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6歳

空き缶はゴミ箱に捨てるもの。

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「え、だって、ここ空いてまし……空いてたよ?」
 私は言った。
「はぁ?荷物置いて場所取ってたし」
 柄シャツが言う。
「荷……物?」
 あっ!あのビール……。
「あれ、ゴミじゃなかったの!?」
 つい、口に出して言ってしまう。
「ゴミだとぉ?」
 半裸男が大声を出した。
 大きな声ですごまれて、ソラタはすっかり萎縮している。
 ああもう、せっかく楽しい縁日だったのに。でも子連れ(むしろ大人連れ?)で揉めたくないし、ベンチは諦めて引き下がるか……。
「てゆーかぁ、ウチらのモン、勝手に捨てたわけでしょ?ドロボーじゃね?」
 ケバい女が、更に煽ってくる。
 はあ?何その言いがかり。さすがの私もカチンとくるわ。
「空だったから捨てたのよ!中身が入ってなきゃゴミでしょ!空き缶!」
「ちょっとこのガキ、生意気じゃね?」
「おいガキ、大人なめてっと痛い目みちゃうかもよぉ~?」
「やだぁ、泣かしちゃうんじゃん?」
 女たちがゲラゲラと笑う。
「うっせーな、シツケだよシツケ!!」
「こっわwww」
 こいつら、マジで腐ってんな……。
 私は、自分を林のように取り囲んだチンピラたちを睨みつけた。
 その時、スッと目の前に誰かが立ち塞がった。
 私をかばうように、ソラタが私の前に立っていたのだ。
「やめてよ。あっち行け!」
 ソラタは精いっぱい声をはりあげる。
「はあ?なに言ってんの?このオバサン」
「つかさっさとどけや!俺らの席だしココ」
 タンクトップ男がソラタの肩をつかむ。
「やだ!」
「やだじゃねぇよ!」
 男が右の拳を振りかぶった。
 やばい、ソラタが殴られる!
「ちょっ……!」
 私はとっさにソラタの服をつかんで引っ張った。
 ばきっ。
 拳は頬にクリーンヒット。
 しかし、殴られたのはソラタでも私でもなかった。
「いってぇ……」
 頬を抑えている若者に、なんとなく見覚えがある。でも、こちらに背を向けていて、背丈もだいぶ違うので、顔がよく見えない。
「なんだてめぇ……」
「通りすがりの、顔見知りです」
「てめぇにゃカンケーね―だろ。部外者はすっこんでな」
「いやでも、これはちょっとひどいでしょ。子どもが見てるのに、女性殴るなんて」
「じゃあ、てめぇなら殴っていいんだな?」
「いや、そういうわけじゃないですけど」
「もうやっちゃいなよー!」
 女がゲラゲラ笑いながらけしかける。
「いや、やめましょ?もう。僕、ケンカとかできませんし」
「うるっせーよ」
 チンピラたちは、若者を囲んで神社の裏の方へ追い立てていく。神社の裏は小さな林のようになっている。あたりはもう暗くなりかけていた。
(やばい……誰か、警察を……)
 誰だかわかんないけど、助けてもらっといてほっといて逃げるわけにはいかない。
 私は必死であたりを見回した。
 すると、なぜかソラタが彼らを追いかけて林の方へと駆け出した。
「え、ちょっ、なんで!?」
 私は慌てて追いかける。
「待てー!おにいちゃんを、いじめるな!」
 ……おにいちゃん?
「あっ!あの子、もしかして」
 ソラタを追いかけながら、私はようやく閃いた。
 そうだ、あの少年だ。
 記憶を辿っていたら、砂利に足を取られて私はバランスを崩した。
 子どものからだって、どうしてこう、バランス悪いんだろう。脚、短すぎて全然進んでる気がしないし。
 そしてとうとう転んでしまう。
 どてっ。
「いたっ!」
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