女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎

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第5章 冒険者の少女、異世界の為に頑張る。

149話 ふるえる山のようなトロール(後編)

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 鎖攻撃を華麗(?)に回避して、エベレストの足元に到達した紫音は右足にオーラを溜めた左右の刀で強力な斬撃を繰り出す。

「ゼロ距離ダブルハイパーオーラウェイブ!!」

 まず右手の打刀で横一文字にハイパーオーラウェイブを放つと、紫音はエベレストの右足を半分まで切断し、続けて同じところに左手の脇差のハイパーオーラウェイブを放って今度こそ右足を切断する。

 紫音が右足を切断した後すぐさまバックステップで距離を取ると、右足を失ったエベレストは右膝を地面について体勢を大きく崩す。

 その巨体で勢いよく右膝をついたため地面が揺れて、紫音がバックステップの着地をした所を揺れに襲われ体勢を崩してしまう。

 右足を失ったエベレストではあったが、その紫音の隙を逃さずに彼女目掛けて右手でパンチを繰り出す。

 その瞬間、ソフィーが事前に放っていたGDSファミリアの鞘先からでたオーラの刃がエベレストの顔面を斬りつけ、紫音への攻撃を中断させる。

「その隙、もらったぁ!! ミトゥトレット…インパクト!!」

 背後から突進してきたアフラがチャンスとばかりに、エベレストの左脹脛にミトゥトレットインパクトを叩き込むと攻撃を受けた左脹脛は消し飛び、その衝撃を受けたアフラは衝撃で吹っ飛び地面を転がり、体制を崩して片膝をついていた紫音もその衝撃波で地面を転がる。

「はにゃーーー」

 アフラは衝撃波で地面を転がっていたおかげで、左足を失ったエベレストが左膝を地面につけた時の衝撃範囲から逃げることが出来た。

「うぅ……、何か気持ち悪くなってきた……」

 だが、近くで地面を転がっていた紫音は、地面からの衝撃を受けて気分が悪くなってしまう。

「クナーベン・リーベが、策を持ち出す暇を与えずに一気にケリをつける!」

 ユーウェインは女神武器の特殊能力を発動させると、左腕に持っていた盾を投げ捨て代わりに予備のオリハルコンソードを左手に持って、左右の武器に魔法剣の魔力を溜めてエベレストに突進する。

 エベレストは突進してくるユーウェインに右のパンチを打ち込むが、特殊能力で身体能力が強化されている彼がバックステップで回避したので、パンチを打ち込んだ右手は空を切って地面に刺さってしまう。

 そこをユーウェインは、すぐさまオーラステップで急接近すると、地面に刺さるその右手を最高位魔法剣” メイルストローム”で斬りつける。

「グウゥ!」

 魔法剣を受けたエベレストは慌ててダメージを受けた右手を引き戻すと、その右腕の肘にビームのような輝くオーラの矢が命中した。
 それは、リディアの放った” フェイタルアロー“であった。

「まずは、ひとつ!」

 リディアは続けて二発目を右肘に狙いをつけて放つと、それも見事に同じ場所に命中させる。

「ふたつ! これで、ラスト!」

 彼女は三発目のフェイタルアローを動くエベレストの右肘に、冷静に狙いを定め三射目を行ないこれも見事に同じ場所に命中させ、三発目を受けたエベレストの右腕は右肘からボトリと落ちた。

 リディアはリズが卒業試験で、着弾予測眼というチートを使って同じ場所に何発も当てるピンポイント射撃でロックゴーレムの肘を破壊した事を、磨き抜いた技と豊富な実戦経験でやってのけたのだ。

 右腕を失ったエベレストに、アキのゴーレム”ビッグ・フォー”が残った左腕で攻撃を仕掛けるため左肘に内蔵されたピストンロッドを肘から飛び出させ攻撃態勢をとる。

「ビッグ・フォー、最後の攻撃よ!」

 ビッグ・フォーは彼女の命令通りに、左腕による最後のパンチをエベレストに行なう。
 エベレストもそれに対抗して左手のパンチをビッグ・フォーに繰り出す。

 奇しくも左腕同士のパンチの衝突がおき、ビッグ・フォーの拳が半分潰れてしまうが、その瞬間押し込まれた肘のピストンシリンダーによって、腕内部の圧縮空気が前方に押し出しされる。

 パンチ同士の衝突でダメージを負ったエベレストの左腕に、更に圧縮空気によるダメージが与えられたエベレストの左腕は、肘のあたりまで吹き飛ばされた。

 だが、それと同時にビッグ・フォーの左腕も吹き飛んで、ビッグ・フォーはその場に背中から倒れ込んでしまう。

「お疲れ、ビッグ・フォー……」

 アキは最後の任務をやり遂げて、倒れ込んだビッグ・フォーに感謝の言葉を掛けた。

「光魔法フォトン!!」

 そのエベレストにグリムヴォルの特殊能力を発動させて、魔力を注入させていたミリアが
 ケットさんの「ナー!」の合図とともに魔力注入を止めて、“光魔法フォトン“をグリムヴォルの前に展開されている魔法陣から放つ。

 光り輝く巨大な光の球は、両手両足を失って膝立ちしているほぼ無防備なエベレストに向かって飛んでいくと、命中して大爆発を起して消滅した。

「グワアアアアア!!」

 エベレストは爆発の煙の中から声を上げると、その場にうつ伏せになって倒れ込む。

「このまま、一気に畳み掛けるぞ!! 魔法剣メイルストローム!!」

 ユーウェインの合図とともに

 ソフィーが「スピンブレード!!」
 紫音が「双刀連斬!!」
 クリスが「ウォーターストーム!」
 スティールが「オーラブレイクソード!!」

 を次々と放ち、更に他の者達もありったけの技を叩き込んで、エベレストの耐久値を削っていく。

「これで終わりだ、エベレスト!! ダブルメイルストローム!!」

 最後にユーウェインが左右の剣に溜めておいた最高位水属性魔法剣”メイルストローム”を放つ。

「グオォォォォォォォ!!」

 2つの巨大な渦を巻いた大きな水柱の攻撃を受けた、エベレストは遂に力尽きて断末魔の叫びを上げて、巨大な魔石へと姿を変えた。

 その瞬間、参加者から大きな歓喜の声が上がる。
 人類は遂に獣人族の長トロールの王を撃破したのであった。

 参加者達が歓喜の声をあげ喜ぶ姿をユーウェインは、特殊能力の負荷による吐血をしながら剣を支えにして見ている。

「大丈夫ですか、隊長!?」

 その様子を見たリディアが彼のもとに駆けつけ、肩を貸そうとする。

「大丈夫だ……。だが、このまま少し休ませてもらう」

 だが、そう言って、彼は彼女の申し出を断る。

(司令官が弱々しく肩を借りている姿を、部下に見せるわけには行かないからな……)

 ユーウェインは剣で体を支えながら、回復薬を飲むことにした。

 その頃、紫音も口を手で抑えて喉を込み上げてくるものを、堪らえようとしたが我慢できずに、その場に膝から崩れて両手を地面について四つん這いになって

「うっ……、ゲボゲボゲボ……」

 盛大にリバースさせていた。

 今日彼女はオーラをかなり消費してその都度回復薬を飲んでおり、更に女神武器の特殊能力発動による体への負荷と、地面を複数回転がったことで三半規管にも負担が掛かっており、その結果盛大にリバースする結果となってしまったのだ。

「紫音ちゃんがヒロインとは思えない、マーライオンみたいな盛大なリバースをしている!」

 それを見たアキはそのような的確な表現をおこなった。

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