幼女魔王のオプション装備になりました~エンディングのその先に~

春猫

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プロローグ:少年期の忘れ物

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 小学生の頃に死んだ爺さんの何回忌だかわからんが、田舎特有の延々といつまでやるんだよって感じの法事に呼び戻された俺は、昔の俺の部屋(現・物置)での発掘で見つけた昔のゲーム機を、今では放送が見られないアナログのブラウン管のテレビに接続し、これまた発掘した未クリアの中古屋で買ったRPG(箱無し)をプレイしていた。

 到着時にはそれなりに歓迎はされたものの、妹が子供を連れてやってくれば爺婆の関心は孫に集中する。
 まあ、そうでなくともアラサーの息子に対する親の態度なんて、そうそうベタベタしたものではない。

 放置され、することも無いため、最初は漫画を発掘して読んでいたのだが、段ボール箱の中身を掘り返している内に「そういや、これクリアしてなかったなぁ」というRPGを見つけてプレイしてみることにしたのだ。

 小学生時分、確か、これを買った後に人気のRPGシリーズの新作が出て、途中でそっちに手を出して、その後やらなかったんだよなぁ……。
 グラフィックは実にお粗末、モンスターもどっかで見たような、それでいて「パクリだ!」と訴えられないラインを狙ったせいで、余計に微妙な感じになってしまっている。
 小学生の感性だと「モドキ」「偽物」といった印象が強かったのも、未クリアで放置した原因の一つなんだろう。
 2Dドット絵のグラフィック精度でパクリもへったくれも無いと今なら思うけどな?

 ストーリーも割りと有り勝ち、魔王の軍勢が魔界から侵略して来て、勇者がそれを追い払い、最終的に魔界にある魔王の城まで乗り込んで魔王を倒して元の世界に戻り、ヒロインと結婚してめでたしめでたしで終わる。
 
 独自性は戦闘システムやシナリオではなく、当時としては珍しく、最終的に結ばれるヒロインが進め方によって変わるというマルチヒロイン制にあるんだな、今、プレイするのに説明書を読んで「ある意味時代先取りで凄いんじゃね?」と感心した。
 他はとことん有り勝ちなのに、なんとヒロインは12人+隠しキャラ1人というえらく偏った力の入れ具合である。

 普通に進めるとヒロインはお姫様なのだが、宿屋の娘やパーティーの仲間、敵である魔王軍の密偵や将軍など実に様々なヒロイン候補が存在する。
 なんせ説明書(中古屋で買ったんで本物の説明書が付いていなくて、白黒のコピーなんだがな)の半分がヒロインたちの説明なんだ。
 なんかPCのエロゲの企画を流用したんじゃないかとか勘繰りたくなる。
 
 やってる内に思い出した投げ出した理由その2、出てくる敵の強さ調整が適当過ぎる。
 楽勝で戦ってたエリアから少し移動しただけで、あっさりとこちらを全滅させるようなザコ敵が出てくる。
 先に進むには、また戻って延々レベル上げしないと対応出来ない。
 町で売ってる装備がその周辺に出るモンスターと釣り合っていない。
 持てるアイテム数の上限も低いから、たくさん回復アイテム持って強めの相手と戦ってレベル上げなんてのも難しい。
 戦闘に快感が無く、ストレスにしかならない。
 
 大人になった今で、しかも暇で暇でたまらないから進められてるようなもんだよなぁ。
 アクションゲームとかなら延々と続けたりも出来るが、小学生にとって進展の遅いRPGなんてのは苦行に他ならない。

 今だと同人とかでもこれを遥かに上回るレベルの作品あるからな、当時、名作と呼ばれていたゲームでも今のゲームしか知らない子たちからは「クソゲ」呼ばわりされたりもするし……。

 なんの情報提供も無しに、壁すり抜けをしないと行けない場所経由しないとラストダンジョン行けないとか完全にクソゲだよ。
 
 でもって魔王城、エンカウント率高過ぎ。
 一歩ごとに戦闘とか、これテストプレイとかしてないんじゃないかってレベル。
 その癖、割とあっさりと倒れる魔王。
 倒したと思ったら変身……なんてこともない。
 
 そして妙に力の入った魔王城崩壊の演出。
 なんか見てるこっちの体まで揺れてる様な気がする。

 え?
 ……ちょ、ちょっと待て、おい。
 なんか石の欠片がコツコツと当たってるぞ?
 何故か痛みは無いから夢か?

