復讐を誓った亡国の王女は史上初の女帝になる

霜月纏

文字の大きさ
9 / 73
陰謀篇

第8話 淑女教育──対面前の一時

しおりを挟む
コンコンコン


「フレイアです。お呼びと聞き参りました」


 洗礼式の翌日。お母様からの呼び出しをメイドから伝えられたのは一刻十五分ほど前のこと。


「御入りなさい」


 お母様の執務室のはずだが、お祖母様の声がして戸惑う。


もしかしたら国政のことで何か話していたのかもしれない。


 そう思うと部屋に入るのは憚られる。しかし入室を許可された以上は去るわけにもいかない。


「……失礼します」


 扉を開けるとお祖母様とお母様は「待ってました」とでも言いたげな表情で私を見ていた。お母様も一仕事終わった後のような晴れやかな顔をしている。その様子に嫌な予感がする。


「フレイア。貴女には今日から淑女教育を受けて貰います」


 お祖母様の口から発されたその言葉は私を絶望の谷底に突き落とすには十分なほどの殺傷能力を持っていた。その言葉は異様にスローモーションに聞こえる。


ですよねぇ~


 昨日の洗礼式はあくまでも非公式の外出。私の姿を見た国民は極僅か。更に時間も一瞬だけで印象に残っていると言えば髪色と背丈くらいだろう。つまり王族としての常識やマナー、教養などが身に付いているかどうかは判断できていない。今後の言動から判断するのだ。

 多くの平民は王族としての常識やマナー、教養などは知らない。では彼らの判断基準は何か。それは立ち振る舞いだ。立ち振る舞いには人間の行動理念や人間性が表れる。私が彼らに求められる理想の王族だと認められれば、彼らは私を先導者として信頼し、私が新たな政策を始める時には力になってくれるはずだ。

 そしてこれは貴族たちにも同じことが言える。多くの貴族が自分、あるいは自分の領地にとっての利益を重要視する。私が新たな政策を進めて貴族たちにも利益が出れば、正当な方法で利益を得る貴族たちは私を歓迎するだろうし、悪徳な方法で利益を得ている貴族に損害が出ても彼らは私に容易に手出し出来ない。

 もちろんお母様が私に淑女教育を受けさせようとしたのは私を先導者にしようと考えたのではなく、ただ良い婚姻相手を探すためだろう。王女とは言え淑女教育を受けていない者を他国に嫁がせるわけには行かない。侯爵家や辺境伯家に嫁がせて国内に留めることも出来るが、私は王家で唯一の王女。私の婚姻は外交の際に最も重要な手札になる。


「畏まりました」


 私は嫌だと言いたくなる気持ちを抑えて答えた。

 そもそも私の本来の理想の生活は家族とほのぼのとした暮らしを送ることだ。しかしこれは女神との賭けがあるので早々に諦めた。しかし、世界統一を終えた後のセカンドライフはのんびり暮らしたい。だから、家庭教師が付くであろう五歳までは前世の記憶から世界統一に必要な知識を引き出して纏めておきたいと思っていた。

 私は嫌だという気持ちを態度に出さないように気をつけながら部屋を退出した。外に出ると控えていたルーシーの口元が心なしか緩んでいる。


……聞いてたな。


 ただでさえ私生児の平民だと噂されているルーシーを人前で揶揄からかって私にまで虐められているという噂を立てられるわけにもいかず、私は仕方なく足早に部屋に戻った。





ドスンッ


 部屋に入るなり私は長椅子に勢い良く座った。


「痛ぁっっ!」


この世界の長椅子は木製なの忘れてた。確かクッションとかは開発されてないんだっけ……


 木に打った骨がジンジンと痛む。ヒビでも入っているのではないかと思うほどの激痛に視界が潤む。


「何してるの?!」


 驚いた様子で側に駆け寄るルーシー。心配そうな表情を浮かべるルーシーを見ていると、さっきの態度に怒っていたはずなのに怒りがどこかへ飛んでいっていまう。


「ご、ごめん。クッションがないの忘れてて……」

「くしょん?」

「あ、こっちの話。でもこの程度の怪我ならそれほど痛みもないし大丈夫よ」

「大丈夫なわけないでしょう! 王族は擦り傷一つで使用人の首を飛ばせるのよっ!」


 確かにそれは大問題だ。今のところルーシーは私の信用できる数少ない侍女で唯一の友人だ。この程度の怪我が原因で殺されては堪らない。ルーシーも私の不注意で起きた事故のようなことで首を落とされては堪らないだろう。


「大丈夫。私が言えばルーシーの首は飛ばないから」

「そういう意味じゃない! それだけ大切にしなきゃいけない身体なの! いつ何処で暗殺されるかわからないのが王族なんだから!」


 てっきり死にたくない気持ちからの言葉だと思っていたが、どうやら心配してくれていたようだ。


つまりは擦り傷一つで不特定多数の生命を左右する身分に居るのだから身体は大切にしろと言うことか。確かに擦り傷から毒でも盛られたら知らぬ間に死んでしまいそうだ。


「確かに擦り傷なら毒を盛られるかもしれないけど、今回は打撲だよ」

「万が一刺客に襲われたら痛みで逃げ切れないかもしれないでしょう!」


確かにっ!


