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第3章 北ロマリア戦役
ラーマ・ディレノの戦い 01
しおりを挟むガリアルム艦隊を追跡する為に、前進を開始したボローナ駐留艦隊の先頭にいる艦の光学望遠装置が、先程までガリアルム艦隊が微速で進んでいた惑星ラーマ・ディレノの宙域に、一隻だけ駆逐艦らしき艦が留まっているのを発見する。
すると、その駆逐艦はその場で爆発して、デブリへと姿を変える。
「あの艦を修理するために、速度を落としていたわけか。結局修理できずに、放棄を決定して、自沈させたというところか」
「小官も司令官の推測通りだと思います」
司令官アルタウスの推測に、参謀のベッカーも同意する。
もちろん、これはフランの仕掛けた罠であり、爆発させたのは前回の戦いで大破した艦を曳航してきたモノである。
「だが、本当にそれだけか…。そもそも、補給路を断たれるのが解っていながら、侵攻部隊を挟み撃ちにする作戦を採用する大胆な決断をする指揮官が、偵察艦で索敵をしないという油断をするのか…」
彼の言う通りガリアルム艦隊は、後方には偵察艦を出してはいない。
その理由はもちろん彼らの存在に気付いていないと思わせ、ボローナ駐留艦隊に追跡を続行させるためである。
「隠密行軍なので、その偵察艦を発見されないための配慮という考えかもしれませんが、確かに、我らに追跡させるために態と索敵していない可能性もあります」
(それを事前に察知して、進言するのが参謀の務めであろう!)
アルタウスは心の中でそう思いながら、索敵に出している偵察艦に警戒を厳にするように命じる。
駐留艦隊が惑星ラーマ・ディレノの横二万ニ千キロの地点に差し掛かった時、索敵で展開していた偵察艦から、順次敵艦発見の報告とともに通信が途切れていく。
アルタウスは戦闘態勢とレーダー索敵の指示を出すと、艦隊の一番外側に配置されている艦に光学望遠で偵察艦の様子確認するように命令を出す。
すると、おそらく味方偵察艦の爆発と思われる光の近くを、数隻の船速の速い艦影が後方に移動しているのが観測されたと報告が入る。
だが、その艦影はレーダーには隕石かデブリのようにしか反応していないために、例のステルス艦隊であることは容易に想像できた。
「全艦急速回頭! 後方の敵艦隊に備えよ!」
アルタウスは全艦を回頭させながら、移動の復縦陣から紡錘陣形に変更する。
陣形を変更していると、先程まで後方であった方向からステルス艦隊が、ゆっくりと接近してくるのがレーダーと光学望遠で確認される。
「どうやら、敵艦隊は偵察艦を破壊した艦の合流を待っているようですな」
「では、我らもその間に陣形の変更を終わらせるぞ!」
「どうやら、あの微速は駆逐艦の修理と見せかけたあのステルス艦隊が、こちらの偵察艦を叩くために別動部隊を展開させるための時間稼ぎだったようだな…」
「敵の真の狙いに気付かずに、申し訳ありません…」
陣形変更の指揮をしながら、そう呟いた司令官にベッカーは謝罪する。
「起きてしまったことはもういい、これからどうするかを考えろ!」
「はっ!」
二人がそのような会話をしていると、レーダー手から報告が入る。
「我が艦隊が追跡していた艦隊が、後方約4万キロの距離で反転している模様です!」
「やはり、我らをステルス艦隊と挟み撃ちにする策であったか…。後方の艦隊が来る前に、前方の艦隊を突破する! 陣形の変更を急げ!」
約7000隻の艦隊が、複縦陣から紡錘陣形に変更するには、それなりの時間を要する。
指揮官の指揮能力次第では、その時間を短縮できるが彼のその才は非凡であり、陣形変更に10分も掛けてしまった。
白ロリ様ことシャーリィなら、5分もかからなかったであろう。
だが、ロイク艦隊の方はまだ合流を終えていないのか、前方2万3千キロの地点にいる。
「先手が取れそうだな! 全艦最大船速! 前方の敵艦隊を突破する!」
アルタウスは艦隊に最大船速を命令して、ロイク艦隊への突撃を命じようとした時、レーダーが艦隊の側面と左前方より迫ってくる敵艦隊を捉える。
側面の艦隊は、巨大ガス惑星ラーマ・ディレノの雲海に隠れていて、敵艦隊が陣形を変更している間に雲海を出て迫ってきていたフラン艦隊3000隻であった。
「敵艦隊との距離2万1千キロになりました」
「よし、撃て!」
クレールの報告を受けたフランは、洋扇を下に振り下ろすと同時に攻撃命令を出す。
ボローナ駐留艦隊は、突然の側面からの攻撃にシールドの対応が遅れた艦から、撃沈されていく。
そして、左前方より迫ってくる艦隊は、ラーマ・ディレノの周回軌道を時計回りで、回ってきたヨハンセン艦隊3000隻であった。
「閣下、敵艦隊が射程圏内に入りました」
「撃て」
副官クリスの報告を受けたヨハンセンは、低い声と短い言葉で攻撃命令を出した。
フラン艦隊とヨハンセン艦隊の攻撃を受けたボローナの左翼艦隊は、次々と爆散して先程の駆逐艦デブリの仲間入りを果たしていく。
フランが今回立てた策は以下である。
ガリアルム艦隊が複縦陣で、ガス惑星ラーマ・ディレノ宙域に到達した時、実は最後尾のルイ率いる分艦隊だけが微速で、他の二艦隊は最大船速で進んでいた。
先頭のヨハンセン艦隊は、ガス惑星の周回軌道を時計回りで進んでそのまま周回し、中間のフラン艦隊はガス惑星の内部に入って姿を隠したのであった。
4万キロ後方を追跡していたボローナ駐留艦隊は、気付かれないためにレーダーも索敵艦も使えなかったために、光学望遠装置による観測しかできず、最後尾のルイ分艦隊の更に約10万キロ先でそのようなことが、行われていることに気付くことができなかった。
そして、伏兵の両艦隊はルイが微速で30分、駐留艦隊がラーマ・ディレノ宙域に到達する40分の間に、持ち場に移動を終え、ENを少しでも回復させていたのであった。
最初に駆逐艦の機関修理が微速の原因と思わせ、そこに敵が最も警戒しているロイク艦隊を真っ先に出現させることで、微速の本当の目的がステルス艦隊の奇襲とそれによる挟撃の為の時間稼ぎであったと思わせる。
この事によって、敵はこのステルス艦隊も真の目的を隠す為の存在であるとは思わずに、この奇襲からの挟撃というもっともらしい策が敵の狙いだと思い込み、微速の本当の目的である真の伏兵の存在に気付くことができなかった。
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