「お父しゃま?」
「すまぬな、そなたに光溢れる世界を与えてやりたかったのだが……」
「お父しゃま、いたい、いたいの?」
「ああ、お前を置いていってしまわねばならないことが実に心残りだ……」
「どっかいっちゃうの?」
「遠い、遠いところだ……ふっ……二つの世界で恐れられたこの身でも、今はこれが精一杯か……バトラーゴーレム、娘を守れ!」

 魔王と幼い娘の別れか……。
 え?
 こっち見んな!
 もしかして俺がバトラーゴーレム?
 
「幸せになるんだぞ、エリカ……」
「お父しゃま、お父しゃま!」
 魔王が抱きかかえた娘を渡してくるのを受け取る。
 体の動きはオートモード、俺の意思は介在していない。
 胸と腕に感じる幼児特有の体温の高さと柔らかさ。
 ……これ、夢じゃないよなぁ、どう見ても。

 魔王が魔法をこちらに放つ。
 次の瞬間、俺たちは外に出ていた。

「光溢れる世界を与えたかった」そう言った魔王の言葉が理解出来る陰鬱な空に荒廃した地表。
 吹く風も埃っぽく、それでいて身を切るように冷たい。
 余り外からの影響を受けないっぽいこの体で冷たく感じるのだから、生身の人間だと凍りつきそうな寒さに感じるに違いない。
 この状況で動けるだけでなく、魔王を倒しちゃった勇者って凄いよな。
 泣き疲れたのか腕に抱えた幼女は眠ってしまっている。
 見回す全ての方向に城の姿は見えない。
 離れた場所に転移されたようだ。

 さて、なんとか落ち着いたトコで現状を確認しよう。
 
 俺=バトラーゴーレムってのはほぼ確定だな。
 なぜこうなってるかは全く不明。
 転生でも召還でも無いよな?
 ゲームのエンディング見てたらこうなってるんだもんな、しかも二十年近く放置してたゲーム。
 おそらくはそのゲームの世界、ないしはそれに極似した世界なんだろう、魔王がなんかそれっぽかったし。
 自分の外見は鏡とか無いから分からないが、ほぼ人間に近い形状をしているのだということは分かる。
 手とか質感はセラミックっぽいけど指は五本だし、かぎ爪や水かきも無いしな。
 魔王の最後の力で生み出した眷族で、「娘を守れ」と指示したトコから言うと強さ的には雑魚ではないだろう。
 守るか逃げるか、どちらかの能力が高いはず。
 ゲームみたいに「ステータス」とか見られるといいんだけどな。
 あるいは自分を「鑑定」出来たりとか?
 ま、ダメもとで「ステータス・オープン」……出ちゃったよ、なんか空間投影っぽい半透明のスクリーン。

 種族、バトラーゴーレム、名前……入力してください?
 名前無いのかよ、元の名前使うのも変だしなぁ……。
「『三太夫』で!」
 内面が俺じゃ優雅な執事なんて似合わないし、この子お姫様だろ?
 じゃ、世話役、爺やで三太夫でいいだろ?