 何も毒殺だけが暗殺の手段ではない。刺客の目的は私を行動不能にするか殺すかだ。それが叶えば手段など選びはしないだろう。それに思い至ると王族に生まれた以上は付き纏う危険への警戒はしなければならないと再確認させられる。


「わかった。気をつける」

「よしっ!」


 勝ち誇った表情で言うルーシーは歳相応で可愛らしい。


「フレイア。紅茶い──」

「いる」


 ルーシーが言い切る前に食い気味に答えるとルーシーはクスクスと笑った。


「フレイアは本当に紅茶が好きだね」

「ルーシーが淹れる紅茶だからだよ」


 前世の私はわりと凝り性で、よく美味しい紅茶の淹れ方などを練習していた。これは紅茶に限らず、コーヒーや緑茶などでも同様だったが、中でも紅茶は少しの違いで面白いほどに味の変化があって興味を惹かれた。だから自分好みの味にするために茶葉の組み合わせや配合、水分と茶葉の比率、蒸らす時間などを細かく分けて実験したりもしていた。それでもルーシーの淹れる紅茶には遠く及ばない。

 洗礼式から帰ってきて最初に飲んだときに茶葉が違うのかと思い確認してみたが、よくある茶葉だった。前世で言う春摘みダージリンだ。ルーシーと寸分違わず同時に淹れたりもしたが、やはり私の紅茶には何かが足りない。ルーシーが不思議そうにしていたのが印象的だ。


「ルーシー、やっぱり何か特別なことしてるでしょ」

「またその話? 何もしてないよ。はい紅茶」


 手渡された紅茶からは芳しい香りがする。ルーシーはカップを持って私の向かい側に座った。これもルーシーだから許されることだ。本来なら許可もなく侍女が主人と同じ席に着くことは許されないが、ルーシーは私の友人なので常に許可しているのだ。


「なんでルーシーの紅茶の方が美味しんだろう……?」


 ルーシーが特別なことはしていないのは確認済みだが、それでもルーシーが淹れる紅茶のほうが美味しいのだから世の中不思議なことがあるものだ。


「お褒めに預かり光栄です」


 不思議そうにしている私を見てルーシーは満面の笑みで言った。その様子を見ていると悔しさが込み上げてくる。


「……いいもん。自分で淹れないでルーシーに淹れて貰えば良いだけだもん……」


 わかりやすく拗ねてみせると、ルーシーは柔らかい笑みを浮かべた。部屋が幸せな雰囲気に包まれる。私の口も自然と弧を描いた。


「ルーシー。教師っていつ来るかわかる?」

「……ん……二刻三十分後にくらいに到着する予定だって」


 ルーシーは口に詰めたクッキーを紅茶で流し込んで言った。


「二刻か。あまりゆっくりは出来ないね」

「そうだね。紅茶二、三杯なら淹れられそうだけど」

「そんなに飲んだら途中でお花摘みに行きたくなっちゃう」

「花? なんで?」

「あ、いや、何でもない。言い間違えた。トイレ」

「あぁ、飲みすぎるとね……」


 上品に振る舞おうとするあまり、この世界では使わない表現を使ってしまった。この世界では前世のお嬢様言葉は通じない場合が多い。もちろん他の国の常識など知らないので、この国だけかもしれないが。


「早めに行く?」

「そうだね。初対面で遅刻は印象が良くないしね」

「……まぁ、第一印象は大事だもんね」


 ルーシーは遠い目をして言った。


「ルーシーが最初から敬語を使っていたら今も敬語のままかもしれないね」


 心底嬉しそうな表情をしていたであろう私を見て、ルーシーは悔しいのか嬉しいのかわからない表情を浮かべて顔を逸した。


「あのときの自分を殴ってやりたい」


時既に遅し……


 私は前世の記憶が戻ったことで価値観が変わった。前世の常識が私の常識になったのだから周囲とのズレは大きい。それでも上手くやっていけるのは前世の記憶を取り戻す前の記憶を失ったわけではないからだ。特にルーシーとの初対面のような衝撃的な記憶は前世の記憶を取り戻した今でも鮮明に思い出せる。

 それは私が言葉を話し始めた頃のこと。お母様の指示でルーシーは私の遊び相手兼侍女見習いとして登城した。初対面の相手なので警戒していたが、それと同時に興味もあり私はゆっくりと近づいていった。

 するとルーシーが私の頬を思い切り叩いたのだ。乾いた音が室内に響き、メイドたちは顔を蒼白とさせて戦慄していた。幼いとはいえ王族を叩いたのだから当然だ。ちなみに本来なら極刑になるはずだが、そうならなかったのはお母様がルーシーを気に入ったからだ。曰く、王族を叩く度胸が気に入ったらしい。

