奇怪なる談話を

イスクラ

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咲いた牡丹雪

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 静かに牡丹雪の積もる夜、私は明日、朝一に学校の雪かきをするため、宿直室に泊まることになった。自分のくじ運を恨みつつ、テキパキと準備を進める。
 外を見ると、もうかなり積もっている。
「……明日いつ起きるかな」
 と、現実逃避のために雪を眺める。すると、視界の端に何かが転がっているのを見つけた。宿直室に入る前に、校内の見回りを済ませたはずだが、とりあえず回収しに行くことにした。

 ライトは……いいか。

 少し雪に埋もれたそれを掘り起こすと……どうやらシュレッダーのようだ。何故? と思ったが、持ち上げてみると、異様に重い。そして、紙というより水っぽいものが入っているようだった。
 雪でも入っているのか。そう思い、蓋を開けてその場に捨てる。それは思っていたよりも、雪に深々と埋もれた。そのとき私は
「しまった、水を含んだ紙屑だったか」
 と、横着してライトを持ってこなかったことに後悔する。まあ、明日片せばいいだろうと、そのまま戻った。
 さて寝るかと、防寒具を脱ぐと、それは赤く染まっていた。シュレッダーを持った部分だけが、真っ赤になっていた。
 急いでロッカーの奥にあるライトを取り出し、もう一度、捨てたものを見に行く。恐る恐るライトを照らすと、そこには、骨と血の混ざった肉塊が雪を赤くしていた。
「な……なんだこれ……。け、警察……」
 と携帯を取り出そうとしたとき、後ろから聞き覚えのある、シュレッダーの音が聞こえた。


「……あれ?」
 今日、宿直担当になった同期の雪かきを手伝うために、朝一に学校に来たものの、雪かきが全く進んでいない。というより、やった形跡がない。
「……あぁ、そうだった。今日、宿直担当はな」
 勘違いをした自分を戒めつつ、雪かきを始める。
「そういえば、なんで、この学校に同期がいるって思ったんだ?」

 雪にぽっかりと空いた穴を見ながら、そう思った。
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