異世界転生した女勇者と山を登る話

宝者来価

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52話 虎

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トイレに行くのすら危ないこの状況

「3人もいてテントの中で事をするのはキツイ」
「そんぐらい我慢できそうだけどな」
「いえ最終盤面だからこそ無理は禁物よ」
「幸い虎は遠いから今なら外で出来るかな」

トイレを三人とも外で済ませた
天気次第では行くが状況によってはここで100日を使うかもしれない
『清潔』というのは思いのほか大事だ

「ヒロさんご自分の回復を」
「……トラが狩れなくなるぞ」
「今までは運が良かったのですが吹雪が止むまでどれほどかかるか」
「剣が握れなくなるのは不味いっていいたのよね?」
「カイフ」

ヒロの指は治療出来たので必死に暖を取る
ガスはまだあるが使いすぎて凍えるのは避けたい
しかしテントの中ですら寒い

「寝袋に包まれて何とかしのごう」
「火じゃダメなのか?」
「量を確認したけど1日3時間使ったとして7日しかもたない」
「これだけの寒さでか!?」
「あら?外に虎じゃないけど何かいるわ」

外を確認したら猿が
今更そこまで脅威ではないが五月蠅い
キーキーウキャウキャとテントの傍で

「だーもううるせぇ!!」
「切ってこれる?」
「あんな猿程度なら速攻で」
「お願い」

猿のモンスターを狩って戻って来たヒロがいう

「なんか虎の様子がおかしいんだよな」
「こちらを狙っているとか?」
「逆に怯えているっていうか近づいてくる気配がねぇ」

『……俺がいるから、いや考えすぎか?』

「ウサギ定石は何か思い当たったの?」
『俺の名はオセロの技名なんだが』
「オセロが関係するとでも?」
『もう一つの選択というか虎定石というのがある』
「虎定石?」
『オセロにおいてウサギと虎はライバルに等しい』
「訳がわかんねぇがお前がいるから虎は嫌がっている?」
『可能性の話だ……嫌な臭いがしているとかの可能性だって』
「いやウサギ定石なんて名前をつけるくらいだから隠れバフはあるかも」

ヒロは持って来たものを中央においた
「そんで猿を攻撃したらこれが出た」

焚火台だったので中央に置いて持って来た固形燃料に灯をつけ
酸素を吸引してから皆で就寝した
翌朝に外の様子を軽く見たが虎はくる気配が無い
箱に触れれば木の杭に変わる

「これ燃やして暖とるほうがいいな」
「寒いわねほんとに!!」
「……うん」

しっかり寝袋をかぶっていてもまだ寒い
テントの中ですらこれなのに今すすむのは危険すぎる
停滞を決意してガスコンロで火をつけ白湯を作り飲む

「あったかいお湯ってだけなのに世界一美味しいわ」
「……もしかしたら彦星を置いていく判断になるかもしれない」
「そう?いいわ別に」
「まじで?」
「左手さっきから動かしてない」
「……そうね、ごめん早くいうべきだったわ」
「痛みはどれぐらい?」
「動けない訳ではないけれど文字通りアタシがいたら荷物になる」
「そりゃあ分かったがそうなると」
「でもまだゲームオーバーにはならないでね」
「アタシがいたら食料が」
「出発する日におとりが必要だから」
「兄さん……あとで覚えてなさいよ」

雪を溶かしては水にして飲み
ウサギ定石に周囲を探ってもらったりしたが
吹雪は何日も止まずに

「飯が……減って来たな」
「食料か、どうするか」
『一人外に出て箱にふれてくれ』
「おかえり―――え、箱?」
『虎が近かったので切りつけたら箱になった』

非常にリスキーだが彦星が立ち上がった

「アタシが行くわ」
「何かあれば速攻で戻ってね」

20分ほどでウサギ定石と共に彼は戻って来た
持っていたのはガス缶
もうすでに切れかけていたので非常に助かった。

「良かった」
「……ごめんなさい、あたしここ、まで」

彦星が倒れエフェクトと共に消えてしまった
外の気温が入り込みその原因が明確に分かった
とにかく人が殺せるほどに寒い
悲しむ余裕もなく入り口を閉じてガスコンロに灯をつけた

「彦星―――くん」
「惚れた女の為に死地に行くのはどの世界でも心にささるな」
「ともかく僕らはクリアしなくちゃ」

彦星がいなくなり食料の問題が少しうすくなった
残酷な言い方かもしれないがクリアの為に冷静に
この寒さで泣いたらいけない

「クリアしたらの時にとっておけ」
「う゛ん゛ッーーー」
「お前が登れなくても俺がのぼれば終わるならなんとでもなる」
「励ましてくれてありがと……ヒロさん」
「おっぱいもむ?」
「いいシーンだと思うんですけど」
「励ませるかと思ったんだが」
「……これをクリアしたら、その時は」
「お?」
「お付き合いしましょうか、僕たち」
「一発とかじゃないんだな」
「まずはお付き合いからで!!」

ヒュゴォッ!!
吹雪の音がさらに大きくなる
途中で防具(防寒機能あり)が出た物のそれでも寒い

「先にすすめねぇのが厄介だな」
「吹雪で前が見えない中で進むのも厳しい」

ガス缶のおかげでさらに二日が経過した朝
出たのはレトルト食品
さらに天候が昨日よりも少しだけ暖かい

「行こう」
「……分かった」
「まず暖かい食事をして体を温めて」
「ああ」
「ストレッチしっかりしてほぐしておく」
「ぜってぇクリアして妹さんを助け出そうぜ」
「ソラミは強いから元気になったらそれだけで幸せに生きてくれるよ」
「大した自信だな」
「これだけ愛してもらえる自慢の妹なんだ」

運ばれた荷物を見る、4人いたからこそこらえてどうにか出来た。

「僕ら4人で―――」
「お前の友達も数えてやれよ?」
「あ」
「友達は大切にな」


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