灰色に夕焼けを

柊 来飛

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芽生え

オープンキャンパス

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 夏休み中、そういえば学校からオープンキャンパスに行ってこいと指示があった。
 施設では高校を卒業したら、問答無用で就職の道に行けと言われていたから、僕にはあまり関係ない話だなと聞いていた。
 しかし、それを先生に言ってみたら、

「ここはもう施設じゃない。自分が行きたい道を選べ」

 そう言われても、いつも制限されてきた僕だ。急に自由にされても困る。
 だって、何にも教えてくれなかったではないか。なのに急に自由にしていいよなんて言われても何もできないし、何もしなかったらまた何か言われるのだ。

 眉を下げて困っている僕を見て、先生は優しい声で言った。

「急に言われても困るよな。だったたら俺がいる大学のオープンキャンパスに来れば良い」

「い、良いんですか?」

「むしろ来てくれた方が大学側は嬉しいだろ」

 そう言って、先生がいる大学のオープンキャンパスの日程を調べて予約までしてくれた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 オープンキャンパスの日、僕は先生のいる大学に足を運んだ。
 結構人がいる。僕は案内された席に座って、始まる時間まで待った。
 時間になると、今回説明してくれる人が来て、この大学について説明し始めた。
 みんながメモを取る中、僕もある程度メモを取ったが、事前に先生から聞いていたことが殆どだった。

 説明が終わると、大学の授業がどんな感じかを見せてくれた。
 案内人について行って各教室を見学していく。色んな人が大学生に教えている中、ある教室に入った時、僕は見知った人を見る。
 見学生も、少しざわつく。

 目の前には勉強を教える先生の姿があった。
 第一ボタンを開けた白のワイシャツに、黒のズボンというシンプルな格好だが、むしろそれが先生の色気を引き立てている。
 低い声が教室に静かに響く。大学生たちは真剣に聞いている人もいれば、先生の姿に酔いしれている人もいた。

 教室を後にするとき、先生と目が合った。
 僕は急いで目を逸らそうとしたとき、先生はフッと笑ってまた授業に戻った。

 そんな不意打ちを喰らった僕は、後の授業の見学のことなんて頭に入ってこなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 オープンキャンパスが終わり、買い物をして帰ろうと思って大学の中を通り抜けようとしたとき、数人の男性に声をかけられる。ここの大学生だろう。

「あれ、オープンキャンパスの見学の子?」

「は、はい。そうです」

「大丈夫?ここ広いし、迷ってない?」

「だ、大丈夫です。もう後は帰るだけですから」

「え~、もっと見学してけばいいのに。まだ校内全体を見たわけじゃないんでしょ?ほら、あそこにもまだ見学の子いるし」

「い、いえ、あの、これから用事がありますので」

「そんな固いこと言わずにさ」

 そう言われ手首を掴まれる。僕はゾクリとしてその手を振り払う。

「すみません、急いでおりますので」

「オープンキャンパスに来といて急いでるなんて無くない?ほら、俺らと一緒に回ろうよ」
 
 また手首を掴まれそうになり、後ろに下がろうとするが、ドンと何かにぶつかる。振り返ってみると、その人の連れのような人が立っていた。

「こいつの言う通りだよ。ちゃんと見といた方が良いぜ?」

 どうしよう。怖い。体の温度がどんどん下がっていく。喉もカラカラに乾いて掠れた声しか出せなくなる。ちゃんと、断らないといけないのに。

「ここに入るかもしれないんでしょ?あまり先輩の優しさ、断らない方が良いと思うけどなぁ」
 
 そう言って肩をがしりと組まれる。手で肩をキツく握られており逃げられない。ミシッと肩に痛みが走る。

「いっ…」

「ね、ほら。一緒に回ろうよ」

 痛みと恐怖で涙が浮かんでくる。視界が揺れ始め、カタカタと体が震える。
 それでもと、掠れる声を絞り出す。

「あの、ほんとに、」

「大丈夫?顔色悪いよ?保健室行く?案内するよ」

「や、やめ、」

 その場にとどまろうとするが、足に力が入らない。そのまま連れていかれそうになったとき、

「何をしている」 

 地を這うような低い声が響いた。
 
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