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プロローグ
15
「……ったく、あいつら。いつまで迷ってるんだよ」
ぶつくさ呟きながら、リウーは魚の香草焼きをフォークの柄でほぐす。
シエルが見れば顔を顰めそうな行儀の悪さだったが、幸いこの場にシエルはいない。
作戦前に腹ごしらえにきたものの、イーシャとシエルは夕食選びに苦戦しているらしい。
イーシャは毎日食べたいものがいっぱいで、シエルは食中毒がトラウマになって、肉も魚も草も食べられなくなってしまった。
かれこれ10分近く帰ってこないので、座右の銘が『飯は熱いうちに食え』であるリウーは、お先に夕飯にパクついていた。
「まったく、地種の連中は優柔不断でいけねぇや。……な~~、レイ・ベーカー」
寂しくなったので、机の下にいる犬に猫なで声で話しかける。
落ちているイモの欠片の周りをグルグル回っていた犬が、差し出された魚にそっぽを向いて。
「その犬は喋るのかい」
「危険です、カイル様。どのような菌を持っているのか、分かったものではありません」
「…………は?」
リウーは今、人間、心の底から驚くと声が出なくなるものだということを痛感していた。
…………カイル様、カイルさま、……カイルサマ?
真っ白になった脳内を、グルグル回る言葉。
恐る恐る身体を起こしたにも拘らず、リウーは一度机の下に頭をぶつけた。
そして眼前──正確には向かい席に広がる光景に、リウーは自らの目を擦った。
整えられた赤毛に精悍な顔立ちの青年。
そして、喋る犬を不思議そうに検分する、絶世の美男子。
ヒガナ・オーエンと、その主人であるカイル・スペンサーが、そこにいた。
ヒースグレイ侯爵家長男、カイル・スペンサーが学生価格の香草焼きをちまちま食べている。
病床で見る夢のような光景であったが、間違いなく現実だった。
現実と向き合いがてら観察すれば、香草焼きは半分ほどになっている。あのちまちま食べのスピードから鑑みるに、ここで食事を始めてかなりの時間が経つことが推測される。
辺りを見回す。
遠くの席で、こちらを見ながらきゃあきゃあと騒ぐ女生徒たち。好奇の目を向けてくる男子生徒たち。
貴族や王族は、お抱え料理人のディナーを自室で食べるので、食堂でお目にかかれることはまずない。
当然といえば当然の反応である、
そして、リウーは見逃さなかった。
三列後ろの席で、シエルがふかしたイモに齧りついている。そして、リウーと目があうと同時に、首をすくめながらイモを隠し、ペロッと舌を出す。
「『僕、パス!』『ごめんねー』じゃないんだよ……!」
「すまないね。君があまりにも楽しそうに犬と話しているものだから、声を掛けるタイミングを逃してしまった」
「せ、せっ、せっ、せとか、」
「挨拶くらいされたらいかがでしょうか」
ついに正面から声をかけられ、リウーはぎぎぎと振り返る。
当社比満点の笑顔で「こんにちは」と言えば、「威嚇しているのか貴様!」と臨戦態勢に入るヒガナの隣で、「こんにちは」とカイルが微笑んだ。
「ところで、君のお友達にも挨拶がしたいのだけど」
「パヴロフくんはどこにいますか?」
「…………イーシャく……パヴロフくんに、何かご用でしょうか?」
顔を伏せたまま、リウーは目だけで二人の様子を伺う。
その碧眼の色に僅かに仰け反って、ヒガナは、カイルに何かの許可を求めるように視線を送った。
カイルは僅かに小首を傾げ、笑みを深める。返事の代わりに、短く詠唱を口ずさんだ。
同時に、3人の周りにごく小規模な結界が展開される。
防音魔術である。
「喋る犬について生物学的な観点から議論を行っている……ように、周囲からは見えるようにしておいたよ」
盗聴を防ぐ、主に密談などを行う場で用いられる魔術。
今更になって、リウーの背を嫌な汗が伝う。フォークを置いて、顎を引いた。
「先日の爆発事件。これがカイル様を狙った暗殺未遂であること、ここまではお気付きですね」
「…………」
「よろしい。そして、その主犯がパヴロフくんではないかという噂が、校内に広がっていることは」
「え……?」
怪訝に眉を潜めるリウーに、ヒガナは神妙な表情で一枚の紙を差し出す。
隔週で発行される、学生新聞だった。
そしてその見出しに、リウーの視線は縫い留められる。
「…………なんだよ、これ」
『ランバルド王国貴族に迫る魔の手。ノースリンデとの間に、再び暗雲』という大見出しに、炎上する競技場の写真が添えられている。
そしてその写真のピントは、イーシャに合わせられていた。
「模倣やこのような憶測を防ぐため、暗殺未遂や事件の仔細についても、我々は箝口令を敷いています」
「…………」
「しかし、あれだけの騒ぎともなれば完全に隠蔽するのは最早不可能です。両方の事件現場に居合わせ、かつ優れた魔術師ということで、特別疑いを向けられているようです」
「そ、それだけで⁈ そんなデタラメな憶測で──」
「何より、」
遮るように落とされた言葉に、リウーは上体を乗り出したまま口を閉じる。
我に返ったように、再び腰を下して。
「────何より、彼はノースリンデ出身です」
その言葉に、辟易したように眉間を抑えた。
近年は宥和政策が進められているとはいえ、200年前の戦争以来、ノースリンデとランバルド王国の関係は常に緊張状態にある。
十分な情報が開示されていない中。『ランバルド王国の貴族』と『ノースリンデ出身の主席』という要素が同じ場に揃っただけで、多くの人間はそれらを結びつけようとする。
リウーの脳裏を過るのは、真っ先にイーシャへと疑いを向けた魔法生物研究クラブ会長の怒声だった。
「……生徒会も、同じ見解ですか?」
諸々の罵言を吞み込んで。
赤毛をぐしゃりとかき乱しながら唸るリウーに、ここにきてカイルが「きみは違う?」と口を挟んでくる。
……質問しているのはこっちだ。
なけなしの理性で、喉元まで出かけた言葉を押しとどめる。
「…………まず競技場の件で言えば、真っ先に疑われるべきは爆発と共に防御障壁を貼った人間──スタンリー先輩ではないですか」
「彼は未来視の固有魔術を持っている」
「は……」
絶句する。
未来視は、文字通り未来を見通す力。
その範囲や条件に差異はあれど、未来予知の魔術を行使できる魔術師の名前は、歴史の教科書に度々登場する。
そして、生まれながらに個人に備わっている魔術刻印を使用して独自の魔術を顕現させる、『固有魔術』。
謂わば、その魔術師だけの特殊能力。
歴史に名を刻む大魔術師たちの偉業を、生まれながらに授かったとなれば。それは、まさに『祝福』と呼ばれてしかるべきだろう。
何より、スタンリーが未来視で爆発を予知していたとなれば、早すぎる防御障壁の展開にも説明がついてしまう。
「でも……!」
…………あの火薬は、ユタレヒト公爵の息子でもなければ手に入らない。
口を突いて出そうになった反論を、リウーは咄嗟に押しとどめる。
火薬の件について、ここで開示することはできない。
防音魔術がかかっているにも拘わらず、シエルの視線が背中に突き刺さっているように思えてならなかった。
それでも何か反論しようと口を開いて、しかし、リウーは言葉を継ぐことはできなかった。
リウーの言葉を掻き消して余りあるほどの勢いで、足元の犬が吠え始めたからである。
「っ、おい!レイ・ベーカー!」
破砕音。
「……は、」
「ヒガナ?」
立て続けに何かが砕けるような音が響いて。
机に突っ伏したヒガナの身体が、グラスや食器をなぎ倒した。
音に飛び上がった犬が猛然と駆け出すのと同時に、防音魔術が解ける。
すぐに、女生徒の甲高い悲鳴が響いた。
***
額に滲む脂汗。ヒガナの手足は痙攣し、口の端には泡が付いている。
すぐ近くに、吐瀉物に塗れた、食べかけの香草焼きとスープ皿が撒き散らされていた。
「…………またか?」
誰かのそんな呟きを皮切りに、食堂内には「香草」だの「食中毒」だのといった声が上がり始める。
約二週間前に起きた、香草焼き集団食中毒事件は、生徒達の記憶に新しい。
生徒の何人かが、養護教諭を呼ぼうと動き出す。
ランバルド王国のブースで食事を取っていた生徒が、鬼気迫る表情で、吞み込んだ料理を吐き出していた。
恐慌一歩手前の危うい空気に、リウーは覚えがあった。
「リウー! また君は何かに巻き込まれ、て────」
生徒たちの波を搔き分けて顔を出したシエルは、はたと口を閉じる。
一瞬、倒れる男子生徒を見下ろす友人が、全く知らない人間に見えたから。
焦燥に駆られるまま駆け寄るも、立ち尽くしたまま、赤毛の蓬髪は微動だにしない。
「ねえってば、リウー……、あ、パヴロフくん。今の今まで一体どこに────」
「ファルカス先輩」
リウーの肩を揺するシエルの脇に、イーシャが音もなく立っていた。
そしてその手には、水に満たされたコップが握られている。
「あ、そうだよ。食中毒なら、水を飲ませなきゃ。脱水症状になっちゃうよ」
苦し気に埋めくヒガナにコップが差し出されて。
きろ、と。
散瞳した碧眼が動く。
別の生き物みたいに跳ねたリウーの右手が、イーシャの手を掴んだ。
「…………水は駄目だ」
平坦に断言して、リウーはヒガナのスラックスの裾を捲りあげる。
「腫脹、見え辛いけど噛み痕もある。まだ新しい、発症までの時間も症状も一致してる」
「リウー、一体何を」
「レイ・ベーカー」
シエルの呼びかけを完全に無視して、小さく呟く。
ややおいて、女子生徒が引き攣った悲鳴を上げる。
同時に裂けた人波の間から、不細工な犬がテコテコ現れる。その口には、うねうね蠢く緑色の触手が咥えられていた。
緑色の触手を検分して、リウーは再び男子生徒の足首へと視線を戻す。
「いい子だ相棒」
「リウー……リウー⁈」
シエルが悲鳴を上げた直後、リウーは間髪入れずにヒガナの右腕側面に注射器を突き刺した。
先刻を上回る声量の悲鳴が上がるが、リウーは身じろぎひとつせずヒガナを凝視している。
平生の怯懦な様子は見る影もなく、その目には、どこまでも怜悧な光が差していた。
まるで実験生物にでも向けるようなその目付きに、シエルは一瞬息を呑んで手を伸ばす。
焦燥に瞳を揺らしながら、注射器を握る手首を縋りつくように抑えつけて。
ぱちり、と。
瞬いた碧眼が、焦点を取り戻す。
そしてすぐに、そこには元の怯懦なまだら模様が浮かんだ。
「……シエル?」
「何を打ったんだ」
「あ、え、」
「何を打ったんだって聞いてるんだ! 君は医師じゃない、万が一があればただ事じゃ────」
「あ、いや、悪い物じゃな──け、けけけけけけっせ、」
「血清だよ」
凛と響いた声に、リウーとリウーを羽交い締めにしていたシエルが同時に動きを止める。
食堂内も、幾分か落ち着きを取り戻す。
心地の良いテノールに、誰もが自然と傾聴の姿勢を取っていた。
「そこの犬が咥えているのは、ヘビ草だね。その咬傷から見るに、ヒガナの症状は食中毒ではなくヘビ草の毒によって引き起こされたものだ」
大衆に語りかけながら、カイルは流した視線でリウーに同意を求める。
強張った表情で頷いたリウーに、口端だけで微笑した。
「だから君は彼に水を与えるのを止めたんだ。なぜなら、」
「……ヘビ草の毒は、水を摂取した場合吸収効率が跳ね上がります。……何より、悪いのは時期だ。集団食中毒事件の直後となれば、誰もが食中毒を前提として応急処置に動きますから」
「悪い偶然だったね」
再び饒舌に語り始めようとするリウーに、カイルが微笑む。
はたと口を閉じ、強張った表情で顎を引く。
そして、こちらに──正確には、イーシャに集まる視線の種類が変わっていることに気付く。
──── 第三の暗殺未遂に、水で回りが早くなる猛毒。
瀕死のランバルド王国の人間に、ノースリンデの主席。
そしてその手には、水で満たされたコップが握られている。
その光景が、大衆の目にどう映るのかは言うまでもない。
己の失言に愕然とし、弾かれるように観衆を見回す。
そして、人壁の向こう。
見えたのは、結われた栗毛に、ゆるくたわんだ深い緑色の瞳。
視線が絡み合うのと同時に、男──ラグニアが、心底愉快で堪らないとでも言いたげな笑顔で、リウーに手を振った。
そして、
「惜しかったなぁ」
蠢く唇は、確かにそう言っていた。
思わず上躯を乗り出したリウーは、網膜を焼いた強烈な光に、すぐに仰反る。
光の出所を探れば、大事そうにカメラを抱えた男子生徒が、逃げるように人波に消えていくところだった。
「────……」
リウーは、己の頭頂から、血液がすうっと下に落ちていくような錯覚を覚えた。
呆然と、傍らで沈黙を貫くイーシャを見る。
藤色の瞳に、光は差さない。
虚ろな目で床を見つめるその四肢が、黒い糸でがんじがらめにされているように見えた。
そしてその黒い糸は、悪意と呼ばれるそれに違いなくて。
「会長」
カイルが、うっそりと微笑む。
リウーは、その笑みを見て確信する。
────「隠している物を出せ」と。
確かに、彼はそう言っていた。
「……シエル、解析を急ごう」
「な、なんだよ急に。解析はできてるって言ったろ。あとは経路の特定だけだよ」
「…………そうだな。早く吠えヅラかかせてやろう」
唸るような声音が、喧騒の中に静かに落ちる。
ひたひたと激情を滲ませる碧眼の危うさに、シエルはガシガシとヤケクソに頭を掻いた。
***
クラブ見学期間の最終日、第三言語クラブは花火を打ち上げる。
絶え間無い破裂音と共に夜空で弾ける無数の光は、しかし、窓の無いプレハブ小屋には届かない。
埃のこびり付いた室内灯が、チカチカ明滅する。
そのたびに、歪んだ鉄扉に、足の踏み場もないほどに雑然とした室内が浮かび上がる。
そして、机上に芸術的な積み方をされた魔術書と書類の海に、リウーは突っ伏していた。
緩慢な所作で上躯を起こし、青紫に変色した右腕側面へと視線を落とす。
朦朧とした碧眼は、完全に据わりきっていた。
うろうろと左手を彷徨わせ、ハンドル付きの木樽を開ける。そこから取り出したガラス管の中身を、空の注射器に注いでは右手に突き刺した。
「ァえ~~~~~~~~きぼちぃぇ~~~~」
棒切れみたいな体が、一、二度大きく痙攣しては小刻みに震える。
恍惚の表情でゲーゲー嘔吐して、机上に突き刺してあったナイフで右手首を切った。
バサバサと机から雪崩落ちた書物の山に、部屋の隅で犬がキュンキュン怯えたような鳴き声を上げる。
ぐわんぐわんと上体で緩慢に円を描きながら、震える左手で流れ続ける血を掬った。
ぶちまけられた書類に、血濡れの指を滑らせる。
絶え間なく綴られていく赤い幾何学を、焦点の定まらない目でただ眺めて。
「……………こんばんは」
第三言語クラブの部室のグロッキー化に精を出す指を止め、リウーは呂律の怪しい挨拶をする。
重い頭を擡げて、音もなく開いたプレハブ小屋の扉を見た。
「お待ちしてぁした、スタンリー先輩」
男──スタンリーは、開け放たれた扉の前に佇んだまま、ゆっくりと眼鏡を押し上げる。
背後で閃いた花火が照らした相貌には、薄笑みが浮かんでいた。
ぶつくさ呟きながら、リウーは魚の香草焼きをフォークの柄でほぐす。
シエルが見れば顔を顰めそうな行儀の悪さだったが、幸いこの場にシエルはいない。
作戦前に腹ごしらえにきたものの、イーシャとシエルは夕食選びに苦戦しているらしい。
イーシャは毎日食べたいものがいっぱいで、シエルは食中毒がトラウマになって、肉も魚も草も食べられなくなってしまった。
かれこれ10分近く帰ってこないので、座右の銘が『飯は熱いうちに食え』であるリウーは、お先に夕飯にパクついていた。
「まったく、地種の連中は優柔不断でいけねぇや。……な~~、レイ・ベーカー」
寂しくなったので、机の下にいる犬に猫なで声で話しかける。
落ちているイモの欠片の周りをグルグル回っていた犬が、差し出された魚にそっぽを向いて。
「その犬は喋るのかい」
「危険です、カイル様。どのような菌を持っているのか、分かったものではありません」
「…………は?」
リウーは今、人間、心の底から驚くと声が出なくなるものだということを痛感していた。
…………カイル様、カイルさま、……カイルサマ?
真っ白になった脳内を、グルグル回る言葉。
恐る恐る身体を起こしたにも拘らず、リウーは一度机の下に頭をぶつけた。
そして眼前──正確には向かい席に広がる光景に、リウーは自らの目を擦った。
整えられた赤毛に精悍な顔立ちの青年。
そして、喋る犬を不思議そうに検分する、絶世の美男子。
ヒガナ・オーエンと、その主人であるカイル・スペンサーが、そこにいた。
ヒースグレイ侯爵家長男、カイル・スペンサーが学生価格の香草焼きをちまちま食べている。
病床で見る夢のような光景であったが、間違いなく現実だった。
現実と向き合いがてら観察すれば、香草焼きは半分ほどになっている。あのちまちま食べのスピードから鑑みるに、ここで食事を始めてかなりの時間が経つことが推測される。
辺りを見回す。
遠くの席で、こちらを見ながらきゃあきゃあと騒ぐ女生徒たち。好奇の目を向けてくる男子生徒たち。
貴族や王族は、お抱え料理人のディナーを自室で食べるので、食堂でお目にかかれることはまずない。
当然といえば当然の反応である、
そして、リウーは見逃さなかった。
三列後ろの席で、シエルがふかしたイモに齧りついている。そして、リウーと目があうと同時に、首をすくめながらイモを隠し、ペロッと舌を出す。
「『僕、パス!』『ごめんねー』じゃないんだよ……!」
「すまないね。君があまりにも楽しそうに犬と話しているものだから、声を掛けるタイミングを逃してしまった」
「せ、せっ、せっ、せとか、」
「挨拶くらいされたらいかがでしょうか」
ついに正面から声をかけられ、リウーはぎぎぎと振り返る。
当社比満点の笑顔で「こんにちは」と言えば、「威嚇しているのか貴様!」と臨戦態勢に入るヒガナの隣で、「こんにちは」とカイルが微笑んだ。
「ところで、君のお友達にも挨拶がしたいのだけど」
「パヴロフくんはどこにいますか?」
「…………イーシャく……パヴロフくんに、何かご用でしょうか?」
顔を伏せたまま、リウーは目だけで二人の様子を伺う。
その碧眼の色に僅かに仰け反って、ヒガナは、カイルに何かの許可を求めるように視線を送った。
カイルは僅かに小首を傾げ、笑みを深める。返事の代わりに、短く詠唱を口ずさんだ。
同時に、3人の周りにごく小規模な結界が展開される。
防音魔術である。
「喋る犬について生物学的な観点から議論を行っている……ように、周囲からは見えるようにしておいたよ」
盗聴を防ぐ、主に密談などを行う場で用いられる魔術。
今更になって、リウーの背を嫌な汗が伝う。フォークを置いて、顎を引いた。
「先日の爆発事件。これがカイル様を狙った暗殺未遂であること、ここまではお気付きですね」
「…………」
「よろしい。そして、その主犯がパヴロフくんではないかという噂が、校内に広がっていることは」
「え……?」
怪訝に眉を潜めるリウーに、ヒガナは神妙な表情で一枚の紙を差し出す。
隔週で発行される、学生新聞だった。
そしてその見出しに、リウーの視線は縫い留められる。
「…………なんだよ、これ」
『ランバルド王国貴族に迫る魔の手。ノースリンデとの間に、再び暗雲』という大見出しに、炎上する競技場の写真が添えられている。
そしてその写真のピントは、イーシャに合わせられていた。
「模倣やこのような憶測を防ぐため、暗殺未遂や事件の仔細についても、我々は箝口令を敷いています」
「…………」
「しかし、あれだけの騒ぎともなれば完全に隠蔽するのは最早不可能です。両方の事件現場に居合わせ、かつ優れた魔術師ということで、特別疑いを向けられているようです」
「そ、それだけで⁈ そんなデタラメな憶測で──」
「何より、」
遮るように落とされた言葉に、リウーは上体を乗り出したまま口を閉じる。
我に返ったように、再び腰を下して。
「────何より、彼はノースリンデ出身です」
その言葉に、辟易したように眉間を抑えた。
近年は宥和政策が進められているとはいえ、200年前の戦争以来、ノースリンデとランバルド王国の関係は常に緊張状態にある。
十分な情報が開示されていない中。『ランバルド王国の貴族』と『ノースリンデ出身の主席』という要素が同じ場に揃っただけで、多くの人間はそれらを結びつけようとする。
リウーの脳裏を過るのは、真っ先にイーシャへと疑いを向けた魔法生物研究クラブ会長の怒声だった。
「……生徒会も、同じ見解ですか?」
諸々の罵言を吞み込んで。
赤毛をぐしゃりとかき乱しながら唸るリウーに、ここにきてカイルが「きみは違う?」と口を挟んでくる。
……質問しているのはこっちだ。
なけなしの理性で、喉元まで出かけた言葉を押しとどめる。
「…………まず競技場の件で言えば、真っ先に疑われるべきは爆発と共に防御障壁を貼った人間──スタンリー先輩ではないですか」
「彼は未来視の固有魔術を持っている」
「は……」
絶句する。
未来視は、文字通り未来を見通す力。
その範囲や条件に差異はあれど、未来予知の魔術を行使できる魔術師の名前は、歴史の教科書に度々登場する。
そして、生まれながらに個人に備わっている魔術刻印を使用して独自の魔術を顕現させる、『固有魔術』。
謂わば、その魔術師だけの特殊能力。
歴史に名を刻む大魔術師たちの偉業を、生まれながらに授かったとなれば。それは、まさに『祝福』と呼ばれてしかるべきだろう。
何より、スタンリーが未来視で爆発を予知していたとなれば、早すぎる防御障壁の展開にも説明がついてしまう。
「でも……!」
…………あの火薬は、ユタレヒト公爵の息子でもなければ手に入らない。
口を突いて出そうになった反論を、リウーは咄嗟に押しとどめる。
火薬の件について、ここで開示することはできない。
防音魔術がかかっているにも拘わらず、シエルの視線が背中に突き刺さっているように思えてならなかった。
それでも何か反論しようと口を開いて、しかし、リウーは言葉を継ぐことはできなかった。
リウーの言葉を掻き消して余りあるほどの勢いで、足元の犬が吠え始めたからである。
「っ、おい!レイ・ベーカー!」
破砕音。
「……は、」
「ヒガナ?」
立て続けに何かが砕けるような音が響いて。
机に突っ伏したヒガナの身体が、グラスや食器をなぎ倒した。
音に飛び上がった犬が猛然と駆け出すのと同時に、防音魔術が解ける。
すぐに、女生徒の甲高い悲鳴が響いた。
***
額に滲む脂汗。ヒガナの手足は痙攣し、口の端には泡が付いている。
すぐ近くに、吐瀉物に塗れた、食べかけの香草焼きとスープ皿が撒き散らされていた。
「…………またか?」
誰かのそんな呟きを皮切りに、食堂内には「香草」だの「食中毒」だのといった声が上がり始める。
約二週間前に起きた、香草焼き集団食中毒事件は、生徒達の記憶に新しい。
生徒の何人かが、養護教諭を呼ぼうと動き出す。
ランバルド王国のブースで食事を取っていた生徒が、鬼気迫る表情で、吞み込んだ料理を吐き出していた。
