幼女魔王のオプション装備になりました~エンディングのその先に~

春猫

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無理が通れば通り魔引っ越す……無理さんツエー!

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 ハエを追い払うように幼女魔王の気に障るモンスターを撃墜しながら歩いていたら、なんか鳥っぽい男が空から現れた。

「お前か! ワイバーンを落としまくってるって奴は!」
 耳にピアスがジャラジャラ、両耳ってバイだっけ?
 左耳だけがストレートだよな?
 きっとあだ名はルーズリーフだな。

 かなりの剣幕に関わらず幼女魔王は俺におぶさってぐっすりと寝ている。
 寝る子は育つとは言うものの、寝過ぎな様な気がしないでもない。
 まあ、父親である前・魔王を失って間もないし、そもそもがオプション装備に過ぎない俺がとやかく言う気も無いがな?

「魔王様から預かってる俺の配下になにしやがる! 勇者が魔界に入り込んで大変だって時に!」
 あー、情報流れるルートが無い上に、城に乗り込んだって情報は逃げた奴が流した可能性はあっても、それ以外は殺されたり、城が壊れた時に死んだりで顛末は知られてないよな。
 この幼女の称号が魔王になってることと、ゲーム知識、そして直前の状況から「魔王は死んだ」と俺は判断してるけど。週刊少年漫画やラノベなら「実は生きていた」とかでもおかしくないし……。

「勇者ならもう元の世界に帰ってる頃だと思うぞ?」
 何度聞いても俺の声としては違和感あるが、声優やれるくらいのイケメンボイスだよな、この体の声。
 人間の時の声、最初に録音したの聞いた時、自分の声ながら「キモッ!」って言っちゃったもんな、なんかベチャベチャした感じの声だったんだよ、元々の俺は。
 こんだけいい声だと、歌でも歌いたいトコだな、アニソンと小学校の時にならった唱歌くらいしか知らんけど。

「なんだと! それを知ってる貴様は何者だ!」
「幼女魔王のオプション装備だが、なにか?」
「おぷしょんってなんのことだ、お前、俺をバカにしてるだろ!」
 あー、この世界にはオプションって言葉は無いのか。
 面倒くさいな、どっかに製造者マークでも無いのか?
 俺って魔王謹製だよな?
 製造者印でもあれば説明しなくていいのにな。

「お前に分かる言葉で言えば、俺は生き物ではなく、魔道具の一種に過ぎないということだ!」 
「しゃんだゆー、うるしゃい!」
「申し訳ありません、姫」
 不機嫌そうに半覚醒状態で声を上げる幼女魔王。
 五月蠅く出来ないし、説明も面倒だから、このピアス男置き去りにしてバックレようかな?
 よく考えたら、律儀に相手してやる必要無いよな?
 幼女魔王が癇癪起こして、ワイバーンと同じになってもかわいそうだしな。
 うん、そうしよう。

「じゃ、そういうことで!」
「おう! ……ってなにさらっと立ち去ろうとしてるんだよ!?」
「ちっ!」
「思いっきり舌打ちしやがった!」
 もぞもぞと幼女魔王が起きそうな気配。
 もう、全部こいつのせいにして、幼女魔王の八つ当たりを受け止めてもらおうか?
「な、なんか嫌な予感がしたぞ? こ、こんなトコに居られるか!」
 後半部分死亡フラグだぞ?
「しゃんだゆー、みるく!」
「はい、姫様……」
 瞬間移動系のスキルもってやがった、あのピアス男。
 ほんとのギリギリで逃げやがった……って、あー、ゲームに出てきた伝令っぽい魔族、あいつ、あれか!?
 いつも勇者が来る直前まで居て、来る前に逃げてた奴!
 なんか、ゲームだともっとチャラい感じだっんで分からなかった。

 幼女魔王にスライムミルクいちご味を用意し、源氏パイに似たパイも一緒に渡す。
 途端に機嫌をすっかり直す幼女魔王。
 こういう単純さは仕えるモノとしては有難い。
 幼児期だけの話で成長すると変わってしまうかもしれないが、逆にぐずったりべそかいたりも幼児期ならではだしな。
 
