか大丈夫だと答えると盟友の戦況を聞く。

「それより、ユーウェインの方はどうなった?」

 クリスはユーウェイン達の戦況を確認すると、アコンカグアが魔石に変わるところであった。

「向こうも終わったみたいです。もちろん、勝利しています」
「そうか……」

 スギハラは支えに使っていた刀すら持てなくなって、地面に倒れそうになるが彼の体を慌ててクリスが支える。

「とりあえず、安全な後方に連れて行きます」
「すまない……」

 クリスはスギハラに肩を貸すと、そのまま回復役のいる後方まで連れて行く。
 こうして、トロール四天王は2体とも撃破され、人類側の勝利は確定した。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...