雨上がりには

Two-dragon

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第二章 未来

31話 決着

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夏の終わり、最期の蝉の鳴き声が響くよく晴れた日だった。律子は昼休みに外に出て歯科医院の前から海を眺めていた。心地よい波の音を耳にしながらこの前香織に言われた事を考えていた。

(皆んなを傷付けた私が幸せになっていいのだろうか…)

その時、ポケットの中の携帯が震えた。

「ん?誰だろう?」

登録していない電話番号だった。

「はい」

「もしもし、律ちゃん?」

「はい。え?隆くん?」

「うん。久しぶりだね。元気?」

「うん…なんとかね…でもどうして?この番号を?」

「ごめん急に電話して。里奈ちゃんに教えてもらったんだ」

「え?里奈ちゃんから?」

「うん。この前さ、久しぶりに連絡もらって律ちゃんと前田くんの事を聞いたんだけど、その時に教えてもらったんだ」

「そうだったんだ…」

「律ちゃん怒ってる?」

「怒ってないよ、怒るわけない…」

「そっか…よかった」

「隆くん、元気?」

「うん、俺は元気だよ。それと俺、実家に戻ったんだ。あの部屋は広すぎるから…」

「そうなんだ…隆くん…ごめんなさい…迷惑かけて…」

「律ちゃんは悪くないよ。最初から何も…」

「でも…」

律子は言葉を詰まらせた。

「実はこの前、前田くんにも会ったんだ」

「え?!涼一に?」

「うん。彼も驚いていたけど里奈ちゃんの事を謝りたくてね。そしたら彼も律ちゃんの事を申し訳なかったって…」

「涼一がそんな事を…」

「うん。前田君はてっきり里奈ちゃんか、律ちゃんと一緒だと思ってたんだけど、どちらでもなかった。律ちゃんも地元に戻ったのを前田君に言ってなかったんでしょ?」

「うん…。涼一と会うつもりは無かったから…」

「そっか。でも前田くんの事を忘れられずにいるんでしょ?」

「それは…」

「どうなの?」

「わからない…」

「そっか。じゃあ、もう一度俺と付き合ってよ…」

「え?!隆くん?」

「俺は今でも律ちゃんが好きだ。だからもう一度やり直せたらって思ってる。律ちゃん…俺じゃダメかな?」

「隆くん…」

律子は深く呼吸をしてから隆に言った。

「隆くん、ごめん…付き合えない…」

「そっか…。わかった。ただこのままじゃ俺もツライから、今から前田君に会ってくるよ」

「え?どう言うこと?」

「彼に会った時、律っちゃんは渡さないって言っちゃったんだ。あまりにも彼の態度がはっきりしなかったから…。だからもう一回会ってケジメをつけてくるよ!俺もイラついてるから、会ったら喧嘩になるかもね。花火大会があった海で待ち合わせしてるんだ。じゃあ」

「ちょっと待って!隆くん!、隆くん!」

律子の呼びかけには応えず電話が切れてしまった。

(なんとかしないと…)

律子は仕事を早退して急いで海に向かった。

(涼一…隆くん…)

駐車場には涼一の車が止めてあった。

(涼一…)

律子は走って海に向かった。

(いた!)

「涼一!」

律子は声を張り上げて涼一の元へ駆け寄った。

「律子」

「涼一、無事なの?隆くんは?」

律子は慌てた表情で言った。

「ん?澤井さん?律子どうしたの?」

「え?隆くんから電話があって喧嘩になるかもって…」

「え?澤井さんが?俺は里奈から電話があって律子さんと一緒にいるから今から会えないかって。里奈と一緒じゃないの?」

「え?!里奈ちゃんが?」



「あっ!」

ふたりは顔を見合わせた。

「ふふっ。そう言うことね…」

律子は言った。

「だね…」

涼一も言った。

涼一と律子を遠くから見ていた隆と里奈は笑顔だった。

「やっぱり律ちゃん来たねー。里奈ちゃん、これで良かった?」

「うん。隆くんありがとう」

「これで俺もスッキリしたよ。律ちゃんにちゃんとフラれたし、新しい恋でもしようかな」

「そうだよー!隆くんモテるんだから!頑張ってね!」

「うん。里奈ちゃんも元気な赤ちゃん産んでね!」

「うん!ありがとう!じゃあね」

「うん。じゃあ」

隆と里奈は手を振ってその場を離れた。ふたりの幸せを願って。

涼一と律子は砂浜に座って海を眺めた。

「ねぇ、涼一、私たち何なんだろうね…。皆んなに迷惑かけたのに…皆んなこうして助けてくれる」

「うん。俺も同じ事を考えてた。なぁ律子…」

「ん?」

「俺さ、もう一度自分の気持ちに素直になって答えを出そうと思うんだ」

「え?」

「些細な喧嘩から別れてしまったから…。後悔したままなんだ…あの時からずっと」

「うん…」

律子は下を向いて頷いた。

「だから今度こそ逃げずに自分の気持ちに向き合って、それでもお互いの気持ちが変わらなければ日曜日の夕方この場所で逢おう。どう?」

「わかった…皆んなに迷惑をかけた分、ちゃんと答えを出さなきゃね…」

それからふたりは黙ったまま夏の終わりの海を眺めていた。
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