 HP65535MP65535、これって多いのか少ないのかわからんな?
 ってかFFFFだよな、この数字?
 ステータス軒並みA~Exって裏ボスかよ!?
 スキルも執事スキル(何故か「神出鬼没」とか「存在感希薄化」とかの盗賊とか暗殺者っぽいスキルまで含まれてる)から戦闘スキル(さっきまでやってたゲームで見た様な魔法もあるな)までカンストっぽい感じで並んでるなぁ……。
 称号、魔王のオプション?
 独立した個体じゃなく、この子のオプションパーツ扱いかよ。
 そのせいで思考や行動が制限されてんだな。
「元の世界に戻らなきゃ」どころか、「パソコンのハードディスクの中身を消去しなきゃ」とすら焦ったりしてないもんなぁ。
 アイテムボックスあるけど、あのゲームの仕様で数量制限アリ。
 しかも中身は全部、この幼女魔王こと魔王の娘の服とか靴とかアクセサリとかそんなもんばっかり……。
 あー、ただ、違うデザインの服でも普段着は普段着で一塊として処理してくれてるっぽいのは有り難い。
 おんなじ服ばっか大量とかどっかのアンドロイドじゃあるまいし、無意味だよな。

 自分に関してはそんなトコか?

 でもってエンディング後だから勇者は自分の世界に帰ってて、四天王は全滅、魔王も倒されて城も崩壊、元から余り恵まれて無い世界っぽいし、弱肉強食のリアルヒャッハーな世界になるな、きっと。
 勇者に倒されてある程度間引きされてるのが救いか?
 
 他に拠点となる場所や頼れる相手が居るなら勇者に乗り込まれた時点でこの子をそっちに移動させてただろうから、そういう場所や存在も無し。

 どっかの城とかダンジョンとか乗っ取るか?
 それとも行ける様なら別の世界へ行くか?
 少なくともここと勇者の居た世界を繋いでた魔法かなんかがあるんだから、他の世界へ行く方法はあるってことだよな?
 
 どの程度秩序が保たれてるのかは知らんが、辺境へ行けば行くほど中央の影響は薄れてるだろうから、逆にこうした事態では変動の影響が少ないであろう辺境へ向かうというのも一つの方向性だ。
 全ての魔族が戦闘特化だと社会形成自体が困難だからある程度は非戦闘員というか一般人というか一般魔族というか、モブ的存在は居るだろう。
 ゲームじゃ商人っぽい奴しか全く出てこなかったけどな?
 農村とか地方都市とかあるんじゃないかなと思われる。

 まあ、その辺はあんまり深く考えなくてもいっか……。
 なんせ俺はオプションだし、この子の安全を守りつつ希望を叶えるのが役割っぽいし、現時点でもまだ現実感ないしなぁ……。
 死んだだの、穴に落ちただの、魔法っぽい渦に巻き込まれただのそんなのなしに、ダラダラとゲームしてクリアしてエンディング見てただらけきった状態からのオートプレイ&イベント的転移だもんな。
 むしろ現実と考えるより、夢か俺が狂ったかの方がまだ理解の範疇にある。

 あ、アイテムの他に金の確認もしとかないと……。
 9,999,999,999,999ゴルド?
 あー、そういや魔界のなんか知らんけどあった道具屋だか行商人だかとかでも何故か勇者たちの世界の金が使えたよなぁ。
 ゲーム的いい加減さがこの際有り難い。
 しかもこの数字、実際にはもっとあるけど、表記の上限だからこんな感じになってるっぽい。
 さすが娘第一の前魔王、ありったけの金を寄越しやがったな?
 
 この金があるから勇者たちの世界に行っちまうのも一つの手だな。
 ヒロインに魔王軍の密偵や将軍が居た様に、エンディング後はあんまり問題にならずに魔族でもあっちの世界で暮らせるみたいだしな。

 一応、この世界では数少ない(ゲームプレイで通ったルートだからな)土地勘のある、勇者進攻のルートを逆に辿ってあっちの世界に行ってみるか?
 少なくとも、これから酷いことになりそうなこっちの世界よりはマシだろ?
 俺もこの子も勇者一行とかに全くエンカウントしてないしな。

 じゃ、仮の最終目的地を勇者たちがこっちに来た、あのなんかゲートっぽいトコとして、取り敢えずは移動してみますか?
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