 私も一方的に叩かれたままで終わらせるような性格ではなく、軽い叩き合いの喧嘩に発展した。お互いに第一印象が最悪であるが故に、親しくなるのに時間は掛からなかった。その喧嘩のおかげで今では身分など関係なく気の許せる友人になれたとも言える。しかし、全ての人がそうとは限らない。幸い私とルーシーは相性が良かったが、相性が悪ければ初対面以降は疎遠になってしまう可能性すらある。


「ねぇ、先生たちも早めに来るんじゃない?」

「あっ!」


 確かにルーシーの言う通りだ。私達が遅刻しないようにと早めに集合場所へ行くのと同じように、教師も早めに来るかもしれない。焦って日時計を見ると、到着の時間まであと一刻十五分を切っていた。


「そろそろ行かなきゃ」

「行ってらっしゃい。私は紅茶の片付けをするから」


 ルーシーはいつも通り私を送り出そうとする。


「何行ってるの? ルーシーも一緒に行くんだよ」

「へ?」


 私の言葉にルーシーは間の抜けた声を出した。


「王女の侍女は王女の許可があれば一緒に教育を受けることが出来るんだよ。だからメイドたちは公の場に出ていない私の侍女になろうと躍起になるんじゃない」


 王女の侍女と言う立場には甘い蜜がある。他のメイドたちより上位に立てるだけではない。祝い事や外国からの使節が来れば公の場に出ている王女には贈り物がされる。その贈り物を最初に下賜されるのが侍女と側近なのだ。

 しかし、私は公の場には出ていない。と言うより、王女は少女式までは公式の場に出られないのだ。つまりそれまでは贈り物をされることもない。それなのに多くのメイドが私の侍女になりたがるのは、王女が許可すれば侍女も一緒に教育を受けられるという制度があるからだ。

 メイドとして登城する者は平民、下位貴族が多い。彼女らは滅多なことがなければ同じ家格の者に嫁ぐことになる。その例外が王女の侍女になることだ。王女の侍女とは即ち、王女の寵愛を得るメイドということだから。

 更に一緒に教育を受けたとなれば、そこらの上位貴族よりも質の良い教育を受けているとも言える。一緒に教育を受けることが許される程度には王女に信頼されている証でもある。そんな最上の駒を上位貴族が放って置くわけもなく、侍女は仕事をするにしても結婚するにしても明るい将来を約束される。


「私は別に勉強に興味ないし…………」


 その言葉はルーシーに打算がないことを示していると同時に、ルーシーに野心がないことも示していた。もちろんルーシーが私に対する打算を持っていないことは嬉しいが、野心のない者には向上心がない。それでは困るのだ。


「ルーシー。わたくしの侍女という身分の意味を理解しているの? わたくしはティルノーグ王国の第一王女ですのよ。わたくしの侍女が知識も教養もなく、話術の一つもできない未熟者だと嘲笑されることは私が嘲笑されることと同義ですのよ」


 私は声を高めに作り、高飛車な我儘王女のような大仰な話し方で言った。


「ちょっ……! 何それ?」


 私の話し方にクスッと笑うルーシー。ふざけていると思っているのかもしれない。だが私は話し方こそ冗談めかしているが、内容に関しては至って真剣だ。


「ちょっとふざけてみた。でも私は真剣だよ」

「…………」


 ふざけた口調の後に真剣な口調を使うと、真剣さがより一層際立つ。ルーシーは沈黙するだけで何も返さない。

 私は家族に溺愛されている。自身が王族でありながら他の王族からも寵愛を得ているのだ。故に王族全員の寵愛を受けやすい私の側近という立場は常に狙われている。私の側近になりたい者、自分の子を私の側近にしたい者は大勢居る。現時点ですら側近候補は高位貴族が多く、下位貴族が私の側近になるには幼いうちに侍女になる他ない。そんな誰もが狙う侍女の座に居るのがルーシーなのだ。

 私は現時点ではルーシー以外の侍女を付けず、側近も迎えてない。なので貴族たちは私が側近を迎えたあともルーシーを重用するのではないか。それどころか、ルーシーを正式に側近筆頭に召し上げるのではないかと恐れている。だから貴族たちはルーシーに隙を見つければ徹底的に追求するだろうし、難癖をつけてくるだろう。そしてルーシーを侍女の座から追い落として自分に有利な働きをする者を侍女にするはずだ。

 その隙になり得るのがルーシーの貴族としての知識の少なさだ。貴族の常識、教養、学術的知識。どれも平民のルーシーにとっては容易く学べないものばかりだ。

 それに例えルーシーに侍女を続ける気持ちがなかったとしても、今後のためにも貴族の常識を学んでおいて損はない。文字が読めれば確実に商人にはなれるし、貴族の常識や教養があれば大商会から嵐のような勧誘を受けるであろうことは容易に想像できる。良い嫁ぎ先も見つかりやすい。


「…………わかった」


 暫く見つめ合った後、ルーシーは私の意図を察したのか根負けしたのか首を縦に振った。そして片付けをメイドに任せて一緒に部屋を出た。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...