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プロローグ:春、始まり
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やる気に欠ける不動産の店主が描いた、雑な地図を片手に和茶は住宅街を歩いていた。和茶の新しい住まいになるかもしれない、デッド・ハイツというアパート。家賃が安い上に大学からそう遠くない。しかし、家賃2万円はどこかおかしい、と、和茶の本能が告げていた。もしかして、事故物件か?いや、空き部屋は2つあったはずだ。
そのどちらも家賃は2万円だったはず。──大丈夫だろう。和茶はいくつか曲がり角を曲がり、目的のデッド・ハイツに辿り着いた。今、住まわせてもらっている、親友の相葉のアパートより綺麗な外観をしている、洋風のアパート。大家の名前は、嶺想寺というらしい。和茶がデッド・ハイツの外観を眺めていると、その嶺想寺が現れた。
一階の管理人室から現れた嶺想寺という男は、長い白髪を春風に揺らしながら、柔らかな声で和茶に言った。──君が、見学の人?
「あ、あの……見学の、飯山です」
「飯山さんか。僕は大家の嶺想寺です。新しい人は久し振りだ」
嶺想寺は微笑みながら和茶に近付いてくると、和茶に1枚の紙を渡した。不動産で渡されなかった、空き部屋の詳しい情報が書かれた案内だった。どうやら、空き部屋のうち1部屋はリフォーム中で入居をするなら先になりそうだった。もう1つの空き部屋は、リフォームもクリーニングも済んでいて、すぐにでも入居可能とのこと。
嶺想寺の案内で、和茶はすぐに入居可能だという、空き部屋を見せてもらうことにした。その空き部屋は、洋室だった。広さは8畳、リフォームもクリーニングも済んでいるというだけあって、壁にシミ1つない。和茶は少し、胸をときめかせていた。初めての1人暮らしだ。アパート名は不吉だが、大家の嶺想寺もいい人そうに見える。
しかし、念の為、聞いておく。
「あの、嶺想寺さん」
「何かな?」
「家賃、安いですけど……何か事情があったりするんですか?」
「……無いよ?」
妙な間があった。和茶が不安になった瞬間だった。しかし、家賃が安いのはもう1つの空き部屋も同じだから大丈夫だ、と、和茶は自分を安心させる。そして、和茶は決めた。このデッド・ハイツに入居しよう。あのやる気のない不動産の老夫と契約を行わなければならないのが、若干、嫌なのだが……今後は嶺想寺のお世話になるのだ、今だけだ。
こうして、飯山 和茶という新大学生の青年の物語は始まる。和茶はこの日、居候をさせてくれている親友、相葉に手土産を買って、相葉宅に戻った。
そのどちらも家賃は2万円だったはず。──大丈夫だろう。和茶はいくつか曲がり角を曲がり、目的のデッド・ハイツに辿り着いた。今、住まわせてもらっている、親友の相葉のアパートより綺麗な外観をしている、洋風のアパート。大家の名前は、嶺想寺というらしい。和茶がデッド・ハイツの外観を眺めていると、その嶺想寺が現れた。
一階の管理人室から現れた嶺想寺という男は、長い白髪を春風に揺らしながら、柔らかな声で和茶に言った。──君が、見学の人?
「あ、あの……見学の、飯山です」
「飯山さんか。僕は大家の嶺想寺です。新しい人は久し振りだ」
嶺想寺は微笑みながら和茶に近付いてくると、和茶に1枚の紙を渡した。不動産で渡されなかった、空き部屋の詳しい情報が書かれた案内だった。どうやら、空き部屋のうち1部屋はリフォーム中で入居をするなら先になりそうだった。もう1つの空き部屋は、リフォームもクリーニングも済んでいて、すぐにでも入居可能とのこと。
嶺想寺の案内で、和茶はすぐに入居可能だという、空き部屋を見せてもらうことにした。その空き部屋は、洋室だった。広さは8畳、リフォームもクリーニングも済んでいるというだけあって、壁にシミ1つない。和茶は少し、胸をときめかせていた。初めての1人暮らしだ。アパート名は不吉だが、大家の嶺想寺もいい人そうに見える。
しかし、念の為、聞いておく。
「あの、嶺想寺さん」
「何かな?」
「家賃、安いですけど……何か事情があったりするんですか?」
「……無いよ?」
妙な間があった。和茶が不安になった瞬間だった。しかし、家賃が安いのはもう1つの空き部屋も同じだから大丈夫だ、と、和茶は自分を安心させる。そして、和茶は決めた。このデッド・ハイツに入居しよう。あのやる気のない不動産の老夫と契約を行わなければならないのが、若干、嫌なのだが……今後は嶺想寺のお世話になるのだ、今だけだ。
こうして、飯山 和茶という新大学生の青年の物語は始まる。和茶はこの日、居候をさせてくれている親友、相葉に手土産を買って、相葉宅に戻った。
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