恐慌一歩手前の危うい空気に、リウーは覚えがあった。
「リウー! また君は何かに巻き込まれ、て────」
生徒たちの波を搔き分けて顔を出したシエルは、はたと口を閉じる。
一瞬、倒れる男子生徒を見下ろす友人が、全く知らない人間に見えたから。
焦燥に駆られるまま駆け寄るも、立ち尽くしたまま、赤毛の蓬髪は微動だにしない。
「ねえってば、リウー……、あ、パヴロフくん。今の今まで一体どこに────」
「ファルカス先輩」
リウーの肩を揺するシエルの脇に、イーシャが音もなく立っていた。
そしてその手には、水に満たされたコップが握られている。
「あ、そうだよ。食中毒なら、水を飲ませなきゃ。脱水症状になっちゃうよ」
苦し気に埋めくヒガナにコップが差し出されて。
きろ、と。
散瞳した碧眼が動く。
別の生き物みたいに跳ねたリウーの右手が、イーシャの手を掴んだ。
「…………水は駄目だ」
平坦に断言して、リウーはヒガナのスラックスの裾を捲りあげる。
「腫脹、見え辛いけど噛み痕もある。まだ新しい、発症までの時間も症状も一致してる」
「リウー、一体何を」
「レイ・ベーカー」
シエルの呼びかけを完全に無視して、小さく呟く。
ややおいて、女子生徒が引き攣った悲鳴を上げる。
同時に裂けた人波の間から、不細工な犬がテコテコ現れる。その口には、うねうね蠢く緑色の触手が咥えられていた。
緑色の触手を検分して、リウーは再び男子生徒の足首へと視線を戻す。
「いい子だ相棒」
「リウー……リウー⁈」
シエルが悲鳴を上げた直後、リウーは間髪入れずにヒガナの右腕側面に注射器を突き刺した。
先刻を上回る声量の悲鳴が上がるが、リウーは身じろぎひとつせずヒガナを凝視している。
平生の怯懦な様子は見る影もなく、その目には、どこまでも怜悧な光が差していた。
まるで実験生物にでも向けるようなその目付きに、シエルは一瞬息を呑んで手を伸ばす。
焦燥に瞳を揺らしながら、注射器を握る手首を縋りつくように抑えつけて。
ぱちり、と。
瞬いた碧眼が、焦点を取り戻す。
そしてすぐに、そこには元の怯懦なまだら模様が浮かんだ。
「……シエル?」
「何を打ったんだ」
「あ、え、」
「何を打ったんだって聞いてるんだ! 君は医師じゃない、万が一があればただ事じゃ────」
「あ、いや、悪い物じゃな──け、けけけけけけっせ、」
「血清だよ」
凛と響いた声に、リウーとリウーを羽交い締めにしていたシエルが同時に動きを止める。
食堂内も、幾分か落ち着きを取り戻す。
心地の良いテノールに、誰もが自然と傾聴の姿勢を取っていた。
「そこの犬が咥えているのは、ヘビ草だね。その咬傷から見るに、ヒガナの症状は食中毒ではなくヘビ草の毒によって引き起こされたものだ」
大衆に語りかけながら、カイルは流した視線でリウーに同意を求める。
強張った表情で頷いたリウーに、口端だけで微笑した。
「だから君は彼に水を与えるのを止めたんだ。なぜなら、」
「……ヘビ草の毒は、水を摂取した場合吸収効率が跳ね上がります。……何より、悪いのは時期だ。集団食中毒事件の直後となれば、誰もが食中毒を前提として応急処置に動きますから」
「悪い偶然だったね」
再び饒舌に語り始めようとするリウーに、カイルが微笑む。
はたと口を閉じ、強張った表情で顎を引く。
そして、こちらに──正確には、イーシャに集まる視線の種類が変わっていることに気付く。
──── 第三の暗殺未遂に、水で回りが早くなる猛毒。
