12 / 12
11 元魔王 対 魔剣士少女
しおりを挟む前回までのあらすじ
いきなり目の前に現れた親友の娘ルイスは、勝負を挑んできた。
だが、彼女が引き連れる相棒の魔狼ハティは、シャルーに負けず劣らず可愛い子狼だったので、可愛いものが好きな元魔王はつい見惚れてしまう。
#######
「マジックバリア!」
ハティに気を取られてしまったため、左手に溜めていた魔力を使ってマジックシールドで防ぐことにするが、そのまま受ければその威力と質量にマジックシールドは耐えられても、支える腕がその衝撃に耐えきれず、最悪折れてしまうかもしれない。
そこで、掌を斜めにしてマジックバリアを斜めに発動させると、振り下ろされた魔剣ティルファングをそのまま斜めに受け流す。
そして、すぐさま後ろに跳躍して、ハティの噛みつき攻撃を回避する。
「フフフ… 腐っても元魔王! 近接戦闘もそれなりに心得ておるわ!」
このように余裕の発言をするが、マジックシールドを張った左手は、衝撃を全て受け流せなかったのか少し痺れている。
「はあぁぁぁ!!」
ルイスは再び魔剣を脇構えに構えると、地面に置いた剣先を引き摺りながら、アルスに突進してくる。
しかし、その分不相応な武器である大剣を操るための彼女の剣技は、円を描くように振り遠心力を利用して斬撃をおこなうため、隙もモーションも大きく冷静なアルスは体捌きだけで余裕で回避することができる。
更にハティとの連携もあまり上手く行っておらず、子狼の攻撃も難なく回避する。
(流石はアスイオスの娘、あの細い体で上手く魔剣ティルファングを扱っているが… )
「おい、アスイオスの娘よ」
「ルイスよ!」
「ルイスよ。お前には、魔剣ティルファングは大きすぎるのではないか? もう少し小振りな剣を使ったほうがいいぞ?」
「そうね…。少しアナタの事を甘く見ていましたね。この剣を使ったのは、私がアスイオスの娘だと信じてもらうためよ。次からは、お言葉に甘えさせて貰って、愛用の剣を使わせてもらうわ」
彼女は余裕の笑みを浮かべながら、背中の鞘に魔剣を格好良く収めようとする。
―が、何度やっても上手く収まらない。
「あっ あれ? おかしいな… 入れ、入れ!」
暫く悪戦苦闘していたが、結局鞘には収まらず涙目になってくる。
「それほど長い剣を、背中の鞘に入れるのは無理だろう。おとなしく背中から鞘を外して、入れなさい」
困っている親友の娘の姿を見かねたアルスが、そのように助言するとルイスは涙目で彼の方を”キッ”睨む。
「今、私の事、馬鹿だと思ったでしょう!?」
「親友の愛娘に、そんな事を思うわけがないだろう。さっさと、鞘にしまいなさい。ここで見守ってあげるから」
涙目でそう言ってくる親友の娘を、アルスは暖かな目で見守る。
「ハティ!」
アルスを睨んだままハティを呼び寄せると、背中から外した鞘の鞘口近くを口で噛ませ支えさせると、魔剣ティルファングをようやく鞘に収める。
そして、左手を目の前にかざして収納魔法を詠唱し、魔法陣の中に空いた異空間にティルファングを収納すると代わりに二振りの剣を取り出して、左右の腰に装着すると鞘から引き抜いて左右に持って構える。
「おまたせ。ここからが、本番よ!」
「なあ、ルイスよ。我としては親友の娘とこれ以上戦うのは気が引けるのだが、もう止めんか?」
「アンタが仕えるに値するのか確かめたいのよ!」
「そうか… なら仕方がないな… 」
アルスとルイスは、10メートルほど距離を取って、対峙すると彼女の方から動き出す。
「はあっ!」
「速い!」
ルイスは先程までとは違い俊敏な動きで、10メートルの距離を一気に詰めるとまずは右手の剣を彼に振り下ろす。
アルスはその斬撃を右手に溜めた魔力を使って、直径3メートルぐらいのマジックシールドを張り振り下ろされた剣とそれに続く左手の横薙ぎの斬撃を防ぐ。
そして、それと同時に左手で拘束魔法を発動させる。
「闇魔法イビルバインド!!」
すると、アルスの足元を中心に、黒い魔法陣が直径10メートルまで一気に広がり、そこから勢いよく魔力の黒い鎖が何十本も出現して、ルイスに向かって伸びていく。
「はあっ! やあっ! たあっ!」
流石のルイスも直径10メートルを移動しきれず、左右の剣で襲ってくる魔法の鎖を切り払うが鎖の数が多いため捌ききれず、みるみるうちに彼女の手足や体に何本も絡みつき見事彼女を拘束することに成功する。
「まさか、こんな強力な魔法の多重魔法が使えるなんて!」
「ククク… 魔王である我を甘く見すぎたな」
「うぅ…!」
悔しそうな表情のルイスに、元魔王は余裕の表情でこう答えるが、内心では彼女の予想以上のスピードにヒヤヒヤしていた。
(それにしても、流石はアイツの娘だ。予想以上に速かった、実際良く間に合ったものだ。流石の我も先程の鞘の件の間に、魔力を溜めていなければきつかったな)
アルスは鞘の件の間に、姑息にも密かにこの強力な拘束魔法の魔力を溜めていた。
でも、そのおかげで、彼は親友の娘相手に、元魔王の威厳を保つことに成功する。
「助けて、ハティ!」
ルイスがハティに助けを求めてそちらを見ると、
「わんわん! わんわん!(なにこれ~! なにこれ~! )」
子狼は楽しそうに蝶々を追いかけている。
「ハティーーーー!?」
彼女は涙目で相棒の名を叫ぶが、蝶々に夢中な子狼には聞こえていない。
「使い魔としては、幼すぎたな。見よ、我の使い魔を! ちゃんと命令どおりに待機しているぞ!」
アルスが親友の娘に同情しながら、自分の使い魔を見る。
だが―
「にゃー! にゃー!(ちょうちょ~! ちょうちょ~!)
「シャルーーーー!?」
「アンタの使い魔も一緒じゃない!」
それはそうだ、幼さではシャルーの方が幼いのだから、同じく蝶々を追いかけてしまうのは仕方がなく、
(何故大丈夫だと思ってしまったのか? 余計な恥を掻いてしまった)
と心の中で自分自身を責める元魔王であった。
(おっと、遊んでいる場合はない。こやつほどの実力なら、拘束を解くのも時間の問題であろう)
「さて、拘束が効いている内に済ませるか」
アルスはイヤらしい手つきをしながら、ルイスに近づいて行く。
「ちょっ ちょっと、何をするつもりなのよ!?」
「何って… そりゃあ、口では言えないことだろう。貴様は先程から、元魔王で父親の親友にタメ口をきく無礼者だからな! それ相応のお仕置きをしないとな! ぐふふふふふ」
怯えるルイスにアルスは、厭らしい手つきと笑い声でさらに近づく。
まあ、本当に親友の愛娘に、そんな事をするつもりは微塵もないが…
「親友の娘に酷いことするつもりなの!?」
「じゃあ、降参するか? 我はどちらでもいいぞ? ぐふふふふふ」
「わかったわよ! 降参! 降参するから!」
もうひと押し脅した所で、貞操の危機を感じたルイスが涙目で降参を認めたので、拘束魔法を解くことにする。
こうして、元魔王は親友の娘に格の違いを見せつけ(?)、威厳と体裁を保つことに成功したのであった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる