118 / 154
第5章 Vive L'Empereur(皇帝万歳)
二人の過去 ヤンデレ殿下編
しおりを挟むいつからだろう、気付いた時には私には他人が心の奥で何を考えているのかが、その者との会話、仕草、表情、目の動きなどで、推測できるようになっていた。
最初は両親、次に親類、その次は周りの侍従たち、そして権力欲しさに言い寄ってくる臣下…
その推測は、そうやって経験を積む度に精度を増して、高確率で当たるようになってきた。
当たっていたかどうやって解るのか? この世には盗聴器という便利なモノがあるし、カマを掛けてやれば、それ相応の反応をしてくれる。
我ながら、嫌な子供だったと思う…
10歳になった頃には、経験則と会話技術によって、ほぼ的中できる程になっていた。
だが、私がこの技術で得たモノは、この色素の抜けた私への忌諱の感情と、権力者達の欲深さと醜い心であった。
私はいつしかこの世界が恐ろしく汚く醜く見えてしまい、<こんな世界、人間と共に滅びてしまえばいい>と考えるようになり、その考えはいつからか<私が滅ぼす>となっていった。
そのためには、どうすればいいか考えるようになり、まずはこの国の権力を握ることだと考え、そこで推考した策が後の腐敗した旧体制を一掃した改革へと繋がっていく。
その頃から、金髪の人形みたいな可愛らしい従姉妹が、私に憧れの眼差しを向けながら、近寄ってくるようになるが、正直鬱陶しかった。
更に鬱陶しいのは、リュシエンヌ・レステンクールとかいう者だ。
歳上なのを良いことに、何かと姉振って構ってくる、臣下の娘のくせに!
まあ、私が権力を握った時には、二人は手駒に使ってやってもいいだろう。
だが、そんなある日、私は運命の出会いをすることになる!
そう、あの日は時を戻した私が8歳の時、国庫の浪費にしかならない宮廷晩餐会の日であった。
私は意味のない臣下からの挨拶とリュス、シャーリィの相手をするのが嫌になって、中庭に逃げ出してきていた。
自室に戻らなかったのは、今夜は月明かりが綺麗だったので、その中で本を読もうと思ったからである。
私が樹の下に腰を掛け、『戦争論』を読んでいると、そこにあの忌々しいモノが頭上から姿を現す! そう『蜘蛛』だ!
私は昔から虫が苦手であり、特に蜘蛛は大嫌いである。
その蜘蛛は、私の顔から数十センチの所に頭上から見事な奇襲を行い、不意を突かれた私は成す術もなく本を盾にして、その場で恐怖に身を震わせ怯えるしかなかった。
そこに颯爽と現れたのが、10歳のルイであった!
ルイはその辺りに落ちていた小枝を拾い、私の目の前であざ笑うかのように宙吊りになっている蜘蛛を、その小枝に乗り移させると少し離れた茂みまで連れて行き蜘蛛を逃がす。
しかし、そんなルイの勇気ある姿と優しい姿を見て、一瞬心ときめいてしまうが、即落ちするほど私は甘い女ではない。
だが、助けてくれた事には、礼を言わねばならない。
「たっ 助かった。礼を言う… ありがとう…」
「あっ いえっ そのようなお言葉もったいないです… 恐縮です」
そう謙遜したルイであるが、私と目を合わせようとしないし、怖がっているように見える…
そうか、彼も私の姿を見て、内心では忌みているのか…
私はそう思うと、ルイへの興味を一気に失うが、彼がチラチラと私を見ていることに気付く。
ただ、目は合わせようとはしない。
「何だ!? さっきから、チラチラ見て! キサマが私のこの珍しい姿に興味を持つのは理解できるが、目を合わせようとしないのは少し失礼ではないか?」
「もっ 申し訳ありません…」
ルイの態度に私がそう強い言葉で問い質すと、彼は本当に申し訳無さそうな顔をして謝ってくるので、子供相手に言い過ぎた反省して、自嘲気味にこのような事を言ってしまう。
「まあ、私のような気持ちの悪い姿をした者とは、目は合わせたくはないであろうな。子供とは正直なものだ……」
自分もまだ子供のくせに達観したこの言い方… 今にして思えば、ヒネた子供だったと思う。
私のそんな自嘲気味の言葉を聞いたルイは、ようやく私と目を合わせると、怯えながら熱い思いを乗せて反論してくる。
「違います! フランソワーズ様のお姿が、あまりにも神秘的で…、 失礼とは思いましたが、思わず見てしまいました! 気持ち悪いだなんて、そんなことはありません! とても、魅力的で素敵だと思います!!」
「そのように好意的な目で見ていたなら、どうして目を合わせようとしない?!」
私がすぐさまこの矛盾を突くと、ルイは怯えながらこのような言葉を返してくる。
「はい、失礼だとは思いますが、正直にお話します! 目と… 目付きが怖いからです!!」
「私の目と目付きが怖い!!?」
私はルイのその思いがけない言葉に驚くが、よくよく考えれば、<世界を、人間を滅ぼす>などという馬鹿な考えを持った者の目が普通なわけがない。
自分でも気づかない内に、ルイが怯えるような目で世界を見ていたのであろう。
「これなら、怖くないか?」
私は再びルイに興味を持つと、彼ともう少し話がしたいと思って、本を持つ右手とは逆の空いている左の手を目の前に持っていき、目を隠すことにする。
「はい!」
ルイは元気よく返事をすると、目を輝かせて私の姿を見ている。
私は指の隙間から、ルイの姿を観察しながら、会話を投げかけてその本心を推察しはじめる。
「先程、私の姿が魅力的だと言っていたが、珍しいからか?」
「珍しくないといえば嘘になりますが、月明かりに照らされて本を読むフランソワーズ様のお姿が月の光りで、その綺麗な銀色の髪と白い肌が輝いて見えて、まるで物語の登場人物が本から出てきたような神秘的なお姿で― 」
ルイは目をキラキラさせながら、自分の想いを伝えてきてくれるが、いかんせん興奮しているので、会話の内容が纏まっていないが、その目は今まで私を奇異の目で見てきた者達とは違い、本心で私の容姿を褒めてくれている目で、私はその事が嬉しかった。
「あぅ!? 目が怖い!!」
たまに指の隙間から、覗く私の目と目が合うと怯えるがルイとの会話は楽しかった。
あれ? 今も私の目を怖がっている時がある気がする…
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
不死身のボッカ
暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。
小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。
逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。
割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。
※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。
※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。
※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。
※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる