半監禁結婚

にくだんご

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2年前と何も変わらない。私は歪んでいる。

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昨日はほとんど寝れなかった。彼女の寝顔を見ると、いても立ってもいられず、事務所に向かっていた。楽器制作や舞台の為の工具を持ち出し、自宅で作業を始める。自分のしている事が信じられなかったが、彼女が家を出て誰かと接した時、私を見限らない筈がなかった。ここ2年間一度も抱く事は出来ず、愛しているという言葉以外彼女に与えられるものなどなかった。

彼女への気持ちがブレた事はなかった。好きで好きで堪らない。彼女が自分をどう思っていようと、私は彼女を手放す事は出来なかった。
ウイルスによる自粛生活が無くなった今、ライブは2ヶ月に一度はあり、ファンで毎度チケットは売り切れる。曲作りに追われ、彼女にはほとんど構えない。
彼女に出会ってから描いている曲は、今回のライブで16曲目となる。第一部からCDは売れ行きが良く、本庄児江の初純愛曲として話題となった。

散歩から帰ると、彼女が電話をしていた。
「はい。すみません。今日は伺えないかと思います。はい、ご迷惑をおかけします。」
「華?」
電話を切ると華は怒っていた。朝食はもちろんなく、私をじっと見つめ口を開いた。
「外して下さい。」
「学校に電話したの?」
「椿の連絡先も、家族のもなくなってました。学校のは調べて電話をしました。」
淡々と話す。
「どうしてこんな事を。」
泣きそうな目で彼女が言う。
そんなの、華を失いたくないという理由しかなかった。
「学校にはなんて言ったの?」
「熱が出たと言いました。明日は行きます。今日は家でできる事をします。」
「俺が暫く行けないからキャンセルって言っとくよ。華はまだ働いちゃダメだよ。まだまだ子供じゃないか。」
彼女が驚いた表情をした。
「何を言っているんですか?子供なのは児江さんじゃないですか。」
華のこんな顔を見たい訳じゃない。ずっと俺に守られていればいいだけなのに。
「華。」
自分の携帯に着信が来た。迎えが来てしまった。今日は事務所に泊まり込みになりそうだ。
「今日は遅くなるから、先に寝ててね。」
「え、ちょ。待って下さい、、、。」
「何か困った事があったら電話して。俺の番号は残してあるから。」
「児江さん、、、。」
「夜に一回かけるね。華も寂しいでしょ?」
「児江さん!」
華が声を荒げる。初めての事だった。目が合うと深呼吸をして言った。
「貴方も、私を縛るんですね。」
試すような視線。答えは昨日決まっていた。
「華が俺には必要だから。」
顔を見ず、家を出た。おそらく、彼女は泣いていただろう。でもきっとすぐまた笑ってくれる。これが彼女の幸せから遠かる事だとしても、最後には自分が彼女を幸せにする。そうでなくては嫌だった。
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