瀕死のランバルド王国の人間に、ノースリンデの主席。
そしてその手には、水で満たされたコップが握られている。
その光景が、大衆の目にどう映るのかは言うまでもない。
己の失言に愕然とし、弾かれるように観衆を見回す。
そして、人壁の向こう。
見えたのは、結われた栗毛に、ゆるくたわんだ深い緑色の瞳。
視線が絡み合うのと同時に、男──ラグニアが、心底愉快で堪らないとでも言いたげな笑顔で、リウーに手を振った。
そして、
「惜しかったなぁ」
蠢く唇は、確かにそう言っていた。
思わず上躯を乗り出したリウーは、網膜を焼いた強烈な光に、すぐに仰反る。
光の出所を探れば、大事そうにカメラを抱えた男子生徒が、逃げるように人波に消えていくところだった。
「────……」
リウーは、己の頭頂から、血液がすうっと下に落ちていくような錯覚を覚えた。
呆然と、傍らで沈黙を貫くイーシャを見る。
藤色の瞳に、光は差さない。
虚ろな目で床を見つめるその四肢が、黒い糸でがんじがらめにされているように見えた。
そしてその黒い糸は、悪意と呼ばれるそれに違いなくて。
「会長」
カイルが、うっそりと微笑む。
リウーは、その笑みを見て確信する。
────「隠している物を出せ」と。
確かに、彼はそう言っていた。
「……シエル、解析を急ごう」
「な、なんだよ急に。解析はできてるって言ったろ。あとは経路の特定だけだよ」
「…………そうだな。早く吠えヅラかかせてやろう」
唸るような声音が、喧騒の中に静かに落ちる。
ひたひたと激情を滲ませる碧眼の危うさに、シエルはガシガシとヤケクソに頭を掻いた。
***
クラブ見学期間の最終日、第三言語クラブは花火を打ち上げる。
絶え間無い破裂音と共に夜空で弾ける無数の光は、しかし、窓の無いプレハブ小屋には届かない。
埃のこびり付いた室内灯が、チカチカ明滅する。
そのたびに、歪んだ鉄扉に、足の踏み場もないほどに雑然とした室内が浮かび上がる。
そして、机上に芸術的な積み方をされた魔術書と書類の海に、リウーは突っ伏していた。
緩慢な所作で上躯を起こし、青紫に変色した右腕側面へと視線を落とす。
朦朧とした碧眼は、完全に据わりきっていた。
うろうろと左手を彷徨わせ、ハンドル付きの木樽を開ける。そこから取り出したガラス管の中身を、空の注射器に注いでは右手に突き刺した。
「ァえ~~~~~~~~きぼちぃぇ~~~~」
棒切れみたいな体が、一、二度大きく痙攣しては小刻みに震える。
恍惚の表情でゲーゲー嘔吐して、机上に突き刺してあったナイフで右手首を切った。
バサバサと机から雪崩落ちた書物の山に、部屋の隅で犬がキュンキュン怯えたような鳴き声を上げる。
ぐわんぐわんと上体で緩慢に円を描きながら、震える左手で流れ続ける血を掬った。
ぶちまけられた書類に、血濡れの指を滑らせる。
絶え間なく綴られていく赤い幾何学を、焦点の定まらない目でただ眺めて。
「……………こんばんは」
第三言語クラブの部室のグロッキー化に精を出す指を止め、リウーは呂律の怪しい挨拶をする。
重い頭を擡げて、音もなく開いたプレハブ小屋の扉を見た。
「お待ちしてぁした、スタンリー先輩」
男──スタンリーは、開け放たれた扉の前に佇んだまま、ゆっくりと眼鏡を押し上げる。
背後で閃いた花火が照らした相貌には、薄笑みが浮かんでいた。
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