 幼女魔王の機嫌が戻った絶妙のタイミングでピアス男が再登場。
「な、なんで魔王城が崩れてるんだ!」と騒いでいる。
 
「勇者が来たからだな」
「ま、魔王様は?」
「負けた」
「な、なんで貴様は魔王様の力にもならず、そんな平然としてるんだ!?」
「俺が生まれたのは魔王ー勇者戦のあと、すべては後の祭り」
「え?」
「でもってお前のやかましさに眉を顰めてるこちらにおわすお方が魔王の娘エリカ姫こと二代目魔王だ」
「こ、これは……」
「俺は先代魔王直々に『娘を守れ』と作られた存在だからな、お前がこれ以上姫に迷惑をかけるなら、永久に迷惑をかけないようにしなくちゃならない……分かるな?」

 ピアス男は膝をつき頭を下げて幼女魔王に従う姿勢を見せている。
 チャラい印象が強かったが、言動も含めて魔王に対する敬意と忠誠度は非常に高いようだ。
 
「しゃんだゆー!」
「はい」
「これ、やきとりー!」
「焼き鳥にしろと?」
「ちーがーうのー、これ、やきとりね?」

 幼女魔王の言いたいことを理解した俺は、ピアス男の肩をポンと叩く。
「良かったな、姫が配下として認めてくださるそうだ」
「おお、なんとも有難く……」
「でもって、これからお前の名前は『やきとり』な? 姫、直々の命名だ、有難くお受けしろ?」
「やきとりー、よろしくなの!」
「ははーっ!」
 
 ピアス男あらため、やきとりを配下に加え、幼女魔王はご機嫌だ。
 鳥っぽい外見からの連想だろうが「やきとり」とはなんとも哀れな名前だ。
 その名前の情けなさに反して、やきとりは転移魔法などの移動系の魔法も持っている上に、俺のゲーム仕様のアイテムボックスより数量的に優れた収納を持っている。
 優れ過ぎて必要な物を見つけるのが大変なんだがな。
 幼女魔王に献上しようとした、人間世界で手に入れたお菓子を見つけるのに三十分以上かかっていた。
 手探りで見つけるしか無いため、これでも大急ぎで運も良く早く見つけられた方なのだそうだ。

「で、どこに向かっているんだ」
「取りあえずは勇者が元の世界に戻るのに使ったゲートのあるところまでだな」
「ま、魔王様の敵討ちか? なら俺に任せろ!」
「いや、そうじゃなくてだな、これからこっちの世界、荒れそうだろ?」
「そ、そうだな、魔王様を恐れて大人しく従ってた連中が自分が上に立とうと争うだろうな、忠誠心の欠片も無く、単に力に従ってた奴も居るからな」
「姫は将来的にはそんなのは目じゃないくらい強くなるのは確定してるんだが、そこまでに時間はかかるし、なにより鬱陶しいし、姫の健やかな成長の妨げになるだろ?」
 彼女にとっては非常に珍しい人間世界のお菓子を食べて、幼女魔王はご機嫌麗しい。
 やきとりは一の配下としての面目躍如といったところだ。

「なるほど、まずは姫様の成長を優先するというわけか……」
「お前にかかる負担は大きくなるかもしれないが、俺は単なる付属品だし、次の世代の魔王配下のトップとしての下準備だとでも考えれば努力する甲斐はあるだろ?」
「うむ、大切な役割であることは分かってはいたが、伝令役しか務められない歯がゆさはあったからな、姫からいただいた『やきとり』の名にかけて粉骨砕身の働きを見せてみせよう」
 あー、一人だけとはいえ配下増えて少し気楽になったわ。
 俺は多少自律行動出来るとはいえ、他のオプション共は機能が制限され過ぎだしな。
 自分で最善を考えて動ける奴がいると楽できる。

 やきとりは空も飛べるし転移も出来る。
 偵察役としてはこれ以上ない人材だ。
 自発的に動き、配下のワイバーンを遠ざけたりもしてるんで、俺もいちいち排除する手間が省けてきちんと幼女魔王を両手でおぶっていられる。
 やきとりの配下には飛行系のモンスターが全部で500匹ほど居るとの話で、中には可愛らしい外見の小鳥じみたものも居て、幼女魔王のために呼ばれてペット的な役割を果たしている。

 ちなみにペットっぽいそのモンスターは「ほーおー」つまり鳳凰と命名された。
 やきとりの哀れさがより強調された気がする。

 ま、本人は気にしてないみたいだからいいんだけどな?
 こうしてやきとりとほーおーを仲間に加えた俺たちは、人間世界へと通じるゲートまでやってきたのだった。

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