27 / 84
第27話、俺がまた無双してやるから首洗って待ってろよ!
しおりを挟む
土蜘蛛が木の上に陣取る俺たちめがけて炎を吐いた。
俺は玲萌を抱きよせたまま風をあやつり、ふわりと地上へ降り立つ。俺たちの頭上を飛んでゆく炎は、色づいた葉と枝を焦がして彼方へ飛び去る――かと思いきや瀬良師匠の結界に吸い込まれて消滅した。
となりで玲萌が呪文を唱えだす。「翠薫颯旋嵐、無数の鋭利なる刃となりて――」
しかし土蜘蛛がこちらへ向かって襲い来る。六本の足をカサカサと動かし向かい来る巨体へ、俺は魔力弾を叩き込んだ。狙いは八つの目。帯状にした魔力を一気に放つ。
「ウグヮァ!」
土蜘蛛の足が止まった。
「我が敵影切り裂き給え!」
玲萌の術が大当! 目に見えぬ風の刃がいくつも襲いかかり、茶色い毛におおわれた土蜘蛛の体表に傷をつける。
恐れを知らない夕露が走り、土蜘蛛の足を順に金棒でぶん殴りはじめた。
この隙に玲萌が俺に耳打ちした。「あたしと夕露があいつの気を引くから、そのあいだに樹葵は最強魔術を組み立てて」
「分かった。でもあまり危険なことは――」
言いかけたとき、玲萌の術から早くも回復した土蜘蛛が夕露に炎を吐く。俺が走るより一瞬早く、後ろから惠簾の声が聞こえた。
「かの者を守り給え!」
神通力で現れた結界は炎を防ぐのみならず、瞬時に消し去ってしまった。
「ねっ、あたしたちを信頼して!」
片瞬ひとつ、玲萌は呪文を唱えながら走って行く。「翠薫颯旋嵐、汝が大いなる才にて、低き力の柵凌ぎ、我運び給え!」
風の術で夕露をかかえて、空へと舞い上がった。
「玲萌、くれぐれも巻き込まれないようにしてくれよ! 俺の呪文が完成したらすぐ遠くに飛んでくんねぇ!」
玲萌に向かって叫んでから、俺は呪文を唱え始める。
「紅灼溶玉閃、褐漠巨厳壌、轟絢囂爛――」
八百五十年間の封印から完全に覚醒した土蜘蛛の動きは、今朝とは比べ物にならないくらい素早い。強大な魔術を構築するときに巻き起こる気の流れにも臆せず、俺に向かって炎を吐こうと口を開け――
その大口めがけて上から茶色いものがボトンと落ちてきた。
「願わくは、其の血と等しき色成す烈火を以て――」
魔術を組み立てながら目ん玉だけ空に向けると、大きな白い鳥が翼を広げて旋回している。あれは凪留の召喚獣! でかした! ――てことは落としたのは鳥のフン?
『貴様ァァ! わしをコケにしやがって!』
土蜘蛛が俺たち全員に怒りの伝心を飛ばしてくる。凪留が乗った鳥めがけて蜘蛛糸が襲いかかるが、鳥はさらに空高く舞い上がった。
「其の荘重なる土塊を以て――」
夕露の攻撃をうけたはずがいつの間にか生えそろっている六本の足で高く跳躍したところ、空中で待機していた玲萌の攻撃を受ける。あえなく着地した土蜘蛛は夕露をかかえた玲萌に蜘蛛糸を投げかけるが、夕露が金棒を振り回してすべて防ぎきった!
「我を包みし宇内、全てを呑噬せんことを!!」
呪文の最後の部分を叫んだ俺の声に気付いて、玲萌が夕露をかかえたまま宙高く飛びすさる。
一瞬遅れて、土蜘蛛の周りの大地が火を吐いた! 大爆発の真ん中で土蜘蛛が断末魔の悲鳴をあげる。いや、断末魔だとよいのだが――
土と旧校舎の一部と、敵の焼かれるにおいが俺の鼻を襲う。腹に響く振動と、鼓膜が破れそうな爆音の向こうに、結界の向こうで息をつめて見守っていた学生たちが拍手喝采するのが聞こえた。口々に何か言っているが、結界と轟音にはばまれて聞こえない。
俺は玲萌を抱きよせたまま風をあやつり、ふわりと地上へ降り立つ。俺たちの頭上を飛んでゆく炎は、色づいた葉と枝を焦がして彼方へ飛び去る――かと思いきや瀬良師匠の結界に吸い込まれて消滅した。
となりで玲萌が呪文を唱えだす。「翠薫颯旋嵐、無数の鋭利なる刃となりて――」
しかし土蜘蛛がこちらへ向かって襲い来る。六本の足をカサカサと動かし向かい来る巨体へ、俺は魔力弾を叩き込んだ。狙いは八つの目。帯状にした魔力を一気に放つ。
「ウグヮァ!」
土蜘蛛の足が止まった。
「我が敵影切り裂き給え!」
玲萌の術が大当! 目に見えぬ風の刃がいくつも襲いかかり、茶色い毛におおわれた土蜘蛛の体表に傷をつける。
恐れを知らない夕露が走り、土蜘蛛の足を順に金棒でぶん殴りはじめた。
この隙に玲萌が俺に耳打ちした。「あたしと夕露があいつの気を引くから、そのあいだに樹葵は最強魔術を組み立てて」
「分かった。でもあまり危険なことは――」
言いかけたとき、玲萌の術から早くも回復した土蜘蛛が夕露に炎を吐く。俺が走るより一瞬早く、後ろから惠簾の声が聞こえた。
「かの者を守り給え!」
神通力で現れた結界は炎を防ぐのみならず、瞬時に消し去ってしまった。
「ねっ、あたしたちを信頼して!」
片瞬ひとつ、玲萌は呪文を唱えながら走って行く。「翠薫颯旋嵐、汝が大いなる才にて、低き力の柵凌ぎ、我運び給え!」
風の術で夕露をかかえて、空へと舞い上がった。
「玲萌、くれぐれも巻き込まれないようにしてくれよ! 俺の呪文が完成したらすぐ遠くに飛んでくんねぇ!」
玲萌に向かって叫んでから、俺は呪文を唱え始める。
「紅灼溶玉閃、褐漠巨厳壌、轟絢囂爛――」
八百五十年間の封印から完全に覚醒した土蜘蛛の動きは、今朝とは比べ物にならないくらい素早い。強大な魔術を構築するときに巻き起こる気の流れにも臆せず、俺に向かって炎を吐こうと口を開け――
その大口めがけて上から茶色いものがボトンと落ちてきた。
「願わくは、其の血と等しき色成す烈火を以て――」
魔術を組み立てながら目ん玉だけ空に向けると、大きな白い鳥が翼を広げて旋回している。あれは凪留の召喚獣! でかした! ――てことは落としたのは鳥のフン?
『貴様ァァ! わしをコケにしやがって!』
土蜘蛛が俺たち全員に怒りの伝心を飛ばしてくる。凪留が乗った鳥めがけて蜘蛛糸が襲いかかるが、鳥はさらに空高く舞い上がった。
「其の荘重なる土塊を以て――」
夕露の攻撃をうけたはずがいつの間にか生えそろっている六本の足で高く跳躍したところ、空中で待機していた玲萌の攻撃を受ける。あえなく着地した土蜘蛛は夕露をかかえた玲萌に蜘蛛糸を投げかけるが、夕露が金棒を振り回してすべて防ぎきった!
「我を包みし宇内、全てを呑噬せんことを!!」
呪文の最後の部分を叫んだ俺の声に気付いて、玲萌が夕露をかかえたまま宙高く飛びすさる。
一瞬遅れて、土蜘蛛の周りの大地が火を吐いた! 大爆発の真ん中で土蜘蛛が断末魔の悲鳴をあげる。いや、断末魔だとよいのだが――
土と旧校舎の一部と、敵の焼かれるにおいが俺の鼻を襲う。腹に響く振動と、鼓膜が破れそうな爆音の向こうに、結界の向こうで息をつめて見守っていた学生たちが拍手喝采するのが聞こえた。口々に何か言っているが、結界と轟音にはばまれて聞こえない。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
130
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる