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第6章 逆襲の魔王軍(仮)
190話 炎よ もえろ
しおりを挟む前回のあらすじ
今回も本編で出番のないアリシア・アースライトが担当します。
遂にオーク侵攻軍が攻めて来て、シオン様は少数精鋭と言われて4人で持ち場を担当することになります。
今の所順調に撃退していますが、この後も大丈夫でしょうか?
因みにわたくしの紅茶は、金属製のカップに入って出てきました……
######
紫音達が守る真ん中の堀の縁に、タムワース指揮下のオーク達が殺到してくる。
戦力の手薄な部分を狙うのは、兵法としては当然であり魔王もその命令を魔物に与えていく。
そして、それはスギハラ達も解った上での配置で、例え大量のオーク達が手薄の真ん中の縁に集中してきても、縁は狭いため兵力差は出にくい。
そこに弓矢や魔法を撃って殲滅を目指し、例え討ち漏らして紫音達が撃破するという兵力の少なさを逆手に取った作戦である。
紫音達は、当初オークが自分達の手前に来る前に攻撃していた。だが、真ん中にオークが集中していると判断した城壁にいる援護部隊が、他の4つの縁への支援攻撃を少なくして、真ん中への攻撃を増加させたので、オーラを交代で回復させるぐらいの余裕ができていた。
オーク達はその魔法や弓矢が集中している中央の縁に、愚直に侵入していき次々と撃破されていく。リーベ達がいれば、人間側の手薄な配置が誘引策であることに、もっと早く気付いたであろうが、オーク達は命じられたとおりに作戦を継続し被害を拡大させていた。
紫音達の後ろで立っているアキのゴーレム、”ゴーレム5 伍ータム”の腹の内部にいる小型ゴーレム達は、腹の装甲に作られた矢狭間に備え付けてある少し大きめのクロスボウでオークに狙いを定める。すると、各自ボルトを発射させそのボルトは紫音達の頭上を通り抜け、敵めがけて飛んでいく。
放たれたクロスボウボルトはオークに命中し、被弾したオークはダメージを負うがあまり効いているようには見えない。
「クロスボウ攻撃は、あまりダメージを与えられていないな……」
その自分のゴーレムの戦果を、城壁の上から確認していたアキは1人呟くと、設計の見直しを考える。因みに今回のアキは、ドクロマークの付いた赤い帽子とピンクのスカーフに白い服を着ていた。
戦況は人間側優位に進んでいたが、オークの投石機による投石攻撃が始まると、戦況は厳しくなる。魔法使い達が、攻撃魔法をやめてマジックシールドの魔法で、投石を防がなければならないからであった。
伍ータムも要塞中央部をその巨体で投石から守るが、それ以外の場所や冒険者の頭上に降ってくる投石は魔法使い達が対処しなければならない。
「また、忙しくなってきたよ!」
紫音達への魔法攻撃の援護が少なくなり、彼女達の戦いは再び忙しくなる。
「シオン君達の守る中央への魔法援護が少なくなっています。このままでは、彼女達のオーラが尽きた時に突破される危険があります」
「わかっているけど、今は回せる余分な魔法使いはいないわ。アキのゴーレムの援護に頼るしかないわ」
部下の報告に縁の出口で、オークと戦うスギハラの代わりにクリスが答えた。
(シオン達が突破されるのが先か…、それともオークの数をこちらが打って出て、優位に戦えるまで減らせられるのが先かの勝負ね……)
「とはいえ、オークの頭数を減らすための攻撃はするべきね。ミリアちゃん、堀の対岸に縁に入れないオークの数が増えてきているわ。一番多くいる所に“フォトン”を放って!」
クリスは近くにいさせたミリアに指示を出すと、彼女はコクッと頷くとオークが集中している中央の縁に向かう。
「シオンさん…、“フォトン”を撃ちます…」
ミリアは紫音に報告すると女神武器を構えて「女神の祝福を… 我に与え給え…」と祈りを捧げてから、構えたグリムヴォルに魔力を込め“フォトン”の詠唱に入る。
彼女が詠唱に専念している間、飛んでくる矢はケットさんが迎撃していた。
ミリアは今までの経験でケットさんに止められなくても、力尽きないところで魔力注入を止める。
「光魔法フォトン!」
ミリアの女神武器の前に展開されている魔法陣から、光り輝く巨大な球状の光の塊が放たれた。
巨大な光の球は、堀を越え着弾点までの進行方向に居たオーク達を次々と消し去りながら、飛び続けて着弾点に到着すると周りに居たオークを巻き込んで大爆発を起して消滅する。
そのお陰で中央の縁の入り口付近に集まっていた、タムワースの部下達の大半を消し飛ばすことに成功した。
麾下の部下の半分以上を失ったタムワースは、一度部下を安全な場所まで後退させる。
「ありがとう、ミリアちゃん。お陰で少し休めるよ……」
紫音は失ったオーラを回復させるために、オーラ回復薬を飲みながら後方に下がろうとするミリアに感謝の言葉を掛けた。
ミリアは嬉しそうにコクっと頷くと、魔力を回復させるために後方に下がっていく。
クリスは更にカードをもう一枚切る。
「団長、エドガーさんに女神武器の使用を頼んでください!」
スギハラはクリスの意見どおりにエドガーに指示を出す。
彼女がスギハラを挟んだのは、立場が上の四騎将に自分が直接指示を出すのを、憚ったためである。
「エドガー! 女神武器の特所能力で敵の数を減らしてくれ!」
「了解!」
「女神の祝福を我に与え給え!」
スギハラの指示を受けエドガーは、祈りを捧げてからケーリュケウスに魔力を込めて、女神武器の特殊能力を発動させると、炎属性の最高位魔法“インフェルノ”を詠唱する。
オークにはこれといった弱点属性はないが、多くの者は炎属性魔法を好んで使う。
これはオークが豚に似ているから、火で調理してやろうという考えが潜在的に働いているのかも知れない。
詠唱が終わると堀の向こうにいるオーク達の足元に、巨大な魔法陣が現れる。
「インフェルノ!」
エドガーがそう言葉を発すると、超巨大な魔法陣が輝きそこから超巨大な炎の柱が渦を巻きながら吹き上がる。渦を巻き多数のオーク達を飲み込みながら空に向かって上がる巨大な炎の柱は、その名の通り地獄のような光景であった。
「また、みんなでキャンプに行って、キャンプファイアーを囲みたいね…」
その光景を見た紫音は、呑気にそう呟く。
「アナタ、よくあんな地獄の業火みたいな炎の柱を見て、呑気にキャンプファイアーなんて連想できるわね!?」
すると、ソフィーはすぐさまそう突っ込む。
「わたしも行きたいー!」
そして、アフラも呑気にキャンプに行きたがる発言をする。
「アフラも乗っかるんじゃないの!」
その彼女に対して、ソフィーが返す刀でツッコみを入れた。
「もえろよ…もえろよ…炎よ もえろ…」
さらにノエミがジト目で無感情な感じで歌う。
「ノエミも歌うんじゃないわよ!」
ソフィーもさらにツッコむ。
ソフィーの連続突っ込みは、キレキレでおこなわれた。
それにより、ソフィーの突っ込みスキルはBに上がった。
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