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15話 限界

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山を登り始めると川はやはり増水していてあまり近づくのは得策では無かった。
その為に『頂上』へは別ルートでいく事になる
元々観光で登山が出来る山でありそのルートに変更した。


「俺ですら流石に重いな」
「もし無理そうでも少しずつを往復して運びましょう」
「確かにそれなら運べるな」

休憩もしながら登って登って
残していた飴を休憩し舐めたりもする
大した腹の足しにはならないがエネルギーは補給出来た。


「水……もないのは辛いですね」
「綺麗な葉っぱを舐めるといい」
「なるほど」

確かに綺麗な葉っぱに水たまりが出来ている
それを少しだけのむ
危険性は承知なのだが何時間も山を登るのに水なしは厳しい


そしてまたあっという間に動けなくなる

「これだけ荷物があれば当然だ」
「夜になる前に出来れば山頂に行きたいですね」
「荷物を少しずつ運ぶのはどうだ?」
「確かにその方が効率いいかもしれません」
「俺の方がずっと体力も力もあるからな」

ヒロがほとんどの荷物を往復して運び自分がその間に登る
非常に頼りなくて情けないが今は出来る事を精一杯
酷い空腹でも食料は上に行かなければ無い

「あと、少しッ」
「ふー……」

ヒロの息が切れて来るのを初めて感じた
かなりの荷物であり彼女でなければとっくに動けない
たどり着いた山頂には箱が出現していて

「なかみは―――あ!?」

触れた瞬間に『カップ麺』に変化
前は18個の個数だったが増えて22個入っていた。
今これほどまでに嬉しいものはない

「お湯っ!?いやもうそのまま」
「雨が振り出す前に……そうだコンロ!!」

鍋に頂上にほった穴に溜まっていた水を入れて沸かした
そしてカップ麺を入れて3分茹でる
既に日が沈みかけの中ようやく手にした食料
二人で分けてしっかり食べる

「美味しいッ」
「……何か味ちがうな?」

『かっぷめん しお』

「塩味ですね」
「あれだけ苦労して運んだ訳だが、その荷物どうする?」
「太陽の明るさがあるうちにテントの方は建てましょう」

中央に柱が無く上から見た時バツ印×となるタイプのドームテント
時間はそこまでかからず頂上に建てる事が出来た
着替えなどの荷物を中に入れていたら

ザーーーー!!

「ウワッ!?」
「チッ」

大雨が降りだし新しいテントに避難した
沢山の着替えとタオルで今はどうにか着替えて濡れた身体を乾かした
先ほどカップ麺を食べたが二人で二つだけではあまりにも足りない

「食料の心配はどんぐりもあるし今は食べていいんじゃねーかな」
「そうですね」

お互いの腹が鳴り響く
ぎゅぎゅると栄養がまだ足りない事を知らせてくる
ガスコンロを新しく広い方のテントに運んで鍋に湯を沸かした
二つ目のカップ麺(鍋に入れた)を食べればようやく腹の具合もマシに

「土砂降りですから動くのはせめて止んでからですね」
「何にせよあれだけの物を持って登ってきたし動くのは今夜もう無理」
「もう夕方なので朝まで寝ますか」
「賛成」

持ってきた寝袋を使い二人とも温かくして眠る
まだ夕方なのだが疲労とようやく手にした食料だ
夢の世界に入るのは思ったよりも早かった

翌朝1人目が覚めまだヒロが眠っている事に気付く


「ヒロさん?」
「……」

顔が赤くなっている気がして額に手をあてた
最悪な事にとても『あたたかい』温度
息はあり熱の他に症状が無い事を確認したのち箱を確認

出現していた箱に触れると『カロリーバー』と書かれた別の箱に姿を変えた。

「食べ物でしたよヒロさんッ!!」
「……そう、か」
「それと水を汲んできましたからこれ少しでも飲んで出して下さい」

民間療法の一種で水を大量に飲んで出す事で風邪を早く治す
詳しく覚えている訳ではないが今出来る最善だ
カロリーバー4本入った物が全部で22ありこれなら当分の間食料に困らず済む

「飯?」
「こちらかなりの数ありますので食べれるだけ食べて大丈夫ですよ」
「全部でどれぐらいある?」

箱を開けて見せて確かめて貰う
ほっと一息ついて食べてくれたし外でトイレも済ませてこれたようだ
本当はガスコンロの残量からして使うのはさけたい
けれど『生水』をのむのは日常生活であれば止めた方が良い

未知のウイルスや寄生虫のリスクが非常に高いのだ

「……よしっ」

酷い雨で泥水のようになっていたが
前に作った風呂を浄化する装置と『カイロ』の合わせ技
使ったのは中身であり正体は鉄の粉と炭だ
無人島サバイバルの特番などを見ればろ過装置として知る者は多い
透明な水を更にろ過して煮沸して安全な水を作りヒロへ


「温かいな」
「煮沸しましたからね」
「……すまねぇ」
「熱が下がるまで大人しくしてて下さい」

本日の天気は晴れでそれもかなり温かい
今まで登山などで泥だらけになった服を洗う
ろ過装置はかなりの力を発揮してくれ透明な水で洗う事が出来たが
洗濯の最中に箱が出現した。
触れてみれば1本のロープに変化した
少なくとも『100円で売っているなわとび』よりは太いし長い
本来であればこのロープを使用して山を登るのだろう

「丁度いいものですね」

木と木の間をロープで結んで固定した
そこまで力が無い彼だが枝に引っ掛けて2重に結べば多少の重みで落ちはしない
洗った服をひっかけていくが洗濯バサミなど無い
風でもふけば全てが落ちてしまう

「んー」

仕方なく渇くのが遅れるが袖などをロープに結んだ
靴下の方元々あった観光用の椅子をキレイにして干物のように干す
テントに戻り新しく手にしたカロリーバーを食べてみれば特にコレという味も無い
プレーンとでも言うべきだろう


「タロウ」
「まだ起き無い方が」
「熱が下がってきたから軽い作業なら出来る」
「なら洗濯ものの見張りをお願いします」
「……お前は一人でどこか行く気か?」
「すぐ戻って来れる範囲に『シルシ』をつける事と薪を拾わないとですから」
「遠くへは行かない方が良い」
「明るいうちに薪を確保しなければ後でもっと悲惨な事になりますから」


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